首筋にじりじりと熱を感じながら、私は立ち止まり俯いていた。爪先の向こうに転がる命が枯れるさまを、見ていた。ああ、暑い。私の影で陽は当たらずとも、アスファルトはきっと熱い。その小さな体を焼き、薄い羽根を焦がすには十分に熱いだろう。空を切る糸ほどの細さの手足。激しくざわめく軸に、僅かに残る羽根。
どうしてそんなにもがくのか。どうせ死ぬのに。私が立ち去るのを、電柱の上で待ってるカラスに食まれて死ぬのに。たったひと夏の命で、お前は何をしたのだろう。したかったのだろう。たったひと夏の命に、何ができるのだろう。できたのだろう。光ばかり追い掛けて、誘蛾灯に群がり死ぬはずだったお前は。なんのために生まれてきたの。アスファルトから立ち上る熱気は目に見えそうで、蝉の声は夏の象徴で、手に持ったビニール袋の中のアイスは溶けそうで。
ああ、暑い。何の為に生まれてきたのかとか、お前は考える暇もないのだろう。考える脳もないのだろう。なんのため、なんて考えることがそもそもの間違いなのだろう。私たち生き物は、ただただ繁殖すればいいのだろう。余計なことを考えて、そもそもの使命を忘れてしまうなんていうのは、生き物失格なのだろう。余計なことを。考えて。私は、今日も生きているけど。こいつのように、本能に忠実になることもなく、繁殖することもなく。
死ぬべきなのは、お前じゃなくて私なんだろうな。そう考えたら、笑えた。頬を汗が伝ったけど、そんなことはどうでもいい。すぐそこに転がる命は、確実に少しずつ消耗している。ばたつく手足は緩慢になり、さざめく羽根に力はなく。お前はいま、何を考えているの。死ぬのは、痛いかい。苦しいかい。悲しいかい。惜しいかい。教えて。羽根に色づくその複雑な模様の意味も、光ばかり追い掛ける意味も、生まれてくる意味も。
私に教えてくれたら、いいのに。ビニール袋の食い込む指は少し痺れていて、アイスは多分もうだめで、汗は止まらなくて、なんとなく他人の視線が気になるけど。
私はここでじっと、こいつが死んでいくのを見たかった。見なきゃいけないと思った。軸から外れた羽根がぱらぱらとアスファルトに落ちる。そんな薄くて脆い羽根で、空が飛べるとは思わなかった。羽ばたこうとする度に、千切れて落ちるのに。ばたつく手足は、酷く緩やかに動きを止めた。
まだ生きている。そう思った。羽根というには粗末で、芋虫というには空に近い。お前は、なんのために生まれてきたの。耳鳴りみたいに蝉は鳴き続けて、太陽は相変わらず熱を寄越して、灼けるように熱いアスファルトの上で、お前は死んだ。
羽根は動かない。手足は動かない。私は大きく足を前に伸ばした。靴底が汚れるのは嫌だった。ビニール袋の中を覗いたら、カップの隙間から黒い粒の混じった白い液体が漏れていた。
捨てなきゃ、と思いながら、数歩後ろのあいつが気になって振り返った。もう、羽根しかなかった。