「――お前は、おれの大嫌いなヤツらにそっくりだ」


 ああ、終わる。
 このグラン・テゾーロが……彼が築き上げた檻の国が。
 どれほど力を得ようと、金を持とうと、彼が決して手にすることのできなかったもの。それを両手いっぱいに抱えた一人の少年によって、この天国と地獄の檻が壊された。


「……麦わら、あなたに感謝するわ」
「ハァ……ハァ……お前、テゾーロの仲間じゃ、なかったのか?」

 人を金と恐怖で支配した男と、絆と信頼で繋いだ男。その結果が今≠セ。
 少年の目には曇りがない。誰の支配も受けず、己と仲間を信じる力を持つ少年。どんな人生を送ってきたのだろう、想像するだけで羨ましい。
 彼は知っていただろうに、わたしと出会ったときには既に、あの瞳は曇っていた。
 人間の本当に穢い部分だけしか見てこなかったという彼の目に、わたしは何もしなかった。わたしも穢い闇に触れてきた人間だから。
 それがわたしたちと少年の違い。歩んできた道が違うから、考え方も行きついてしまった答えも違っている。
 少年の言う『仲間』と、わたしたちが今まで続けていた『仲間』には大きな違いがある。だからその問いには、笑ってみせた。
――それでも、彼もわたしも、確かに夢をみていたあの日々に、知っていたものがあるから。


「お願いがあるの」
「なんだ……?」
「わたしを、彼のところまで投げて」

 その言葉に麦わらの一味は何をバカなことを、という顔をし、驚きの声を挙げる者もいた。
 彼が麦わらに飛ばされた先は海軍の軍艦。つまり、自ら海軍に捕まりにいくような自殺行為をわたしは頼んでいるのだ。

「……わかった」
「ルフィ!?」
「ありがとう」

 つい先ほどまで闘っていた敵を心配するような素振りを見せる麦わらの一味は、なんともおかしな海賊団だ。世間で頭のネジがぶっとんだ一味と云われているのは、どうやら間違いではないらしい。
 けれどそれも、少年の人柄ゆえに集まった仲間だからだろう。
 そんなおかしな海賊団にまぶしさを感じて触発されたのだろうか。彼が今まで信じようとしなかったものを、わたしが昔に諦めたものを、今からでも足掻いてみてもいいだろうか。



やり直すための夢/160916
ALICE+