船長のギャンブル好きはどうにかしなければと思っていたけれど、どうにかする前に終わってしまった。


「お前たち弱者は今から私の所有物だ」


 あのとき心底愉快そうに歪んだ男の顔は、一生忘れないだろう。
 ギャンブル好きが集う夢の国とはよく言ったもので、負けたものの最後など容易に想像がついたのに。一獲千金を夢見た仲間たちはこの国の支配者たる男に嵌められた。


「そろそろ、絶望を理解する気になったか」
「……誰が」


 鎖に繋がれた手足は重たく、持ち上げることすら困難で、この状況に陥ってから何日経ったのか数えるのも億劫だ。


「金のないお前たちは支配されるしかない。逃れる方法はただ一つだ」


 最後に仲間をこの目で見たのは、男の能力で捕らえられたとき。それを最後に仲間の安否もわからないが男が言うに、仲間は船長一人を残してみんな死んだのだと。


「金に目のくらんだ愚かどもの最後の一人が……今日、死んだ」


 男が手にした映像でんでんむしから映し出されるそれは、あんなに陽気に笑う船長が狂い、奇声を上げ、そして自分でその命を絶つ様子。
 今までもずっと見せられてきた。仲間が虐げられる映像、絶望する映像――生きているだけでいいと思っていたが、それはわたしのエゴでしかなかった。

 ぞわりと本能が理解した。もう、わたししか残っていないのだと。

 見せられていた映像が作り物であればという希望もなくなった。直接仲間と会わなければ安否を確認できないと思っていたけれど……。
 足元から迫りくる恐怖は、目の前で顔を歪める男の望んでいたものなのだろう。
 ずっと一緒に航海してきた仲間がいなくなった。世界にただ一人生き残ってしまった。
 こんな、こんな男に――!


「……わたしは……絶対に支配されない……!!」


 睨みつけた男の瞳は、心底愉快だといやしく歪んでいた。



毒をまく瞳/160918
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