名前〜!」
「ん?どーしたん」
放課後の部活。レギュラーは打ち合いをしている練習中にそんな声が聞こえてきて、思わず視線をそっちに移した。
「膝擦りむいてもーた!」
「こら金ちゃん!毎日怪我つくってどーすんの」
腰に手を当てて怒るその姿には“可愛い”の一言しか出てこんのに。呆れながらも金ちゃんをベンチに座らせて怪我の手当てをする彼女に、金ちゃんは満々な笑みを見せて嬉しそうにしとる。
「はい、もう暴れすぎたらあかんよ」
「おーきに!」
「わっ!金ちゃんっ」
怪我の手当てを終えてそう言った彼女に金ちゃんにがばっと抱きよろける。そんな2人は仲のいい姉弟に見えるけどな、引っ付きすぎやわ。
「名前ー」
「けんやん、なに?」
「それいつまで言うねん。…ちょっと足捻ってもうたからな」
「もー、やからけんやんはバカやねんで!氷で冷さな」
慌てて氷入りの袋を持ってきて謙也の足首に当てる。なんやへたれ、そんくらい自分でできるやろ。
「名前ちゃーんっ」
「ま、待てや小春!」
「ふたりともまた?」
と、部活中にも関わらず毎度のように追いかけっこをしてたらしい小春とユウジが彼女のもとへ走ってきて何やら言い始める。
「助けて名前ちゃん!ユウくんったらアタシを襲おうとすんのよ!」
「え、」
「違うて小春!誤解や!」
「ユウジ趣味悪っ」
「ちょっとそれどう言う意味よう!?」
今のセリフに固まってしもた彼女と眉間に皺よせとる謙也と金ちゃんに目もくれず、あの2人は勝手に痴話喧嘩のスタート。……部活中なんやけど。
「名前先輩ー、俺のピアス知りません?」
「え?知らんなあ…コートで無くしたんちゃう?」
「いや、無かったから名前先輩に聞きに来たんすよ」
ちょい待て財前。ピアスなんかあとで探したらえーやろ、今部活中やねんな。ちゅーかなんでそれを彼女に聞くかわからへん。なんて思ってたらいつの間にか彼女の周りには人、人、人。抱きつくわへたれやわ騒ぐわサボるわ…。ここにあのもじゃもじゃがおらんだけマシや。
「自分らいま部活中て忘れてないか!!」
思わず叫んだ俺に彼女の周りにいるメンバーがキョトンとした視線を向けてくる中、小春だけがにやりと笑ーてきよった。
「なんや蔵リン、名前ちゃんとられたからて妬きもちか?」
しかもドンピシャで言葉に詰まる。いやいやそもそも今部活中やし俺部長やしなんも間違ったこと言うてへんねんけど。なんでこんなドキドキせんとあかんねん。
「……蔵、そーなん?」
沈黙のあと可愛く首を傾げながら聞いてきた彼女に顔が熱くなってきて思わずそらせば、くすくすと控えめな笑い声が聞こえてきた。
なんかそれが悔しくて、俺は未だあいつらに囲まれてる彼女の前まで来て正面から抱きしめる。謙也が焦りながらなんか言っとるけど無視や。
「くーら?」
「なんやねん…部活中やのにみんな名前に絡みよって…」
「いや部長、いまも部活中ですから」
「俺かて名前とくっつきときたいっちゅーねん」
拗ねたガキんちょみたいに(実際拗ねとるけど)彼女に回してる腕に力を込めれば、頭に小さくて温かいぬくもりが降ってきた。
「ははっ。甘えんぼーやね、今日の蔵は」
優しく撫でられる手に、嬉しさと優越感を感じる。子供扱いされたって、それが彼女なら別にいいと思ってしまう俺はかなりの重症かもしれへん。
「……ん。充電完了」
物惜しいけどまだ部活が残ってるから仕方なく彼女から離れる。
「頑張ってな、蔵!」
「…おん」
でもその太陽みたいに明るくて暖かい笑顔が見れれば、残りの部活の時間もなんなく余裕でこなせれるわな。
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