ゆるさない。あの人を裏切ることは、わたしがゆるさない。

 この船から逃亡しようとしても、あの人を殺そうとしても、あの人の所有物を盗もうとしても――それらは決して不可能だけれど――タナカさんが指示を出すよりも早く、ましてやわざわざあの人が手を下すまでもなく、わたしが動いて消す。


「お願いよ……もう楽になりたいの」


 だから例えそれが女子供であろうと、酷い抵抗をしようと、死に飛び込もうとしていようと関係ない。
 最後にその命を狩るのはわたしだ。


「……また始末したのか」


 血の臭いを漂わせたままテゾーロ様に会ってしまった。
 何故か死の香りをさせるわたしにいい顔をしないテゾーロ様に、まるで自分が彼の意に反することをしているのだと揺らぐ。


「ええ。長髪のブロンドに……とても綺麗なエメラルドの瞳の女を」
「…………」


 けれど、そう。
 とても意地の悪い女であるわたしは、彼がほんの僅かに険しい顔をする瞬間を知っている。
 そしてその脳裏に想っているであろう人物の欠片でさえ壊して灰にしてしまいたくて、でも決してできないことを知っている。

――だから、わたしが狩るのだ。



それをなんと呼ぶか知っているかい/160915
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