やさしい気持ちになりたいな。
なれたら、いいな。
そこに意味なんかなくても。
どうしようもなくても。
黙って見ているよりは、ずっとずっとずっと、すっきりするような気がした。
うつくしい、心で生きていくために。
またひとつ傷を負う。
きれいな、心で生きていくために。
またふたつ無力を知る。
そして、いま生きていることに、感謝を。
目に見えるものは変わっても、見えない何かを、守っていけるように。
きみは刃をとりました。
「じゃあな」
「うん、気をつけて、行ってらっしゃい」
世界と命を秤にかけて、ぐらぐら揺れるそれは、とても残酷だ。
世界なんかより、きみが大切だと、言えれば何か変わっていたのでしょうか。
きみの心より私の心を尊重すれば何か変わっていたのでしょうか。
相反する感情を。
きっと隠して、うまく笑ってる。
世界を守れないことなんて、分かっている。
意味があるのは結果じゃない。
行って死ぬかもしれないけれど、行かなくとも死ぬのだと、きみは笑って、空を仰いだ。
雲ひとつない青空を。
「おー、行ってきます」
行ってきます、は帰ってくるってことなんだよ、と言ったら、きみはやっぱり笑う。
帰ってくるよ。
またひとつ、心が剥がれて、見ないふりをした。
信じていれば、叶うのでしょうか。
「だから、」
おかえりって言ってくれ。
命を吹き込んだ小指を、私は大事に大事に守っている。
寂しくなんてないよ。
悲しくなんてないよ。
苦しくなんてないよ。
ただどこかで、真っ赤な花びらがひらひら舞い上がる。
「約束だよ」
またみんな、桜の下で、次の夢を見よう。