その手や、私をあやす言葉の温度を忘れられないよ。
見捨てないで欲しいよ。ずっと傍にいたいよ。
この羽根の傷が言えたら、お揃いの縫い目から糸が抜かれたら。
あなたは私を手放す?

「お早う」

毎朝、私もお早うって言ってるの聞こえてる?ぴいっと一鳴き。あなたは満足げに微笑んで私を見る。
鳥籠の中の私。
空を飛べなくたって、構わない。
ねえ私、あなたの名前を呼んでみたい。羽根を撃たれて地に伏せた私を、拾って手当てをしてくれたあなたの名前を。お早うにはお早うって返して、拾ってくれてありがとうって、言いたいよ。

「うん、順調に治ってきてるよ」

籠から出されたら、その手が導くどこかに止まって、片方だけ羽根を広げる。綺麗な綺麗な色の羽根には大きな傷ができてしまったけれど。
傷口に優しく触れる、その指に、触れてもいい?
どうして私の口は、こんなに尖っているのだろう。

「もう少ししたら、また飛べるようになるよ」

首を振りながら、ぱたぱた羽根を羽博かす。
飛べるようにならなくたっていいんだよ。
ずっと一緒にいたいよ。
自慢の羽根も、心地よい風も、なんにも要らないよ。
ずっとずっと、傍にいたいんだよ。

「ん? どうしたの」

固い指先が、頭の柔らかい毛を撫でる。優しい指先も、その体温も、忘れられないよ。でも困らせたくないから、足元に出された指に、私はそっと足を載せる。籠の中から見てる。
広い背中も、なぜか頭に刺さった螺子も。
沢山の分厚い紙を見つめながら、煙草を吸いながら、本を読みながら、吐く溜め息は私じゃどうしようもない。
言葉は喋れないし、手足もこんなだけれど。
あなたが治してくれた自慢の羽根で、そよ風を送るくらいならできるのに。
私はまた、籠にしまわれてしまう。

「餌はここに置いておくよ。それじゃあ出かけてくる」

その指先に触れたいよ。
でも私の嘴は尖ってるから、傷つけちゃうかなあ。行ってらっしゃいって鳴いても、伝わらないんでしょう。
だったらせめて、傍にいたいよ。
愛する人、にはなれないから。
この羽根がまた羽博くことができるようになっても、ここにいたらダメ?
少し大きめの鳥籠、羽根を広げて、ぱたぱた。
もう元通り。
空なんて要らないのに。
羽根なんて要らないのに。
嘴なんて要らないのに。
あなたは足元に転がっていた私を拾ったあの日と同じ優しい顔で、声で、指先で、明日にでも私を外に連れて行くのでしょう。
あなたは何を思って私を拾ったのだろう。
ねえ、ちょっとだけ泣いてもいい?









博士と孔雀/天野月子をイメージしたけどなんかもう全然違う