※現代パロ




エスパーか、と思うのは、疲れたなあと思ったときにタイミング良く連絡を寄越すから。いつの間にか心に忍び込んでいて、全部見通されてるのかとすら思う。


化粧を落とす気力もなく、かっちりした服だけは脱ぎたくて部屋着に着替えソファにダイブ。顔洗わなきゃと思いながらうつ伏せのまま目を閉じた。肩や背中、脹ら脛とかに纏わりつく疲労に負けてしまう。考えることがありすぎて、色んな人に気を遣って。あー疲れた、と口に出したくはないけど。寝てしまわないように浮腫んだ脚を動かしていたらテーブルに置いた携帯電話が鳴り出す。

「…もしもし」
「ハロー、なまえちゃんの悟浄でぇーす」

語尾にハートがつきそうな、低いくせに甘ったるい声が直に耳に滑り込む。莫迦莫迦しい、と思いながらも自然と口元は緩む。

「どうしたの?」
「んー? なまえちゃんが俺を恋しがってるからかな」

いちいち愉快そうな語尾は節くれだった神経を刺激することなく私の中に入り込む。自意識過剰、と少し笑ったら思いの外、真面目な声が返ってきた。寝返りをうって横を向く。

「あながち間違いでもねえだろ」
「…まあね」

本当は、ちょっと安心した、とか思わないこともないけど、見透かされてるのは悔しくて、でも強がり通すほど元気でもなくて。目を閉じて彼を思い出す。赤い髪とか、余裕綽々な口角とか、垂れ目勝ちな瞼とか。あー会いたい、かも。誰に聞こえるわけじゃないけど、付け足したかもは精一杯の強がり。

「俺もなまえに会いたくなってさ」

掠れるような甘い声。電話の向こうで聞こえた、ポーンという音。

「悟浄、いまどこ?」
「さあ? どこでしょう」

悪戯っ子みたいに笑ってるのが容易く想像できる。疲れを忘れたように起き上がって、鏡を覗いた。滲んだアイラインを指で拭って、コンシーラーの浮いた肌にパウダーを馴染ませる。まとめていたせいで癖がついた髪をシュシュで束ねてごまかしていたら、インターフォンが鳴った。うるさい心臓を感じながら、確認もせず急いでドアを開ける。

「会いにきちゃった」

目の前に立つ悟浄の声が、重なって聞こえた。

「びっくりしすぎだって」

目を伏せて笑いながら悟浄は携帯電話を切った。呆然としながら、私も携帯電話を切り彼を家へあげる。私が何か言う前に、大きな手のひらが頭を撫でた。

「毎日毎日お疲れさま」

そう言われたら、肩や脹ら脛にのしかかる疲れも吹っ飛んでしまった気がした。促されるように部屋に戻る。悟浄は持っていた紙袋をテーブルに置いた。

「ワイン貰ったから後で飲もうぜ」
「うん」

触れ合う距離でソファに座れば、片手で抱き寄せられる。肩口に額を寄せて目を閉じた。苦い煙草の匂い。よしよし、と子供をあやすように頭を撫でられるのが気持ち良くて、意識を手放しそうなる。

「少し、寝っか」
「…うん」

小さな声がおやすみと呟いて、頬に指が触れた。