花びらに呪いを込めて
※仲良くしてもらっているフォロワの皆さんからワードセレクト?でのお題を頂いたので、その設定を使った夢小説になります。夢主の設定も細かくありますのでご注意を。
夢主:鼻血、長い髪、オカルト、元気、片目
世界観:夢、花が咲いている、あたたかい、学園、月の裏側
デュエルアカデミアは、あたたかい風に包まれ、ちらほらと初夏を感じさせる花々が咲き始めていた。
とある教室の窓際の席で、佐藤浩二は分厚い参考書をめくる。眼鏡の奥の目は、月の裏側を覗くようにどこか遠くを見ているようだった。彼はこの学園の教師だが、派手なデュエルや熱血指導とは無縁の存在。プロデュエリストだった時の戦い方をいまだに授業に取り入れる様は、生徒たちから「古臭い佐藤先生」と呼ばれ、ひそひそ話をされることも少なくない。それでも、彼は気にしない。騒がしい世界の中で、静けさだけが彼の心を護っていた。
「佐藤せんせー! やっほー!」
教室のドアが勢いよく開き、けたたましい声が響いた。現れたのは、片目を前髪で隠したロングヘアの女子生徒、●●だった。オベリスクブルーの制服の襟を大きく開け、長い髪を振り乱しながら突進してくる。彼女はいつもこうだ。元気すぎる。そして、なぜかよく鼻血を出す。
「●●君、お静かに。ここは教室ですよ。」
佐藤は淡々と告げ、参考書に視線を戻した。だが、●●はそんな抑揚のない声などお構いなしに、彼の机に両手をバンと叩きつけた。
「先生! 聞いて聞いて! 今日のデュエルでさ、私のオカルトデッキのコンボが超カッコよく決まって、相手のライフポイントを一撃でゼロにしたの! ね、すごくない!?」
彼女の目はキラキラと輝き、手にはその時に活躍したキーカードであろう《ダーク・オカルティズム》のカードが握られていた。そして興奮のあまり鼻から赤い雫がぽたりと落ちた。
「……鼻血。」
佐藤は無表情にティッシュの箱を差し出した。●●は「あ、うそ、ほんと!?」と慌ててティッシュをつかみ、鼻を押さえながら笑った。
「いやー、先生、いつも冷静だよね! でもさ、先生って実はめっちゃ強いデュエリストなんでしょ? 噂で聞いたよ! 昔、プロリーグでバッチバチに戦ってたって!」
佐藤の手が、参考書をめくるのを止めた。月の裏側に隠したはずの過去が、彼女の無邪気な言葉に引きずり出されたようだった。佐藤の顔に一瞬、影が差したように見えたが、すぐにいつもの無表情に戻った。
「昔の話ですよ。今は関係ない。」
「えー! 絶対ウソ! 先生のデッキ、見せてよ! どんなカード使ってるの? ね、ね!」
●●は身を乗り出し、鼻血を拭きながらさらに詰め寄った。佐藤は小さくため息をつき、眼鏡を直す。
「●●君、君はデュエルが好きなんですね。」
「うん! 大好き! プロデュエリストになることが私の夢だもん!」
彼女の純粋で元気溌剌とした笑顔に、佐藤は一瞬言葉を失った。かつての自分も、そんな気持ちを持っていたはずだと。たとえそれが自分のためではなく家族のためであったとしても。月の裏側に閉じ込めた情熱が、微かに疼くのを感じた。だが、プロリーグでの敗北、そして何より、デュエルへの情熱を失ったあの日の記憶が、彼の心を重くしていた。
「君のような生徒がいるなら、まだこの学園も悪くないのかもしれませんね。」
佐藤の声は小さく、ほとんど独り言のようだった。●●は「え、なになに? なんかカッコいいこと言った!?」と目を輝かせ、鼻血がまたぽたりと落ちた。
「鼻血。」
「うわ、また!? 先生、ティッシュ!」
教室に●●の笑い声が響き、佐藤の唇には、ほんの一瞬、微かな笑みが浮かんだ。窓からあたたかな風が吹き、どこかでまだ咲いているのか桜の花びらが一枚、運ばれてきた。それは開かれてある参考書のページに着地し、栞のように間に挟まった。このあたたかな夢のような日々がこのままずっと続けばいいのに。佐藤は●●に気付かれぬようにそのまま花びらを参考書の中へ閉じ込めた。
◎面白すぎた。明らか異世界な世界観にしようとしている単語あったけど俺は通常の世界で頑張ったぜ。夢主に愛着湧いたぜ。(2025.5.1)