※現パロ




浴衣とか、着たかったなと思ったけど、もともとお祭りに行く予定はなかったのだから仕方ない。ちょっと踵の高いウェッジサンダルに、ワンピース。晒した肩まで念入りに日焼け止めを塗る私を、不思議そうに神威は見ていたけど。暑いのに手を繋がされて、まだぼんやり明るい中で屋台を覗いていく。

「…そんなに食べるの?」
「なまえもいる?」

パックにみっしり詰まった焼鳥に焼きそば、たこ焼きに手を伸ばしながらフランクフルトをかじる。フライドポテトをつまみながら、聞いたら的外れな返答。

「要らないし。ていうか、そんなに体に悪そうなもの食べてよく太んないね」
「なまえと違って体動かしてるから」
「喧嘩のくせに威張んないでよ」

行儀は悪いけど、テーブルに肘をついたまま反対の腕を伸ばして、神威の口元についたたこ焼きのソースを拭う。貰った紙ナフキンにその指をこすりつけた。味わっているのか疑問な速度で次々と食べ物を胃に収めていく神威を見ていたらそれだけでお腹いっぱいになれる。

「ていうかさ」
「ん? 何食べたいの?」
「違うって。なんか…視線を感じるんだけど」

そう言って視線を動かす。神威はめんどくさそうだったけど、食べ物から私が見ている方へ視線をやった。なんとなく、怖そうな雰囲気の人たち。というか彼らだけでないけど。

「知らないよ」
「喧嘩した人たちとかじゃないの?」
「えー…覚えてない」

空になったパックを散らかしたまま、神威は最後のアメリカンドッグを食べる。私はオレンジジュースをストローで吸いながら周りを見回した。

「なんか…ちょー見られてる」
「…いや?」
「…うん…ちょっと」

ばつが悪くなって私は僅かに残されたフライドポテトを咥える。多分、私の分として神威が食べないでおいたのだと思う。神威は私を見たまま、コーラをずずーっと啜っていた。

「うん、帰ろっか」
「え、でも」
「いっぱい食べたし」
「アンタはそれしか考えてないんかい…」
「コンビニで花火買って帰ろうよ」

勢いよくコーラを吸う神威を横目に、まとめて買ったときに入れてもらったビニール袋に空のパックを入れる。花火、という言葉に反応した私が目を上げたらしっかり目が合った。ストローを咥える神威がなんだか可愛い。

「花火…」
「うん」
「…その前にクレープ買ってもいい?」
「いいよ」

お祭りのために備え付けたイステーブルを立って、ゴミ箱にゴミを捨てる。神威がまた手を繋いできたから、私も少しだけ繋いだ手に力を込めた。女の子たちの後ろに並びメニューに目を通す。

「神威ー、チョコとイチゴどっちがいい?」
「なまえの好きな方」
「えー、神威は?」
「…イチゴ」

イチゴと生クリームとバニラアイスのクレープを頼んで、財布を出したい私は手を離そうとした。けど、なかなか神威の手が解けない。声をかけようとしたら、ポケットから出した神威の手から、トレーに小銭が落ちた。

「神威、」
「なまえ、前見てて」
「うん?」

よく分からなかったけど、言われた通りに前、焼けた生地の上に生クリームやスライスされたイチゴや半球に掬ったバニラアイスやカラースプレーがトッピングされていくのを黙って見ていた。美味しそう。おじさんが慣れた手付きでクレープをくるくる巻き、店のロゴが入った紙で包んで仕上げの生クリームを載せる。威勢よく差し出されたそれを受け取りお礼を言う。

「神威?」
「うん、行こうか」
「? うん」

クレープに夢中だった私は、もう誰の視線もこちらを向いているのに気づかなかったけど、神威は上機嫌に私の手を引いている。




ガンつけてました