君の色
高校3年生になったばかりの春、遊戯は教室の窓際でぼんやりと桜を眺めていた。胸元に輝いていた黄金の宝物は今はもう、ない。
隣の席の●●は、スケッチブックに色鉛筆を走らせ、桜の花びらを丁寧に描き込んでいた。美術部に所属する●●は、いつも静かで、どこかミステリアスな雰囲気を持っていた。遊戯はそんな●●が気になり、そっと●●の描く手元を見た。
「遊戯くん、桜ってどんな色に見える?」
ずっと見られていたことを察したのか、●●が突然話しかけてきた。遊戯は少し驚きながら答えた。
「え、ピンクかな? でも、なんか白っぽくも見えるし…。」
ピンクと言いかけて遊戯の頭にはブラック・マジシャン・ガールがウィンクを飛ばしてポーズを決めた。しかしそのピンクでは派手すぎる。次に浮かんできたのはマシュマロンだった。一見可愛らしいモンスターだが、豹変させ荒らしい目つきになり牙を向いている。脳内で迷走している遊戯を尻目に●●はくすっと笑い「わかる。そんな桜の色が好きなんだ」とスケッチブックを見せた。そこには、遊戯が言葉にできなかった微妙な色合いが、鮮明に再現されていた。
それから二人は、放課後の美術室で話すことが増えた。
遊戯が美術室の扉を開けると、かすかな油絵具とテレピン油の香りが鼻をついた。遊戯は絵心がなかったが、●●がキャンバスに色を重ねる姿を見るのが好きだった。●●は遊戯の冗談に笑い、時折、自分の絵に込めた思いをぽつぽつと話した。「この絵、まだ遊戯くんにしか見せてないんだよ」と、恥ずかしそうに笑う●●に、特別な春風のような暖かさを感じて遊戯の心臓はどくんと跳ねた。
美術部の展示会が近づいたある日、●●は大きなキャンバスに向かい、いつもより真剣な表情で絵を描いていた。遊戯はそばで彼女を見つめ、ふと言った。
「●●の絵、僕とっても好きなんだ。だから、その、」
唇をきゅっと結んで目を逸らし「応援してるから」と小さく言った。●●の手が止まり、頬が桜色に染まった。まるで告白でもされたような空気に●●は少しの沈黙し、照れながら答えた。
「遊戯くんがいつも応援してくれるから。私、こんなに、絵を描けるんだ。」
私もそんな優しいあなたがとっても大好き。キャンバスに込められた鮮やかな色は、遊戯に●●の想いを届けた。そんな気がした。遊戯は言葉に詰まり、ただ頬を赤くしてうなずいた。
展示会当日、●●の絵には桜の木の下で笑う少年と少女の姿があった。背景には●●の心を映したような柔らかな光が広がっていた。●●の想いが自分の胸に染み込むのを遊戯は感じる。●●はそっと隣に立ち、はにかんだ。タイトルは「君の色」。遊戯はそれを見て、●●と過ごすこれからの時間が、もっと色鮮やかになる予感がした。その春、桜の色に包まれた二人の心は、確かに繋がっていた。
もう一人の僕、僕は元気だよ。
◎がぱおさん、リクエストありがとうございました。1000文字以内の夢小説を書きたい書きたい言っていたのでチャレンジしてみました。美術の事とDSOD観たなあ、というお話してからもうアテクシの脳内には桜が舞っておりました。(2025.4.28)