もうすぐ春がやってくる。
否、この北海道という日本の最北端の地域では、春と言えどまだまだ暖かいとは言い難い。
それでも終わりと始まりの季節はやってくる。
わたしには終わるものも始まるものも特にはなくて、強いていえば学年とか。それ以外はすべてが今までと同じように感じる。特に変わった出来事もないのだから当然だ。
そのことに不満があるわけじゃないけれど、どこか新しいものを求めてるのも確か。毎日同じことの繰り返しだとわたしは飽きる。都会と違いシンプルな同じ景色に。
「結局は不満なんじゃないのかい?」
「えー、違うよ」
わたしが否定をすれば彼の表情が納得できないという表情に変わった。普段はほわほわ、にこにこ、悪く言えば能天気とも受け取れる顔なのに、今は眉間にしわが寄っている。
そんな顔したらせっかくの美形がダイナシだよ少年。
「だれのせいかな」
「さあ?」
「へえ」
「きゃあお兄サマ冗談よ」
クスクスとふたりして笑いあう。
十分に暖房のきいた部屋で、さらに毛布に包まるわたしたち。グルグル巻きにされた格好はなんともおかしいけれど、でもこうしてるとあたたかいから気にしない。
「名前はほんとに寒がりだね」
「悪い? そういう士郎だってマフラー離さないのに」
言ってから少し後悔した。士郎が控えめに笑うんだもん。それだけで自分の犯した過ちの大きさに気づく。
そしてわたしに謝らせてくれない彼は、優しく頭を撫でてくるからずるいと思う。怒ってくれれば素直にごめんって言えるのに。怒られないと謝れないっていうのは問題だけど、士郎はそういう空気にてしまう。
「……ね、士郎」
「ん?」
だから謝る代わりに、こてんと彼の肩に頭をのせてさっきの続きを言おうと思う。まあどのみち言う気でいたから代わりにもならないけれど。
「確かにね、ほとんど何も変わらない日々は退屈だと思うんだ。景色だってそう。綺麗だし好きだけどね、同じだと飽きちゃうの」
だからと言って都会が好きなわけでもない。あれはあれでごちゃごちゃしすぎて、田舎者のわたしには余る。満足できないのは、不満があるのはそこに何かが足りないから。
わたしにとってベストなものがそこへ加われば、それだけですべてに魅入ってしまう。
「そのベストなものっていうのは、士郎だよ」
士郎がいてくれればつまらない日々が楽しくなる、変わらない景色が色づいていく。新しい何かを求めなくても、自然と士郎が新しいものをくれるから。日に日に強くなるいとおしい気持ち。
「だから士郎がいないとずっと不満で、ぜんぶに飽きちゃう」
「……わがままだなあ」
そんなことを言いながらも頬を緩めて嬉しそうな表情をする士郎に、あぁほんとに好きだなって思い知らされる。
「でも、僕も名前がいないと不満だらけだから……僕もわがままなんだね」
ふたりして笑いあえばもう、心からあたたかくなれた気がした。
想いに融けてしまえ
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