HMAL FOREVER!
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Cバレンタイン


 シンクにしがみつかないと足から崩れ落ちそうだった。胸の下のステンレスはひやりと冷たかったが、火照った体にはその冷たさも刺激になる。尻の穴を掻き回す指が快楽を与えようと激しく抜き差しを始めた。
「や、や、もう、もうだめやから……あ、あ、だめ……」
 仰け反ると射精する。もう放してほしいのに、指はまだ動き続ける。
「もう入れて、いって、お願いやから」
「ばか言うな。俺がいったらそれで終わりになるだろ。お前をもっといかせてからだ」
「もう無理やから! 出ないから……もう出ないから……ぁあ……」
***
 床に寝転がって壁のカレンダーを眺めていた。今年の二月は十一日十二日が連休か。でも毎年この辺りに入試が来るから、今年も彼は休みにはならないだろう。どちらにしてもバレンタインでカップルだらけのディナーに男二人で交ざって食べるのは気が引けるから、日程をずらして……。
「ずらすってもなぁ」
 二月のカレンダーの下、三分の一は赤い四角で囲まれている。春に出る雑誌の中篇の執筆があるのだ。もうぼちぼち始めてはいるが、たぶんこの辺りが佳境だろう、と思うと不確実な約束を交わすわけにはいかない。ましてや。
「俺、ただの友達やもんなぁ」
 バレンタインで火村にチョコレートは渡せない。冗談のように渡せばいいではないか、と何度も考えたけれど、火村にはきっと気づかれてしまうだろう。気づいているのに気づかないふりをされたり、心の底から謝られたりしたらと思うと、怖い。もしも彼が付き合おうなんて、あり得ないことだけれどそう言われたら、たぶん逃げてしまうだろう。
 それなのに最近は抑えきれなくて、つい、火村にこの気持ちを打ちあけたくなってしまうのだ。打ちあけてどうしたい、なんてことは考えていない。ただ苦しいから吐き出したいだけ。
「吐き出された方はたまらんよなぁ」
 自分が楽になりたいから相手を苦しめていいなんて話はない。だから今年も悩むのだ。彼にわからないようにバレンタインのプレゼントを渡すにはどうしたらいいのか、を。
 ちなみに昨年はインフルエンザに倒れてしまったので、連絡すらせずに終わってしまった。その前の年は裏磐梯で死体と対面し、偉そうに火村を呼びつけてフィールドワークをするついでに酒を酌み交わした。その前は……。どうやら彼にまともにプレゼントを渡せたことなど一度もないことに気づいてしまった。これは少しショックだ。深呼吸をして気を取り直そう。
 バレンタインまであと一週間か。またカレンダーを見ながらうなった。もうプレゼントを渡すことは諦めた方がいいんじゃないか、でも、なんてまだ未練たっぷりに考えていたら。
「うわっ」
 手の中でメロディが鳴り、持っていたスマホが震えた。うっかり落としそうになってわたわたと持ち直す。着信画面には<火村>の文字が点滅していた。何てタイミングでかけてくるんだ、この男は。
「はいはいはいはい」
「掛け声かよ、先生、元気だな。今日は家にいるか?」
「ちょ、名乗ろうか、先生。それ何時のこと? ちょうどこれから夕飯の買い物に行こうと思っててんけど」
「誰かなんてスマホなんだから、見たらわかるだろ。それなら俺が買い物していくから家にいてくれよ」
「ええけど、どうかしたか?」
「どうもしないさ。何か理由が必要か?」
 理由もなしに何かをする男ではないと思っていたから訊いているのだが。
「何か食べたいものはあるか?」
「え、ほな鍋にしよや、寒いし。葱と椎茸と昆布はあるから、他は適当に買うてきてくれるか。豆腐は多めがええなぁ」
「鍋か。それはちょうどよかった」
 ちょうどよかった?
「米はあるのか?」
「雑炊用か? ほしいなら炊いとくけど」
「よろしく頼むよ」
 首をひねりながら通話を終えると、そう言えば何時に来るのかを訊き忘れたな、と思いながら米を研ぐべく腰を上げた。
 火村は電話から一時間もしないうちに来訪すると、手早く野菜を切って鍋の支度をした。コンロをダイニングテーブルに出すと、彼が来る前に昆布を敷いて出汁を取っておいた土鍋を載せる。
「柚子をたくさんもらったんだ」
 火村が柚子の皮を刻んだものを鍋に放り込むと、ふわっと香りが立ち上った。ええ匂いやな、と目を閉じて香りを楽しんでいると
「で、こっちは果汁」
と、マグカップを置く音がしたので覗き込んだ。なるほど、鍋ならちょうどいい、だな。
「ああ、こっちもええ匂いやな。これ、婆ちゃんには?」
「まだたくさんあるから、これから持って帰る」
 葱の煮える甘い香りが漂ってきた。鍋のくつくつ言う温かい音に頬が緩む。
「今日は泊まらないんか?」
「昨日入試だったんだ。明日からしばらくは午前様だから、帰るよ」
「はぁ? 何でそんな大変な時にこんなとこ来てん。柚子なんて……」
 いつでもいいのに、と続けようとすると、
「アリスに食べさせたかったからいいんだ」
とさえぎられてしまった。何と答えたらいいのかわからなくなって彼の顔を見ると、涼しい顔で小首を傾げて、皿に柚子のポン酢を入れてくれる。
「もう葱もいいんじゃないか?」
 そう言いながらいろいろと取り分けてくれるのを見て、ありがとう、と小声で言うと、どういたしましてと返ってきた。
 甘いとろりとした葱を吹き冷ましながら食べていると、火村が壁のカレンダーを指しながら
「あの赤い四角は執筆日?」
と訊いた。
「そうや。十七日の土曜日に片桐さんと打ち合わせたら、そのまま執筆に入る予定になってる」
 頷きながらそう答えると、ふぅん、と准教授は顎を指先で擦った。
「来週は俺は毎日午前様かな」
「そうか、忙しいなぁ」
「私立はセンター入試の後の通常の入試が大変なんだよ」
「そうかもな」
「でも十五日は休める予定ではいるんだがな」
「へぇ、そらよかったな」
 火村はこちらをちらりと見ると、眉を上げながら顔を仰のいた。
「ずいぶん興味がなさそうな返事をしてくれるよな」
 今年もやっぱりバレンタインには何も渡せなさそうだな、と考えながら生返事をしていたのを皮肉られてしまった。
「そんなことないで。この時期は時間合わせて飲みに行くのも難儀やなぁって残念に思ってただけや」
 今日だって帰ってしまうんだろう? そうは言えずに曖昧に笑うと、火村の視線が揺れた。
「そうだな」
 彼はそれだけ言うと白菜を口に入れる。それを見て同じように白菜を食べると、甘酸っぱい果汁が口に広がって香りが鼻に抜けた。
「これ何となく甘い気がするんやけど」
「俺もそう思う。完熟ってやつかな。市販の柚子より味が濃いよな」
「売ってたんちゃうんや?」
「庭に生ったからってよその先生が配ってたんだよ。せっかくだからって多めにもらってきた」
 それでわざわざ届けてくれたのか。箸を持つ指先に少しだけ力が入ってしまった。そんな些細なことでもうれしいなんて、恋の病とやらは重症だ。
「これ美味しいわ」
「そう言ってもらえると、寒空に天王寺くんだりまで来た甲斐があった」
「寒空って、ここまで地下鉄で来たんやろ?」
「当たり前だ。こんな寒い日に谷町筋を二十分も歩くのは愚か者のすることだぜ、先生」
 火村の足ならもっと早く着けそうだが、ああそう、とだけ返すとまた眉を上げた男に溜め息を吐かれた。
「……まあ美味しく食べてくれる顔を見られたからいいさ」
「ありがとうな。ごちそうさん」
 鍋を終えて雑炊を食べたあと、火村は食器も洗ってくれた。そんなことしなくてもいいのに、と声を掛けたが、いいじゃねぇか、などと言いながら鼻歌交じりに片していくので強くも言えない。ふきんを持ち上げたら、もう少し乾いてからにしろと飛んできたので、はいはい、と脇に立って見ていた。
「なぁ、アリス」
「ん?」
「お前、来週は忙しいのか?」
「打ち合わせ前なんで資料集めとプロットの作成くらいやな。もう大体終わってるけど」
「そうか」
 何でそんなことを訊いたのか、火村の顔を見ても答えてはくれなかった。
***
 前日に降った雪でキラキラと光る駅を出ると、タクシーを探した。この道は日陰が多いので、たぶんその辺りは踏みしめられて氷のように滑るに違いないと思ったからだ。幸いなことにタクシーをすぐ捕まえることができたのでほっとした。時刻は午後三時を回ろうかという頃だ。
 北白川の火村の下宿は今出川通から細い道を一本入ったところにあったので、通で下ろしてもらうと、よろよろと足元に気を取られながら歩を進める。
 何とか下宿にたどり着いて一息吐くと、白い蒸気が口許からふわりと昇って空中に溶けて消えた。
「有栖川さん、お寒いとこおおきに」
 下宿の主人は、まずおこたに入りよし、と布団をまくってくれる。隙間から小さな顔が三つ覗いたのを見て寒さで強張っていた顔が緩んだ。
「ちょっと入るで?」
 声を掛けると脚を突っ込んだ。まだそんなには冷えてはいないだろうと思っていたのに、温もるにつれて肌の奥でチクチクと痛みを感じて苦笑いした。しばらくして小さいものがまとわりついてくるのに唇の端が上がる。
「火村は昨日も遅かったんですか?」
「ええ。私は十時に寝たんで、帰ってきたのは何時かよう知らんのやけど、今朝はまた大層早ように出かけていきましたしねぇ。あまり寝てないんちゃいますやろか」
「寒いのにご苦労さんやなぁ」
「ほんまに。でも火村さん今夜帰ってきはったら喜ぶわ」
「喜びますかね」
 それならいいんだけどな、と笑った。
 婆ちゃんこと篠宮時絵としばらく近況報告を交わし合い、では始めるか、と立ち上がる。
「お番茶だけは先に煎れて冷ましてありますから使てください」
「婆ちゃん、おおきに」
 今日は十四日、世間的には聖バレンタインデーだ。火村は今週は毎日午前様だろうと言っていたし、どちらにしてもプレゼントは渡せそうになかったから、せめて温かいお粥さんでも食べさせたいなぁと下宿の主人に電話で相談したところ、ほな作りに来るついでに一緒に食事をしましょうか、ということになった。
「これ、生麩を炊いたんと白和えを持ってきたんですよ」
「あらまぁ、有栖川さんまめやわ。美味しそうですねぇ」
「炊くのに時間かかるからさすがに昨夜作ったんですけどね。お口に合いますか」
「うん、よろしよろし」
「そらよかった」
 米を洗って強火で炊きながら、網で魚を焼く。
「お粥さんのときに味噌汁て作りますか?」
「普段やったら作るけど、帰ってきてそこまでするのはしんどないですか?」
 成る程、おかずだけならまとめて電子レンジに入れればいいわけだから、温め直す味噌汁は少し面倒かもしれない。
「すぐき薄切りにしましょうか」
「あら高野で買うてきたん。これ好きです。うれしいわ」
 粥に番茶を足しながらさらりと仕上げると、これで一通り揃った、と婆ちゃんと向かい合わせに座って、いただきますと手を合わせた。
「有栖川さんの味はほんま優しいですね」
「え、薄すぎますか?」
「嫌味とちゃいますよ。火村先生の体をいたわってはるんやなって、愛情を感じます」
「愛情って」
 婆ちゃんの顔を見ると、にこりと笑って、ね、と言った。
「こういうのはね、ちゃんと伝わるもんですよ、有栖川さん」
「……そんなんちゃいますよ」
「先生ほんま喜ばはりますよ。こんなことしなくていいんだよ、なんて言いながらすぐ電話しはるんちゃいますか」
「そこ何で文句から入ってるんですか」
「照れ屋さんですやろ」
 食べ終わって食器を洗った後、ラップをかけた料理の脇に手紙を残しておくことにした。
〈火村先生、お仕事お疲れ様でした。茶粥があります。手間だろうけど温めて食べてください。私の仕事が終わったら、また呑みにでも行きましょう。親愛なる君のワトソンより〉
 それから婆ちゃんと少しだけお酒をいただくと、タクシーを呼んで京都駅まで向かった。
 時刻は午後九時ちょっと前。
***
 壁の時計が十二時を回った。今年の二月十四日もこれでお終いか。何だかちょっと空しくなって急にアルコールが欲しくなったが、あいにくと家には何もなかった。コンビニにでも行くか、と着込んで家を出た。
 寒いのにビールは冷えるだろうと思い、焼酎とつまみになりそうなものをいくつか買うと、珍しく降った雪が融けきらずにまだ路肩に残る道を急いで戻る。濡れているわけでもないのに髪が冷たく重たく感じられて、肩をぶるっと震わせた。
 マンションのエントランスのすぐ脇にコインパーキングがある。その前を通り過ぎようとしたときに、側面をへこませたベンツが見えて、驚いて足を止めた。
 先日はこのへこみはなかったような気がするが、しかしこのあまりに見慣れた古めかしい型の外車はどう考えてもあの男のものだろう。中に人影はない。来る前に連絡くらい寄越せばいいのに、と思って気がついた。スマートフォンを家に置きっ放しだ。慌ててエレベーターに飛び乗った。
 案の定、部屋の扉に寄りかかった男がいた。
「火村、すまん、待たせたか?」
 声を掛けると、よう、と准教授は手を上げた。
「謝らなくていい。俺が突然訪ねてきたんだ。それにまだ俺が来てから数分しか経ってないぜ、先生」
 コンビニに行って帰ってくるまで十五分ほどしか経ってないだろうからそうなんだろうが、それでも申し訳なくてむずむずする。
「暖房入れたまま出てるから、中は温かい筈や。ごめんな」
 鍵を開けて火村を押し込むと、早くリビングへ行けと促す。せっかちだな、と言いながら素直に押されてくれた男の背中から嗅ぎなれた煙草の匂いがした。
「……茶粥をありがとう、アリス」
 火村はコートを脱いで掛けると、振り返ってそう言った。食べてくれたんやな、とうれしくなり、ああ、と頷く。だが、それを言うためだけにわざわざ来るはずがない。
「フィールドワークで来たんか?」
 そう尋ねると、火村は目をパチパチとさせ、いや、と言った。
「今日は何時に帰ったんや?」
「十時半には帰れた」
 今日は午前様でなくて良かったな、と言おうと思ったところで気づく。ではこんなところで何をしてるのだろう。火村は唇を軽く噛むと、
「お前のせいで婆ちゃんをちょっと責めちまったよ」
などと珍しいことを言う。婆ちゃんを責めた、だなんてどういうことだろう。
「おい、俺のせいとは穏やかでないな。いったい何の話やねん」
 火村の苛ついた語調をいぶかりながら訊き返した。
「帰ったら婆ちゃんが、有栖川さんが来てくれたんですよ、って言うから、てっきり部屋で待ってくれてるんだと思ったらいなかったんだよ。手紙を読みながら食事をしてて、つい、何でアリスを引き留めてくれなかったんですか、って婆ちゃんに言っちまった。婆ちゃんと夕飯食べて帰ったって聞いてさ」
 そう溜め息交じりに言われても。
「俺も思いつきで婆ちゃんに電話して行ったからなぁ。まぁお前は何時に帰るかわからんし」
「俺、次の日休みだってちゃんと言ったよな」
「ああ、言うてたと思うけど、なら尚更俺がいたら休めないやろ」
 火村が何を言いたいのかをつかみ損ねたまま、いたずらに会話を続ける。今のところ彼の言葉からはここに来た理由はわからない。火村はがしがしと頭を掻くと、ああもう、と声を上げた。
「十時半に帰ってすぐにここに来るつもりだったのに、茶粥を食べてたらてっぺん回っちまったし」
 茶粥を置いていったことが悪かったのだろうか、と考えたことが顔に出たのだろう。
「違う、茶粥は美味しかったし、うれしかったからな」
 火村が珍しく慌てて否定し、そうじゃなくてさ、と小さく呟いた。
「なに?」
「……ところでどういう風の吹き回しなんだ、わざわざうちに来て茶粥を作ってくれるだなんて。ああ、生麩の煮たのと、ほうれん草とひじきとこんにゃくのごま白和え、だっけ。あれもうまかったよ。魚もあったし、ごちそうで驚いた」
「あぁ、この前来たときに十五日が休みやて言うてたから、お疲れさんも兼ねて何となくな」
 あえて十四日には触れないように気をつけてそう言うと、そうか、と火村は深く息を吐き、鼻の先を掻いた。
「まあいいさ」
 鞄の中から小さな包み紙を出すと、ほいと投げて寄越す。受け取って火村の顔を見ると、開けなよ、と顎で指示された。
「紅茶?」
 赤い缶にはSt. Valentine's Dayと入っている。学校あたりでもらったものを持ってきたのだろうか。
「この前高島屋の前を通ったら試飲させてくれたんだよ。美味しかったんでお前への土産にでもと思って買ったんだ」
 わざわざ買ったのか。少し驚いたが、顔には出さずに、そうなんや、と頷いた。
「ありがとう。ほな一緒に飲むか」
 火村を置いてキッチンに入ると、電子ケトルをかけた。缶の中のアルミの袋を開けるとチョコレートの香りがふわりと広がった。
「ええ匂いやな。フレーバーティーか」
「お前が好きそうだなと思って」
 うん、と頷きながら手近のティーポットを寄せた。ポットを温めてティーパックを入れて。
 脇から左右に現れた手がキッチンの上に置かれ、火村の腕の中に閉じ込められた。振り返るまでもなく、背中に貼りつく感触が追ってくる。微かに動く空気に首筋を撫でられ、胸の中がぎゅっとなった。
「アリス」
 耳許で低く響く声を押し込まれて目を瞑った。背筋を何かが這い上がってくる。大きく息を吸い、それから吐いた。
「……逃げないのか?」
「何から? 誰から?」
「ずっと見ない振りしてやってたのに、あんなことするから」
 あんなことって何、と訊く前に腕が体に巻きついてきた。
「アリス、つかまえた」
 耳に唇が当てられた。もう逃してなんてやらないから、覚悟しな。そう囁かれて吐息が震える。檻のように囲う腕の力が少しずつ強くなる。
 火村の匂いと紅茶と甘い甘いチョコレートの香り。
 これは夢? それとも。
 ジーンズのジッパーを開ける音がして、指の感触を布越しに感じた。
 甘いチョコレートの香りに包まれて理性は徐々に奪われて。
 後はただひたすら火村の指にいかされて腰を振り続けるだけだった。
「あ、あ、いく…いく……」
 火村に入れて欲しくて尻を突き出すのに、舐められながら指に中を掻き回されるだけで、焦れて焦れて気がふれそうだった。
「火村ぁ……入れてぇ……なぁ……」
 なのに彼はまだその太いものを入れてはくれないのだ。ああ、ああ、意識が朦朧とする。もっと気持ちよくして……お願いやから……。
 意識が白濁したころ、硬く熱いものが肛門に当てられるのを感じて、体を震わせ……。

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