ここはもう俺たちだけの場所じゃなくなってしまった。けれど異人には侵せない絶対不可侵領域はいまもまだ機能している。
涙なら俺が拭う、笑えないなら笑わせてあげる。だから泣かないで。ずっと笑っていて。

「銀ちゃん」
「…言えたか?」

欲しがる自分を誤魔化して、そっと彼女の背中を押した。君がそいつを想う夜が、もっと長くなりますように。
魔法をかけるのは俺じゃあだめなんだ。俺だったなら、って思ってるのは嘘じゃないけど。

「うん、あのね」
「…どうだった?」
「いまから言う」

なんだハラハラさせんなよ、と言おうとした。見下ろしたなまえは酷く真面目な顔をしていて、俺は少し戸惑った。

「銀ちゃん」
「…おう」
「好きです」

みるみる内に朱に染まる頬と、滲んでいく瞳に、思わずなまえを抱き締めた。言いたいことは色々あったはずなのに、どれも上手く喉を駆け上がれなかったようで、ただただ腕に力を込めた。

「なまえさ、俺が好きなこと、俺に相談してたの?」
「…うん」
「俺ぁ」

やっぱり上手い言葉が見つからなくて、誤魔化してキスしようと覗き込んだ瞳から涙がひとつ落ちた。

「えっ、なになに、俺なんかした!」
「してない」

拭おうとする手を押さえて、唇を当てた。そのままの流れで口付ける。

「銀ちゃあん」
「おーおー、泣くな泣くな」

どうして気付かなかったんだろう、とか色々考えたけどそんなことはどうでもいい。どうやら魔法をかけられるのは俺だけだったようだ。なまえの夜を長くできるのも俺だけだったようだ。彼女の好きな男の話を聞きながら、いつだって彼女でいっぱいだったのは結果オーライだったから良いけど。
ずっと答えはすぐそこにあって、登場人物はいつだって君と俺だけ。








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