「いっ……! 」
男が小さな悲鳴をあげる。目の前の少女はただただ狼狽えていた。
男の子押さえる頬には何も無かったが、小さな痛みがまだ残っている。
セオラは「大丈夫……? 」と心配の眼差しを向ける。シャリベルは何も言わずただ、横目でセオラを見ていた。
シャリベルはセオラの唇に自分の唇を寄せようとしたが、セオラの前に向いた角の先が頬に当たってしまい、口付けは失敗に終わった。
その事を恥と思いながらも生まれながら前角になったセオラを責めることはなかった。
ただ、愛おしいという気持ちを表現するのに口付けを選んだのが失敗だった。
「ごめんなさい……」
「何で謝るのヨ」
セオラは自分のせいだと思い、謝罪を口にする。自分の角のせいだと気付き、彼女はこの角さえ無ければとさえ思い込んでいた。
「……切ってくる」
「チョット待ちなサァイ! 」
泣きそうになりながら立ち去ろうとするセオラの腕を掴み、引き寄せる。小柄な彼女を引き寄せることなど容易かった。
「アンタのせいじゃないわヨ」
「……でも」
「あーもうウルサイわネ!」
口ではうるさいと強く言いながらもその手は優しくセオラの頬を撫でた。ザラザラと伝わる鱗に優しく触れる。手袋をしていない、素肌のシャリベルの手は温かく、セオラは思わずその手を掴み擦り寄せた。
「……別にキスだけが全てじゃないのヨ」
そう言うシャリベルの眼差しは普段よりも優しかった。セオラは人差し指をたて、自分の唇に触れた後、その指をシャリベルの唇に触れた。
黙ったままにこりと笑うセオラのその行動の意味を理解するとため息をつきながら脱力した。
(ホント……! )
無自覚でやる行為こそ不意打ちで胸を締め付けられる。項垂れるシャリベルにまたやらかしてしまったかと慌てるセオラだった。

結局その日は何も起きなかった。
次の日、シャリベルは興味本位からアウラ族のキスについて調べることにした。
そしてある文献が目に付いた。

セオラはシャリベルの部屋のソファーの上で足を抱え込み、しっぽを自分に巻き付けて小さくなっていた。これが彼女の部屋にいる時のいつもの姿だ。
シャリベルの帰宅にドアの方に視線を向ける。
「おかえり」と言おうとするとシャリベルはズカズカとこちらに歩み寄ってきては隣に座る。
いつも物静かなシャリベルが足早に自分に寄ってきた事が驚き、同時に何かやらかしただろうかとグルグルと思考を巡る。

するとシャリベルはこちらに手を伸ばしたかと思えば、角に触れた、かと思えばその指を曲げて角に爪を立てる。そして小さくカリカリと繰り返し引っ掻き始めた。

ぞわぞわと鳥肌が立つ。みるみるうちにセオラの顔が真っ赤になっていく。

アウラ同士のキスは角同士を擦り合わせることである。
それが出来ないなら、擬似体験をさせれば良いのではないか、と。
そんな軽い発想がまさか甘い声を出させるまで効果があるとは思いもしなかったが。
「あっ…うっ…」
必要最低限しか喋らないセオラが困惑した顔で身動ぎ、小さく喘いでいる。

なんと愉悦だろうか。

生粋のサディストであるシャリベルはどうしようもなく困り果て、蕩けた顔のセオラに興奮した。
もっとイジメたい、そんな心を揺さぶり、シャリベルは角に口を寄せる。そして舌を出せば硬い鱗の集まりである角に這わせる。反対側を先程していたように指でカリカリと責める。
「ひぁっ、あっ……! 」
小さく身震いし、甘い声が止まらないセオラ。
白い唇で挟んだりそのまま舌で舐めたりする。
悲鳴に似たその声はだんだんと大きくなっていく。
「シャリベ……ルッ」
青と赤のオッドアイはシャリベルを見つめた。その潤んだ瞳から涙は自然とこぼれ落ちる。
口と手を離せば息を整え始める。
下半身に熱が集まるのを自覚した。
「セオラ」
彼女の名を呼べば、ビクッと小さく震える。
「もっと……シて欲しい? 」
ねっとりとした声で聞けばセオラは小さく頷いた。熱い視線をセオラに送りつつ、舌なめずりをすれば彼女を抱えて奥の部屋へと消えていった。
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