毎日毎日、私は吹き飛ばされまいと必死だというのに。
嵐は彼を中心に勢力を増している。彼が、重ねる日々がまた沢山の風を呼ぶ。それすらひっくるめて、彼は台風の目になった。
夜風が頬を滑る。子守唄みたいだ。強くないくせに飲みすぎる銀時は私の布団で爆睡している。
彼の世界は私だけでないし、私が独り占めして良いような存在でないことくらい、私にもよく分かっている。
私の知らない銀時は、沢山いる。私しか知らない銀時は、どこにいるんだろう。知らない顔を銀時が見せたら、そのとき私に、何ができるというの。

「あー、頭痛い…」

振り向けば、銀時が横になったまま頭を押さえていた。どれくらい飲んだのか知らないが響くのだろう。
私は黙ったままコップに水を注ぎ、枕元に膝をついた。
かっこいいくせにだらしない。だらしないのに、かっこいい。心の中では、一体何人誑かしてるんだろうと、思ってしまったり、する。

「はい、お水」
「おー、悪い」

いつもの言葉を、毎回聞かされるそれは、形だけなんだろうと、諦めている。もう、潮時かな、と、思っているのも。
肘をついてのろのろ起き上がった銀時が、私の顔を凝視している。

「…なんか、怖い顔してんぞ」
「…してないよ」

どれほど、遠く感じても。どれくらい、悲しくなっても。
好きで、大好きで、恋しくて、愛しくてたまらないのは、変わらないから。
ここに、来てくれるだけで、本当は良いはずなのに。
風が強すぎて、もう立っていられないよ。

「まだいる?」
「…いや、大丈夫」

空のコップを受け取る。流しに置いて、黙って立っていた私の名前を、銀時が呼んだ。
なんとなく、行きたくないと思ったけど、間延びした声が愛しくて、足は自然に動き出す。足元でわだかまる掛け布団を一瞥。銀髪をくしゃくしゃと、彼は掻き毟る。

「寝よ、一緒に」
「…うん」
「それから」

目元の赤みはだいぶ引いていた。眼光鋭いのは、酔っているからなのか。
前髪を、優しく掻き上げられる。大きい手のひら。優しい手のひら。離したくないのに、手に力が入らないよ。

「…別れねえからな」
「…どしたの、急に」
「俺の、気のせいならいいけど」

なんか、そんな顔してた。
少し乱暴に、頭を撫でる手は、力の入らない私の手の代わりに、ぎゅうと私を繋ぐ。

「もう、寝よ」
「…おう」
「ほら、詰めて」

誤魔化すように布団に潜れば、ほら、と銀時の腕が伸ばされた。
腕枕、ということなんだろう。痺れるよ、と言ったけど、平気だと銀時は笑っただけ。

「なまえ」
「なに?」
「なんかあったら、ちゃんと俺に言えよ」
「…うん」
「飛んできてやるよ」
「…うん」
「お前が笑ってねえと、調子狂うんだよ」
「…うん」
「うんしか言ってないんですけど」
「うん、ごめんね」

銀時、大好きだよ。
胸に顔を寄せたら酒の匂いばかりしたけど。
ずっと、手を繋いでてね。ずっと、隣にいさせてね。
そう言ったら、銀時は黙ってデコピンをして素面のときのように呟いた。

「たりめーだろ」




MONSTER TREE/SHAKALABBITSをイメージしたけどいかせてない