HMAL FOREVER!
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E甘く溶かす


 今年のバレンタインは家で飲もうと私から誘いをかけて、火村からもすぐに色の良い返事が返ってきた。浮かれた私は少々値段の張るワインを用意し、火村はそれによく合うチョコレートの紙袋を下げて登場した。
 驚いた私はまさか女性が溢れるデパートで買ってきたのか、と問えば「ネットで見つけて注文した」とのことだ。
 火村から手渡された質の良い小箱を持ち上げる。厚みがある蓋を開けると小箱の中には鈍く光るチョコレートが収まっていた。すでにお互いにひとつずつ摘んでいて、残りは四つとなってしまっている。
 貞淑に箱に収まるチョコレートを一粒手に取り、口の中へと放り込んだ。中の液体がトロリと溢れて芳醇な香りとともに口の中が甘く包まれる。裏側に貼られているシールにはびっしりと英字が並んでいる。普段はあまりお目にすることがないラテン文字も並んでいるところを見るとヨーロッパ圏のものと推測できた。
「俺にも一粒貰えるか?」
 こちらに突き出された口にチョコレートを一粒突っ込む。いい歳したおっさんが同い年の男性に「あーん」とは。外で見ればかなり寒い光景だろうが二人は酔っているし、そしてここは私の家なので許してもらおう。
 あまり量を飲んだとも思えないが、気分が良く頭がぽーっとしている。身体が火照っていて、突っ伏したテーブルがひんやりと心地よい。目の前にいる私より酒が弱い火村も目元が赤らんでいる。私は上機嫌で箱の表面をなぞった。あの火村が、私に、チョコレートを。
「なあこれ、よく読めんかったけど中に何が入ってるん?」
「……知りたいか?」
 火村がぺろりと唇を舐めてこちらを向く。
「えっ、まあ……なに?変なもんなん?」
「Afrodisiaco」
 するりと発音の良いバリトンが男の口から滑りだす。
「は?何?」
 頭が回らない。おかしい。思考できないほどに飲んではいないはずだ。
「英語で言えばLove portion」
「それって……」
 ちょっと待て。突然雲行きが怪しくなってきたぞ。
「媚薬、と言えばわかりやすいか?」
「……おい待て」
「待たない」
「お前……そんなん、自分かて食べたやろ」
 まさかこの身体の熱さは。
「そうだよ。なあ、アリス。夜は長い。たっぷり楽しもうな」
「ひっ」
「安心しろ。気持ちいいことしかしないから」
 ガシッと腕を強く捕らえられる。掴まれた箇所も、火村の手のひらも燃えるように熱かった。目の前の笑顔がどうしようもなく怖い。かくして私は寝室に引き摺り込まれた。


 早急に脱がされた服は私の身体の下でぐちゃぐちゃに丸まって、枕の横には温感のローションボトルが雑に転がっている。脳みそがうまく働かないままベッドに押し倒された私はするすると全裸にされ、火村が後孔をグリグリとマッサージする。少し解れたそこに直接ローションが注ぎ込まれた。一瞬の冷たさのあとに温もりが絡みつく。
「あっ、あん、うぁ!ンぅっ」
 ぬめりを纏わせた火村の指を、私の胎内は簡単に侵入を許した。ゴツゴツと節くれだった指で掻き混ぜられて、腹の奥に熱が溜まっていく。すんなり三本を受け入れた中がじくじくと疼き、目の前の男が欲しいと叫ぶ。
「口開けて」
「ふっ、んん、あっ」
 その間にも火村から口移しでチョコレートを含まされた。二人の体温で媚薬が漏れ出して唾液と一緒に体内へと流れ込む。火村もまた残りのチョコレートを手に取って自分の口へと放り込んだ。どんどんと熱さが増して頭が酷くクラクラする。今すぐこの男にめちゃくちゃに乱されたい。荒い息を私に吹きかける男の頬を両手で包む。そうこれは全部、薬のせいだから。
「火村ぁ、はやく欲しい……はよ、いれてぇ」
 そう言って唇を奪い脚を開いてはしたなくねだれば、火村がまだ服もまともに脱がないままに血管が浮き出るグロテスクなそれを取り出した。そそり立った立派なペニスが視界に入り、ごくりと唾を飲み込んだ。火村が素早くゴムを装着して容赦無く奥まで一気に貫く。その瞬間頭が真っ白になった。
「っあああ〜〜!!」
 何が起こったのか理解できずポロポロと生理的な涙を流せば、火村が嬉しそうに「トコロテンだな」と囁いた。イッたばかりの私に火村は動きを止めることなく責め続け、私はただわけもわからずひたすらに喘ぐだけとなった。
 
「あぁっ、ひぁ、ひぅらやぁ、も、イクのやぁあ」
「まだ序の口だぜ?」
「ヒッ、ふぁあん、むりっ、あっ〜〜〜〜!」
 それからもう何度目かわからない吐精。顔は涙と溢れた唾液でべとべとだ。前から抱きとめている火村が私の額にキスを落とし、涙を口に含む。確かに最近ご無沙汰だったし、そんな恋人同士に御誂え向きのイベントだ。何も無いとカマトト振る気は毛頭なかった。しかしこんな罠が待っているとは。
「こっちに集中しろよ」
「ひぅ、ひゃっ、ややぁ、ぁう……」
 ぐ、と火村が腰に力を入れる。パチパチとスパークが走る。目の前の男に好きなように貪られてなにも考えられなくなる。服を脱がされて、身体中余すところなく舐められ、胸の突起を齧られる。
「ああぁっ〜〜〜〜!」
 身体が弓なりにしなった。勿論こんな眉唾ものの媚薬に踊らされているだけだと分かっている。分かっているのに身体の疼きが止まらない。こんな、だまし討ちにあったようなものなのに。どろどろと思考能力が落ちていく。
「そこっ、も、いやや、っひあぁ!」
 火村が大きく腰をグラインドして前立腺を押し潰して奥まで一気に抉ってくる。私はだらしなく口を開けて白濁を吐き出した。火村だって最初に出したときよりも明らかに量は減っているのに、薬のお陰か何度吐き出しても火村のペニスはしっかりと硬さを保ったままだった。
 はくはくと息を吐いてなんとか意識を保つ。火村が遅れて私の中で震えた。最初はゴムもちゃんと付けていたはずなのにいつの間にかそれもなくなっていて、気付かない内に何度も中で出されていた。その頃には怒る気力も起こらず、ごぷりと白濁が溢れる感覚に身体を震わせた。
「ん、っぁ」
 くるりと身体を反転させられ、後背位になり精液が垂れるそこに猛ったペニスをひたりと押し当てられる。じわじわと亀頭で入口を嬲られて、思わず腰が揺れた。散々擦り上げられた後孔は締まりきらずにパクパクと火村のペニスを誘っている。空洞がヒクついて切ない。早くそれで栓をして。
「やぁっ、ちょうらい、もお、ひむらぁ、なかっ……」
「アリスはおねだりが上手だな」
 ゆっくりと腰を進められてその大きさをありありと感じてしまう。ミチミチと火村のものを包み、私の胎内は物欲しそうに蠢めいた。
「ふ……もぅ、そんな動かんといてぇ、アッ」
「俺は動いてない。アリスの腰が動いてるんだ」
「ひゃっあ、うそやぁ……ああん」
 火村の言葉に反応してきゅう、と中を締め付ける。ぞわぞわと快感が背中を駆け上がり、蕩けた声と鳥肌が止まらない。
「やらっ、や、まって、とま、とまんないぃ……」
「ははっ。ぐっちゃぐちゃ」
 ほぼ感覚を失いつつある先端を強く握り込まれた。とろとろと勢いなく透明な雫が溢れて、火村の指を濡らしていく。全身もう力が入らない。火村がぎゅうぎゅうと跡が残るほど私の腰を掴んで、前立腺を責め抜いて奥へと突き進んでくる。
「ひぅ、ひむらっ、このかっこやや、ぎゅってしたい」
「可愛いな、アリス。大丈夫だよ」
 砂糖菓子のように甘ったるい声が直接耳に流し込まれ、うなじを噛まれた。歯型を舌でなぞられて、まるで獣たちの交尾のようだ。
「あ〜〜、やぁっふぅ、ふぁああ、あ」
 ずこずこと奥までゆっくりと突き上げられて、爪で乳首を抓まれた。虐め抜かれた私の突起はぷっくりと膨れ上がり、コロコロと指で転がされる。小さな刺激さえも快楽に変換されて、火村の為すがまま動くたびにだらしない声をあげてしまう。
 火村が私の両手首を掴むと、乱暴に後ろへと引っ張った。結合部に玉部分まで押し込められ穴が拡げられるような感覚。過剰すぎる刺激に悲鳴さえも出ない。大きく腰を打ち付けてまた火村のペニスが私の中で震え上がった。火花が散って目の前が真っ白になる。私のものはもう射精することも叶わずに、ただぶら下がっているだけだった。
「ぁっ……」
 埋めていたものが抜かれ火村が手を離すと、私は勢いよくシーツへと崩れ落ちる。身体が酸素を欲しているのに上手く呼吸ができない。色んな液体を吸い込んだ自分と火村のシャツに顔を埋めていると、火村の汗とキャメルの香りが鼻腔を埋める。
 肺を彼の匂いで埋めている内に火村の指が後孔の淵を辿り、散々嬲られたそこを二本の指で拡げた。ローションと精液が混ざり合ったものが私の太ももを伝っていく。視線が熱い。火村がその様をまじまじと見つめているのだ。火傷してしまいそうだと思った。
「やや、ひぅら、そんなとこ見んといて……やぁっあ!」
「すごい。綺麗なピンク色してるな。アリスのここがピクピクと動いて俺のが溢れ出てくる。もしかして俺に見られてるだけで興奮してるのか?エロいな」
「うぁっ、」
 ひどい。またコポリと音を立てて精液が零れた。火村の言葉にまで感じてしまう。そんな身体に火村によって変えられた。零したくないのに締められない。抵抗したいのに腰をしっかりと捕まえられてそれも叶わない。息を吐くたびにドロドロと太ももへと落ちていくのがわかる。普通ではありえない場所を火村に凝視されている事実に純粋に涙が出た。
「そっな、ひどいぃ……もっ、感覚ない、あほになる……」
「馬鹿になっちまえ。まだまだ付き合えるだろ?」
「うそっ!?やや、待って……ぁんっ!」
 火村が会陰部分をぐいぐいと押した。そこは火村が開発した私の性感帯だ。もちろん開発した本人もそのことをよく知っている。悪戯に息を吹きかけ指の腹を巧みに使い、腹の奥が沸騰するような凄まじい熱が私を襲う。火村は楽しそうに私がもがく姿を見下ろしていて、ただシーツに爪を立てることしかできない。
「やだぁ……そこ、やめて、ほ、んま、ンンッ!」
「だぁめ」
「ああ!ゃあ、ふぁっあ〜〜〜〜っ!!」
 会陰を弄られてぞわぞわと背筋を駆け上がるのに、いつまで経っても射精できない。ただ上り詰めていくだけの快楽に頭が焼き切れそうだ。
「アッ、なんれぇ?もぅ、イきた、ぃ」
「イケないのか?」
「やらぁも、あっ、そこばっか、ちょうらい、なかほしい」
 ぐずぐずと出されたものを零し切ったそこはぽっかりと空いたままだ。腹の奥で熱を感じたいと切なく蠢いている。
「じゃあこっち向いて」
「ふぁっ?」
 腕を引かれて今度はまた火村の熱い胸板へと包まれた。じっくりと中を埋められていく。肌の熱さをもっと感じたくて、なんとか重い腕を動かして火村の背中へと手を回そうとするのにお互いに汗ばんだ身体はずるずると滑り思うようにいかない。
「うぁ……なんれ、やらっ、ひぅら、ぎゅってしてぇ……」
 みっともなく掠れた涙声で訴えると、火村はにぃと笑顔になった。片手で背中を支えられて子供をあやすように優しく手を取られて首の後ろへと回される。しっかり指をクロスさせて火村の首へと顔を埋める。この男の匂いがどうしようもなく私を安心させる。そう感じた途端に胸が締め付けられて涙が出る。
「あ〜〜、うぁ、もぉ、やぁ」
「やだじゃないだろ、アリス。そのまましっかり掴まってろよ」
 私の腰に回った手に力が入り身体ごと引き上げると、火村の脚の上に乗り上げ対面座位の形に変えられる。全くと言っていいほど私の膝は役に立たず、ぺたりと火村の太ももへと座り込んでしまい今日一番の奥まで侵入を許す。
「あぁっ〜〜!?あんっ、ふ、ふかいぃ、も、やらっ、ひああ、ぁ」
「好きだよ。アリス、愛してる。可愛いなこのやろう」
 私の腰を捕まえて離さない火村がガツガツと突き上げる。
「ひぅっ!……っあ、ふぁ!やあぁ〜〜〜〜」
「いや?奥、責められるの好きだろ?」
「ああ、あぁ、」
「な?気持ちいいだろ、アリス?」
 吐息とともに甘く蕩けた声が直接流し込まれる。名前を呼ばれ、ぶわりと体温が上がった。
「そ、う、えぇの、ずっときもちええの……」
「素直だな。いい子だ」
「ほ、ほんま?……ああっ!!も、ふかいぃ、こわい、こわれるぅ」
「壊さねえよ」
「あっ!ひ、ああぁ、あーーっ!!」
 あまりの快感からどうにかして逃げたいと思うのにふにゃふにゃと骨まで融けたような身体はただ火村にしがみつく形になってしまう。何も考えられずにとにかく目の前の男を掻き抱いた。大好きな火村の声を流し込まれながら、ギチギチと最奥を太い亀頭で押し拡げられる感覚に息が詰まった。
「ああぁ、おく、がっ、ひぁ!」
「奥、好き?」
「ン!!んぁ、すきっ!好きやから、ひぅ、ひうら、好き、なっ?ちゅーしてっ……は、あっん!」
 ぷしゃぷしゃと潮を吹きながらキスをねだる。自分から口付け、舌を潜り込ませると火村はひどく嬉しそうに笑った。火村の腹をびしょびしょに濡らしているのに腰が動くの止められない。うまく呼吸ができていない私に軽いキスを何度も送ってくれる。
「ふ……んっ、ふっ」
「お腹いっぱい?」
「い、いっぱいやから、グリグリせんといてぇ……!」
 突き刺したまま火村が私の臍を強く押すと、胎内にある火村のペニスをきゅうきゅうと締め上げた。中が火村の形へと変わる。火村のペニスと指で性感帯を挟み潰されて、頭をぶん殴られるような快感に意識が吹っ飛びそうだ。
 もう何も言葉にできない私に、なおも目の前のこの男は楽しそうに貪り続ける。まだ全然足りないとばかりに唇を奪いギラギラとした瞳で見つめてくる火村に、骨の髄までしゃぶり尽くされると思った。
 口の中は唾液でぐしょぐしょに濡れていて、火村が舌を滑り込ませてくるとこくりとお互いの混じり合った唾液を飲み込んだ。その間にも私はビクビクと震えて甘イキを繰り返している。何度か腰を打ち付けた後に最奥で火村のペニスが大きくなって爆ぜる感覚がした。

 ここからは正直私の記憶はない。意識を飛ばした私を火村が抱き上げて風呂場で処理をしてくれたらしい。次に目が覚めた時にはシーツが新しくなったベッドの上でうめき声を上げるだけの屍と化していた。
 酷使した身体と喉は使い物にならず、水でも飲みに行こうとしたら一人で寝室を出ることも叶わなかった。寝室のドアの前にへたり込んでいれば、すぐさま様子を見に来た火村に助けてもらい無事ベッドへと運び戻された。満足げな顔をして私を抱き上げる火村に悪態を吐くことも出来なかった。整った横顔が恨めしい。
 ドアの向こうで洗濯機が回り終えた音が聞こえて「ご飯食えるか?」と飲み物を片手にした火村の声が降りてくる。今日はどうやらベッドで寝ているのが私の仕事らしい。にこにこと機嫌良く私の世話をする男が憎らしく、悔しいので寄せられた唇に思いっきり噛み付いてやった。

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