日焼け止めを塗ったくって、ぎりぎりまで短くしたスカートでコンビニに寄る夏休みの午後。スーパーカップとガリガリ君を買って、学校に向かう。

「せーんせっ」

校内で唯一クーラーのついているパソコン室には案の定先生がいた。
冷房を受けながら補習で行った小テストの採点をする先生は、うざったそうな視線を寄越す。

「うぜーのがきやがった」
「失礼な。クラスで一番の優等生の間違いでしょ」
「性格も優等生ならなー」

若干聞き捨てならないが、返事はせず隣まで椅子を引っ張ってきて座る。教室の椅子なんかとは比べものにならないような、柔らかくてくるくる回る椅子。
暑さに汗をかいているガリガリ君を取り出す。

「夏休みもお仕事な先生に差し入れ」
「おっ、気が利くじゃねえか」
「もっと褒めてくれてもいいよ?」
「調子に乗んな」

先生はバリッとパッケージを開けてガリガリ君を大きな口でかじる。
私は私でちょっと柔らかくなったスーパーカップの蓋をパソコンの載る机の端に置いて木ベラを差し込んだ。

「まったく、みんなお前くらい手がかからねぇなら良いのになあ」
「えー、みんな頭良かったら私が褒められないじゃん」
「オイコラ」

赤いバツばかりの答案を眺めて、先生を見た。
先生も知ってるけど、私は先生が好きだから、なるべくこの目に収めておきたい。
だって、私は生徒で、先生は先生だから。

「そんなん、あと一年ないだろ」

ぼーっと眺めていた横顔が少しだけこっちへ向いて、先生のダルそうな目が私を捉えた。
声には出てなかった、はず。

「先生をナメんじゃねーぞ」
「…もしかしてエスパー?」
「だったらどーする?」

まだ飲み込んでいないクッキークリームを舌に感じながら、近寄ってきた先生に反応できずに、唇にはほんの少しの圧力。
にやにやしてる先生がちょっと気に入らなくて。

「もっと上手に隠さなきゃ」
「バーカ、とっくにバレバレ」
「やっぱり?」

唇が触れるか触れないかの至近距離で先生が笑ったから、つられて私も笑った。

「あっ、せんせ、アイス垂れた」

ぽとりと、答案に落ちた丸い滲みからは夏の匂い。