Dropout Girl !!


決闘をするものならば誰もが皆通い、腕を磨こうと集まるデュエルアカデミア。その道が開かれるのも己の意志、実力、そしてデッキを信じる力が物言う世界。
決して楽な道ではないと分かっているのに突き進んで引き返すことの知らない若者の集う場所。
そんなところに一人の少女_▲▲●● が真の決闘者になろうと心に決め受験をしようとしていた。
「今日も決闘!明日も決闘! それが、デュエルアカデミア…!!」
夢と期待を胸に自分に言い聞かせるように力強くつぶやいた。
独り言など言っていては周りの目が痛いのだが誰もそんな目は向けていない。
何故なら、彼女は周りに見えないくらいに疾走していていたからだ。それもそのはず、最後の実技決闘試験の時間に間に合わないほど時間が経ってしまっていた。
「こんな大切な日に事故とかありえない! 遅刻する!」
近道に通った公園の時計塔もそう言っている。膝上の短いスカートを揺らしながら●●は全速力で会場へと走った。
「あ、あのッ!まだ試験してますか! セーフですよね!」
行きを切らしてこの時期には珍しくうっすらと汗をかいて迫力の上がった●●に試験官は何も言えずにただ受験票を受け取った。
試験開始時刻はとうに過ぎている。
到底無理だと考えた試験官だったが、そういえば今しがたサイクロンのようにここを走り抜けて行った少年が居たような、と記憶をたどっていると、彼女もまたサイクロンのように駆けだして行ってしまった。
「今年の受験は荒れるな…。」
ぽつりと零した言葉も●●の作りだしたサイクロンによってかき消されてしまった。
「やばいやばいやばい! 時間がやばい!!」
●●はまだ走っている。すると、見えてきたのはとても明るく何も恐れていないような目している少年だった。
一目でわかった、彼は強い、と。
決闘盤を出しているところを見るとまだ決闘は始まっていないようだ。どうやら先生と思しき人物と今から決闘をするらしく間に合うのかも、という期待が●●の脳裏を過る。
「そのデュエル!! ちょっとお、待ったあー!!」
着いた途端に大声で叫んだためにその声が会場いっぱいに広がる。先ほどの少年はおろか皆が●●に注目した。
「あ、あたしも! そのデュエル混ぜて!!」
一瞬、会場の空気が止まった。いきなり何を言い出すのだこの子は、と行った空気が流れる。
しかし、その少年は違った。
「おう!いいぜ! じゃあ俺とタッグな!!」
にかっ、と何事もないように承諾してくれた少年の背後に後光が見えた。
「あ、ありがとう! がんばろう!」
「当たり前だぜ!」
ちゃっかり自分のスクールバックから決闘盤とデッキを取り出している●●に先生、クロノスが怒りの声をあげた。
「アナタ、いきなりナンですーノ!」
「はい?」
●●と少年は目を見合す。何か悪いことでもしたのか、という顔付きだ。
「ドロップアウトボーイにドロップアウトガール! そんな態度の悪い生徒はうちの学園には要りませんーノ!」
リミッター解除されたクロノスは●●に負けないぐらいに大声で叫んだ。
仕舞には、頭からは湯気を出てしまっている始末だ。訳のわからない●●は思わず首を傾ける。
「ドロップアウトボーイ?ガール?」
「ああ、それ俺のことだぜ。なんか知らねえけどさっきからセンセがそう言ってんだ。あ、俺、遊城十代な! ヨロシク!」
また、にかっ、と笑ってみせる少年、十代。彼には笑顔がとても似合う。
「あたしは▲▲●●! こちらこそヨロシク!十代!」
仲むつまじくまるで以前から知り合っていたかのように溶け込む2人。互いに握手を交わし、笑顔で決闘について語り合っていた。
そんな状況にクロノスは、自分を無視していつの間にやら意志疎通を開始している2人にますます怒りのボルテージが上がっていく。
「こうなったらこの学園の恐怖を私が教えてあげるノーネ! 覚悟するノーネ!」
「受けて立ちますよ!センセ! 楽しいデュエルにしましょう!」
「楽しいデュエル! くゥー!イイ響きだぜ!!」
なんだかんだで、どうやら2対1の変則マッチがこれから開かれるらしい。
この様子を二階からカイザーと呼ばれる男_藤丸亮とオベリスクブルーの天上院明日香が何が起きるのかと不安と半分の期待を持って見ていた。
「なんだか今年は面白い子がたくさんいるわね。」
「本当だな、今年で卒業だが最後の良い年になりそうだ。」
心底楽しそうに言う亮に、明日香も今から行われる決闘心からが楽しみで仕方がなくなった。そして、なにもこの決闘を楽しみにしているのはこの2人だけではない。
面白そうだと身を乗り出している三沢大地もその一人だった。先ほど十代に言われた「自分がこの学園で一番強い」という言葉の意味を確かめさせてもらおうと思った矢先に、響いた彼女の言葉。いささか遠い距離ではあったが何やら彼女に十代と同じような匂いを感じた。
「さて、あの子はどんなデッキでクロノス先生に挑むのかな…。」
とても楽しそうにつぶやく三沢をよそに隣に座っている藤丸翔はとても心配でならなかった。自分より少し成績がいいだけなのにあの自信の十代。そして何より今から決闘をする相手があくまでもここの学園、デュエルアカデミアの教諭であるということ。自分ならば…、と考えただけで身の毛がよだちそうだ。
「大丈夫っスかね…。あの2人…。」
今しがた会話を交えた十代にさえとてつもない不安を感じているのに、いきなり現れて真っ先にクロノスから怒りの言葉をぶつけられ、しかし平然と、そして何よりその十代とすでに打ち解けている彼女に十代とはまた別の不安が込み上げてきた。
「…かわいい子なんだけどなあ。」
短くため息を吐きながら「もう少しおしとやかにしていれば絶対に良いのに」と思わず口に出してしまったが、もうこれからの決闘が楽しみで他に興味を持てなくなっている三沢の耳には届かなかった。
「フン、また新しいネズミが出てきたのか。」
「やけに楽しそうですね、万丈目さん。」
「楽しそう? はっ、寝言は寝て言ってくれ。馬鹿馬鹿しすぎて欠伸が出るぜ。」
2人のオベリスクブルーの生徒に挟まれ王者のように足を組んで、十代達を見降ろしているのは万丈目準だ。彼もとても強く何かと名前の挙がる生徒で取り巻きが多いのも彼の特徴だ。
「タッグを組むみたいですよ。」
「こんなデュエルに興味などない。時間の無駄だ。まったく、クロノスは何を考えているんだか。」
そんなことを言いながら先ほどから目線がずっと2人に向いていることに本人は気付いてはいなかった。
これも決闘者の本能なのか。さらに上を目指す者にとってこの決闘はとても楽しみなものになっているのは明らかだった。この2人の決闘に何か新しいものを見つけられる。そう期待して止まないのだ。まだ2人のデッキや戦術すらも何も分からないのにこんなにも人々を引きつけるものはなんなのか。
その答えはきっと今から行われる決闘で出るだろう。それはこんな非常事態にも関わらず2人のドタバタ決闘者を微笑みえを携えて見守っている鮫島校長が物語っていた。




◎お題箱からいただいた中に結構GXが多くてアニメを見直していたのですが、1話のワクワク感に熱くなって書きました。続きません。たぶん。



花束