「じゃ、こうすっか」
黙って隣を歩いていた銀時が突然口を開いた。突然というからには、当然この台詞の前になんの会話もなかった。銀時がどうかは知らないが私は疲れていたし、特になにも話しかけられることなく隣を歩き始めたから、なんとなくそのままの状態からいまに至る。
じゃあ、も、こう、も全く覚えがないから私は黙って銀時を見た。いつもの死んだ魚のような目と目が合う。
「………」
「…いや、なに? どしたの?」
しかし銀時は無言で見つめ返すのみ。視線で催促しても、どうやら伝わらずじまいで私は仕方なく口を開いた。だァかァらァ、と苛立つような間延びした声。
「俺は万事屋だから」
「…知ってるけど」
「そのプリンで手を打とうって言ってんの」
人差し指がちょいちょいと、提げていたビニール袋を指す。
「ちょっと待って、全く話が見えないんだけど」
するっと伸びた手が下ろした髪をくしゃりと乱して、ビニール袋を奪う。それ、自分にご褒美と思って買ったのに。
「ん。引き受けた」
「だから、なんも頼んでないって、ば」
不意に手を握られて、大股に一歩を取った銀時に引っ張られる。慌てて足元を確認した視線に不満の色を込めて銀時に向けた。
「帰って風呂入って飯食って寝んぞ」
「言われなくても」
「こうでもしないと、なまえは俺を頼らないだろ」
むくんだ足に鞭打つように小走りで銀時についていく。というよりはひきずられていく。慣れた足取りは私の家を目指していた。私の抗議はことごとく無視されて、銀時は私の手を離さない。
「疲れたーって顔してんもんなあ」
「そんなことないよ」
「ある」
顔にも態度にも、そんなの微塵も出したくないし出しちゃいけないのに。もっと、しっかりしなくちゃいけないのに。
「ま、気づけんのは俺くらいだけどな」
目を向けたら、銀時はとても優しい顔をしていて。ちょっと、ちょっとだけ、泣きたくなった。
「うちに着くまで我慢な」
銀時はそう言って、繋いだ手を揺らした。