我儘でも自己中でも、そんなんどうだっていいから、今度はもう離したくなかった。嫌がられたって、もう零れ落ちていくのを見て立ち尽くすだけなのは嫌だった。俺をひとりにしないで。俺を見捨てないで。もう、寂しいのは嫌なんだ。

「ひとりにされたのも、見捨てられたのも、寂しかったのも、私の方だよ!」

力任せにぶんぶん腕を振ったって、離したくなくて力を込めた。観念して、けれど今度は腕を引こうとするから負けじと引っ張る。初めて声を荒げたなまえに、俺は間違っているのかもしれないとほんの少し思った。一瞬。睨まれたっていい。なんだってするから、だから傍にいて。

「俺、なまえがいねえと生きていけねえよ」
「生きてたじゃない。彼女ほっぽりだして、いっつもいっつも、」
「なまえがいるって思ってるから、外で遊べんだよ」
「銀時は我儘だよ、私もう嫌なの、彼女は私のはずなのに」
「なまえだよ、いままでだってこれからだって」

嘘吐き、となまえは叫ぶように言い放った。それと同時に両目から涙が溢れ出した。泣いてるってことは、まだ可能性があるのだろうか。着物の袖で涙を拭うなまえは、俺の知っている中で一番、女だ。俺が傷付けた分、傷付けていいから、だから離れていかないで。傍にいてくれるなら、どんな誤解だって解いて、どんな過ちだって悔い改められるから。なまえがいなきゃ、後悔も反省も意味がない。

「なまえが嘘だって思っても、俺の中じゃあ本当だ」
「嘘だよ。私、銀時のことなんにも知らない、知らないのに」

しゃくりあげたなまえはそのまま黙った。相変わらず涙は止めどなく溢れて頬を濡らす。力の抜けた手を引っ張ろうとしたら、途端に拒否される。離して、と震える声。嫌だ、とやっぱり震える声。

「知ってんだろ、こんな女々しくて情けねえ男だって、なまえ以外に知ってるやつなんざいねえよ」
「…それだけ」

そんなわけない。キスするのもセックスするのもなまえだけだ。昔のことを教えたのも、俺が追いかけるのもなまえだけだ。どこにも行かないで、ひとりにしないで。

「じゃあ、ちゃんと示してみせてよ」

言葉尻が震えて消えたなまえの、力の抜けた手を思いっきり引っ張る。抱えたなまえの熱に、喉の奥が裂けるみたいに痛んだ。

「俺は、なまえが好きだから、何があったって離してなんかやらねえから」

丹田に力を込めた。それでも、少し声が震えた。情けないけど、そんなんもうバレてるからどうでもいい気がした。恥や外聞なんかより、大切なものをみすみすなくしてしまうことの方が、よっぽど辛い。なまえが一緒に持ってくれなかったら、こうやって笑うこともできなかったろう。なまえが触って、撫でて、まじないをかけてくれたから、塞がったというのに。

「じゃあちゃんと、握っててよ」

絡めた指先、整えられた爪先が、皮膚を引っ掻く。名前の些細な反抗。痺れるみたいに痛むけど、それすら愛しい。

「…なまえ」

ソファに押し倒す。やだ、したくない、と駄々をこねるなまえの唇を親指でなぞる。

「だいじょぶだって、玄関鍵かけたし、新八と神楽にはなまえ来るから明日まで帰ってくんなっつったし」
「そんなんじゃない、大体、鍵かかってても入ってこれる人いっぱいいるんでしょ」
「そんときは」

涙で光を乱反射する瞳と朱を差したような目尻に、けれど抵抗する眼差しが高ぶる熱を煽る。帯を緩める手を押さえるなまえの指先の、いじらしい非力さに耐えられなくなって開かれたままの唇へ舌をねじ込んだ。息の上がったなまえの耳元で囁く、甘美な呪い。

「見せつけてやりゃあいーじゃん」

悪戯心を孕んだ甘ったるい声で、始まる明るい夜。




前半後半で話がちげえ…