「……は? 」
グリノーは女の言葉を理解するのに時間を要した。
彼女はオリヴィア・スカーレット。巷では有名なストリップダンサーである。また、最近では夜の世界の歌姫とも呼ばれていた。
つまり、彼女はそれほどの美貌と才能を持ち合わせた神が作りし美女である、と。
彼女自身もそれを自負していた。だが、オリヴィアはゼーメル家の問題児……否、蒼天騎士団の一人であるグリノー・ド・ゼーメルを大層気に入っており、彼とは特別に身体を交える関係にある。
今日も互いの欲を発散した後に冒頭の発言だった。
「縁談が来ましたの」
「お前に? 」
「ええ、もちろん私に」
ベッドに寝そべるグリノーは信じられないと言わんばかりの顔でオリヴィアの背中を見つめていた。傷一つないその白い肌はとても美しかった。何よりも彼女の赤い髪もサラサラとしており、まるで絹の糸のようだった。グリノーは無意識にその髪に触れる。指通りがよく、すぐに落ちていった。
男の大半は惚れる。グリノーもそう思った。彼女はグリノーとしか交わっていないと言っているが、嘘かもしれないと思っている。
身支度を整えるオリヴィアの背中をただ見つめていた。
その視線を感じたのかオリヴィアは振り向き、「寂しいですか?」と問いかける。陶器のような白い手は、黒く焼けた頬を愛おしそうに撫でる。
薄紫の瞳は一瞬揺れ動いたが、すぐに瞼によって隠された。
「別にんな事ねえよ」
「ふふ、そうですよね」
ぶっきらぼうに言われればオリヴィアは苦笑する。だが彼女もどこか名残惜しそうに唇を寄せた。二つの唇は触れ、すぐに離れる。そして添えていた手も離れていった。
「さようならなんて言いませんわ。あなたがどこかで生きているのならまた会えますから、きっと」
悲しげに笑う彼女にかける言葉などグリノーには持ち合わせていなかった。
彼女を引き止める理由などない。あくまで性欲を発散するにいい相手だったからだ。心の片隅にわだかまりが出来ていることをグリノーはわざと無視した。
──数日後、教皇庁内の食堂にて昼食を一人黙々と食べていたグリノーに近づく影が一つ。彼の元部下であり拳を交わした友人であり、背中を預けられる相棒でもあるポールクランは彼に近づくなり隣に座った。
「あの嬢ちゃん、男と連れ立って歩いてたが? 」
「縁談だとよ」
「へぇ……どうりで」
「んだよ……」
「ずいぶん豪華な服着てたからな」
へえ、で済ませればよかったものの、そんな言葉を発する元気さえなかった。反応がないグリノーをチラリと横目で見るなり、「お前ずいぶん気に入ってたのにな」と大きな口を開けてサンドイッチにかぶりついた。
「別にんな事……」
「失恋か? 」
ニヤニヤと笑い小突くポールクランを視線で人を殺すほど鋭い眼差しを向ける。その殺気に周りにいた者達はおずおずとその場から逃げていく。
図星であることを察したポールクランはここが食堂であることに安心した。外であればすぐにスタンピートを持ち出され殴りかかられたであろう。いや、その前に拳が飛んでくるか……。
機嫌を損ねた事に軽い謝罪を告げれば、睨みつつも殺気は抑えてくれたようだ。その事にホッと安心しつつも念の為に問いかける。
「相手は分かってんのか」
「知らねえ興味ねえ次聞いたら殺す」
「うお、おっかねえ」
などと冗談を言いつつも、ポールクランはふと思い出していた。オリヴィアの隣にいた男に心当たりがない訳では無い。だが、当の本人としてはそれを知りたがってはいない。彼本人が動かなかれば結局意味が無いのだ。その後は沈黙が二人の間に流れ、昼食は終わった。
ポールクランは個人的に気になり、男の身辺を一人探ることにした。どうせグリノーに言っても「余計なことすんな」と殴られるだけがオチだろう。
ルイス・ド・シャーロンズ。四大名家に劣るが、かなりの上流貴族だ。
プラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳。その容姿は社交界の華と呼ばれるアデルフェルに負けず劣らずのイケメンだった。
グリノーが知ったら激昂するのは分かっているので下手に口出しするのは辞めておこう。そんな事を考えていると、部屋の扉をノックされた。静かなノックからして少なからずグリノーでは無いことは確かだ(そもそもグリノーはノックすらしてこないが)
扉を開くと、そこには先程一瞬だけ思い浮かべていたアデルフェルが立っていた。
「総長命令です。今度あなたも社交界に出るように、と」
「げっ……」
ポールクランは頭を抱えた。だが、良く考えれば逆にそれはチャンスだとさえ思えてきた。ポールクランは招待状の紙にすぐに目を通した。
「なあ」
「はい? 」
先程知った名を口にすれば、目の前の彼も知っているのか「あなたがその名前を知っているなんて珍しい」と毒を吐かれたがまあいい。
「そいつも来るのか? 」
「恐らく」
アデルフェルは何か? と聞きたげに見てくるが「いやなんでもない」と短く返答し、すぐにドアを閉めて追い返した。
開催日は来週土曜日、グリノーから聞くに「来週から来れない」というのならばそういうことだろう。
オリヴィアもきっと来るはずだ。だが、グリノー本人が行く気にならないと言うなのなら話は始まらない。
「……まぁ俺だけでも見に行くか」
◇◇◇
社交界当日。総長であるゼフィラン及びアデルフェル、ゲリック、ポールクランの四人が会場入りした。
どちらかというと交流メインはゼフィランとアデルフェル。ゲリックとポールクランは警備に近かった。
人付き合いが苦手かつ面倒事は嫌いなポールクランは壁際に背を預けていた。武器はもちろん預けられ、使用人が気を利かせてシャンパンが入ったグラスを渡してきたが、あまり飲む気にも慣れずただ呆然と見渡していた。
ゲリックも距離は置いてはいるが同じような感じだった。
ポールクランの目的はただ一つ。オリヴィアとルイスという男を探すことだけだった。
アデルフェルから聞いた情報を元にそれらしい人物を探す。
するとポールクランの右目はとある人物を捉えた。
赤い髪の女性の後ろ姿。間違いなくオリヴィア彼女だった。スモーキーピンクのドレスは彼女の魅力をより引き立たせる。
そして、目的の人物はその隣にいた。ルイスは確かに金髪碧眼の男だった。柔らかな表情はオリヴィアに向けられている。美男美女ということもありとてもお似合いだった。
「いい女でもいたか? 」
ゲリックが声をかけ肩を叩いててくる。「どいつも同じにしか見えねえよ」と悪態つけば「お前本当に性格悪いな」と笑われた。
「あれ?あれってグリノーんとこに出入りしてた……」
「その金髪のやつから縁談が来たってよ」
「ええ!? 」
ゲリックは大声を出すが賑やかなパーティー会場の中では何とかかき消された。危うく注目がこちらに集まってしまいそうになったのを手で口を塞いでなんとか耐え凌いだ。
「まじか……グリノーのやつ何も言わなかったのか? 」
「アイツはなんも言わねえがたぶんめちゃくちゃ気にしてるだろうよ」
「なるほどなぁ……」
ゲリックなりに色々察したのか、これ以上何も言わなかった。普段社交界に来ることを拒んでいる人間が珍しく素直に来たという理由もだ。
「お前本当グリノーのこと好きだよな」
「気色悪いな、そんなんじゃねえよ」
ゲリックにアイアンクローをお見舞いすればすぐに根を上げた。
会場に音楽がかかり、舞踏会が始まる。
あのお堅い総長もダンスの相手を見つけたようだ。アデルフェルと言えばもちろん女性たちに言い寄られて困っているようだが。
優雅なワルツをBGMに皆踊り出す。その中に赤い薔薇の姿もあった。とても幸せそうに踊って見せていた。
ポールクランはシャンパンを飲み干す。そして正面を向いた時、彼女と目が合った。向こうもグリノーの友人ということで認知しているのだろう。
一瞬驚いた顔を見せると少しだけ顔を曇らせ、それを見逃すことはなかった。
(おい、グリノー)
ポールクランは部屋で寝ているであろう友人に心の中で声をかけた。
(早く迎えに行け。アイツは待ってる)
◇◇◇
──次の日、ポールクランはグリノーの部屋を訪れる。ゴンゴンと派手にノックし、鍵が開いていた為勝手に部屋に侵入する。
「うわっ」
部屋を開けるなり酒の臭いがキツく鼻をついた。部屋の主といえばソファーに項垂れながら寝ていた。
普段ならこんな悪酔いをしない事は長年の付き合いから知っていた。だが、こういう時のグリノーは大概何かしら思うところはあるようだった。
「おい」
肩を揺すり、起こす。まぬけな寝ぼけ顔を晒し、瞬き数回。しばらく目を瞑ってようやく起きた。
「なんでおまえ……」
「もう朝だが」
だいぶ酔っているせいか寝起きが悪い。まるで子供のようにうーんと眠気と戦っているグリノーを見ていれば「こういう所はまだ可愛げあんのにな」と心の内で呟いた。
「オリヴィアが結婚するらしい」
ポールクランのその一言に瞼はまだ開ききらないが明らかに眉間にシワが寄る。
しばらく無言だったが、口を開けば「俺には関係ねえよ」とボヤいた。
「昨日来てたぞ」
「どこに」
「社交界」と答えれば「あー……」と理解したようだ。
「お前ほどじゃねえが上流貴族の坊ちゃんだ」
「……」
「……おい」
「俺には関係ねえよ……」
ぶっきらぼうに呟けば左頬に衝撃が走る。口の中に鉄の味が広がった。痛みのあまり、完全に目が覚め、思わず殴られた左頬を押さえた。
「てめ……」
その瞬間ポールクランはグリノーの胸ぐらを掴んだ。
「だったらこの酒の量はなんだよ。明らかに変な酔い方してんじゃねえか。情けねえな」
「お前に何が分かる」
「お前らしくねえつってんだよ」
その言葉に体が固まる。そしてしばらく見つめ合い、ポールクランは胸ぐらから手を離した。
解放されたグリノーは考えをめぐらせているようだった。
「強欲なお前らしく惚れた女は取り返せ」
「言うじゃねえかよ……! 」
グリノーはニヤリと笑えば肩をグーで殴った。拳の重さに痛みに悶えるが「そうこなくっちゃな」とポールクランも笑った。
その日の午後──。
ゼフィランに呼び出されたポールクランは総長の執務室に赴いた。面倒事は引き起こした覚えは無い。
心当たりが無いからこそ何故呼び出されたのか謎だった。
雑にノックすれば入室の許可を貰う。すると、そこには部屋の主であるゼフィラン……と何故かシャリベルもそこにいた。
「来たか」
「何の用だ」
要件を問いただすと、シャリベルが数枚の紙の束をぶっきらぼうに差し出してくる。
「それを見たら大体分かるだろう」
そう言われ、渋々それを手に取ると目を通す。そしてその中身に驚いて見せた。
「これは……」
「先日お前を社交界に指名したのはそういう事だ」
「お前グリノーたちの事知ってて言ってんのかよ」
そう言えば書類を突き返した。
「私用は挟むな……と言いたいが今回ばかりは彼女が絡んでいる以上お前たちの手を借りたい」
「グリノーは?連れていくのか? 」
「むしろアイツがメインだ。派手に暴れてもらう。今回ばかりは俺も目を瞑る」
ゼフィランの言葉ににやりと口角を上げた。
「上等。俺ら二人で暴れ散らしてやろうじゃねえか! 」
◇◇◇
一方、オリヴィアはルイスの屋敷で過ごす日々だった。共に食事をし、寝泊まりをする。夜の相手をすることもあった。
ただ、オリヴィアはここに来てから浮かない顔をしていた。
ルイスに「どうしたんだい」と心配されると誤魔化して笑うだけだった。
「結婚式、楽しみだね」
「……そうですね」
オリヴィアは無理に笑って見せた。だがルイスはそんなオリヴィアに気づくこともなく、彼女に口付ける。オリヴィアはそれに応えるように首に腕を回した。
目の前にいるルイスはとても美青年で、年頃の女性ならすぐに惚れるだろう。だがオリヴィアは彼にときめかなかった。
暗い金色の髪が視界の端に見えた。
白く透明な肌のルイスとは正反対で黒く焼けた肌は生まれつきのものだろう。
オリヴィアを撫でる手も、ルイスは穢れなく美しい手だが、思い出すその手は長年の努力が豆となり現れている無骨な手だった。だが、その手はとても優しく触れてくれた。
オリヴィアの美しい赤い髪を触るのが好きで、よく触られていた。
(グリノーさん……)
目の前の男よりも自分が恋焦がれる相手の名を呟いた。
会いたい、その思いは日々膨らんでいく。
明日はルイスと結婚式を挙げる。つまり、オリヴィアは彼のものになる。
本当はグリノーと結婚したかった。四大名家であるゼーメルの血を引き継ぐ彼の地位と金目当てではなく、純粋に一人の男として興味を深く持った。
異端者扱いされた決闘裁判で刃を交わしてなお、オリヴィアは彼のたくましさと男らしさに惚れてしまったのだ。
オリヴィアはどうにかしてグリノーに近づこうとした。誤解が解けたとは言えど、一度戦った敵である以上、グリノーは一切いい顔をしなかった。
むしろ、何故こんなに懐かれているのか不思議でたまらなかった。
それでも尚、オリヴィアは彼に気に入られようと努力した。そして、彼からこう言われたのだ。
「一晩買ってやるよ」
それはオリヴィアへの冗談であり、侮辱のつもりだった。だがオリヴィア本人はにっこりと笑って「喜んで」と言ったのだ。
まさかの返答にさすがのグリノーも驚いた。だが宣言してしまった以上後に引き返せなかった。
その日の夜、二人は交わった。互いに随分と慣れた様子で、熱く求めあった。
それから度々グリノーの部屋にオリヴィアは招かれた。その度互いの熱を求め、貪り合うまでには仲を深めていった。
今ルイスに抱かれながら違う男の幻想を見ていた。彼女にとってこれは仕事でしかなかった。
「気持ちいいかい? 」
「ええ……」
嘘だ、全然気持ちよくない。心が濡れることがない。
「愛してるよ、オリヴィア」
「……私も」
愛しています、グリノーさん
◇◇◇
翌日、シャーロンズ家にて結婚パーティーが開催された。
多くの客人たちはルイスの花嫁の姿を見ようと楽しみにしていた。中にはルイスに選ばれなかった女たちが悔しさで声をあげてもいたが。
「それではルイス様、オリヴィア様の入場です」
暗くなった会場にスポットライトが当てられる。
開かれた扉の向こうには白いフロックコートとウエディングドレスに身を包んだルイスとオリヴィアが腕を組み立っていた。二人は一礼すると会場内に入る。
二人が会場内に足を踏み入れた瞬間だった。
何やら外が騒がしい。盛大な音楽でも聞こえるほどの物音に全員が反対側の扉に視線を向けた。
そして、扉は勢いよく開かれた。
「邪魔するぞ!! 」
よく通る怒声にオリヴィアは絶句した。タキシードに身を包んだグリノーとポールクランが入ってきたのだ。
その瞬間、ルイスの背中により隠されたがみ間違いではない。あの声はグリノーのものだった。
「あ、あれは!?」
「ゼーメル家の!! 」
二人の乱入により会場内はパニックに陥っていた。
二人を取り抑えようとするルイスの家来たちが襲いかかるが、場数を踏んでいる彼らに反撃され、床に伸びていく。
グリノーとポールクランはすぐにルイスとその後ろに隠されたオリヴィアを捉えると、すぐにズカズカと近寄る。
ルイスは必死にオリヴィアを守ろうとした。
「オリヴィア、逃げてくれ」
小声でそう呟くが、オリヴィアは動こうとしない。
「オリヴィア」
近くまで来るとグリノーは静かに彼女の名前を呼んだ。
びくっと震えた彼女はルイス越しにグリノーを見る。視線が交わされれば、グリノーはそっと手を差し出した。
「迎えに来た」
その言葉を聞くなり、オリヴィアは目に涙を浮かべグリノーに向かって走り出した。
「オリヴィア!? 」
まさかの展開にルイスも驚きを隠せず、手を伸ばすがその手は届かず、オリヴィアは真っ直ぐにグリノーに飛びついた。
そして抱きとめるなりグリノーは姫抱きし、「じゃあな! 」とだけ嬉しそうに声を張り上げるとオリヴィアを連れて会場から逃げ出したのだ。
「追いかけろ! 」
「させるかよ」
付き添いで来ていたポールクランが愛槍、ウィンターを片手に男たちの前に立ち塞がる。
ドラゴン相手に戦場を駆け巡る彼に複数の人間の相手など容易いものだった。
会場から無事逃げ出したグリノーとオリヴィアは乗ってきた飛空艇に身を隠していた。
しばらく沈黙が続いたが、グリノーはそっとオリヴィアに自分のコートをかける。
そしてオリヴィアはグリノーの目を見て、泣きながら笑いかけた。
「グリノーさん」
「んぁ? 」
「ありがとうございます」
「んだよ、急に」
「グリノーさんに助けに来て欲しかったので」
礼を言われる筋合いはない。自分は勝手に拗ねていただけだ。無くしかけた時にやっと大事なものに気付く愚かさに呆れ果てていたと言うのに。
「私、グリノーさんが好きです」
「……おう」
急な告白に戸惑い、ぶっきらぼうな返事をする。だが、それはあくまで照れ隠しだと分かっていた。
「タキシード似合いますね」
「……」
「ふふ、返り血まで付けて……すぐに洗濯しないと
と……っ」
顔を近づけられたかと思えば口付けられる。しかも舌を絡めてくる濃いキスだった。
オリヴィアはずっとこれが恋しかった。甘いキスについ力が抜けていく。
しばらくして唇が離れたと思えばグリノーはこちらを見ながら「もう離れんな」とだけ呟いた。
「はい」と短く返答すれば今度は触れるだけのキスをオリヴィアからしたのだった。
その後、全身返り血で真っ赤に染まったポールクランが飛空艇に戻ってきたのを見るなり、その有様にドン引きするグリノーとつい失笑してしまうオリヴィアであった。
「随分暴れましたね」
「さすがに数十人じゃ俺でも厳しかったわ……」
「ゼフィラン来たんじゃねえのかよ」
「来るまでに、の話に決まってんだろぉ……」
「……? ゼフィランさん? 」
「あ〜……仕事でどっちにしろシャーロンズ家を締め上げねえといけないって話でな」
「あっ」
「どうした? 」
「……まあ、そちらに任せましょう」
「すげえ含んだ言い方するじゃねえか……」
「まあこうやって、グリノーさんが白馬の王子様として助けてきてくださったので結果オーライです」
そう言ってグリノーに寄りかかればグリノーは少し照れた様子だった。そんな二人の様子を見たポールクランはひゅーと冷かせば「てめぇ今だけだからな命拾いしたのは」と羞恥から拳を握りしめ、青筋を立てて見せた。
(本当、お熱いな)
友人とその想い人が結ばれたことにポールクランはどこか晴れた気持ちになった。