(虚ろな目の学生曰く)
 僕らは気づいてしまった。
 僕らは気づいていたけど知らないふりをしていた。
 僕らは気づいていたけど知らないふりをしながらどういう反応をすべきか考えていた。
 僕らは気づいてしまった。
 きっともう、それすらどうでも良いんだってこと。
 僕らは試行錯誤しながら僕らに都合良く作ったはずの神様を、片手で殺してしまった。
 ああ、ぼとり、頸から落ちる花、赤くて赤くて、ちょっと、痛かった、気がした。
 けどもう、なんにも分からない。
 この肘下に打ち込んだ麻酔を、くれたのは誰だったか。
 ああ、ぼとり、頸から落ちたんじゃない。
 僕がちょんぎった。
(ここで正気に戻ったように)
 なんでだったかは、覚えてない。
(以後、面会終了時間まで沈黙)


(青い目の少女曰く)
 ええ、それはね、この世で一番尊い存在なの。
 一番美しくて、綺麗だと思うわ。
 あの方だけは醜くないの。
 すべての民のために命をかけることができるのよ。
 十字架にかけられることも、弟子に売られることも、腹を抉られることも厭わないの。
 ああ、なんと慈悲深くお優しい方なのかしら。
(君は彼のためなら命をかけることも厭わないかい?と質問)
(即答)
 なぜ?
 私は神様ではないわ。
 どうして神様を崇め奉っても空腹は満たされないのか、あなた知っている?
 だから私も今日もこんなに寒いのにこんな薄着で外に立っていないといけないの。
(きみは神様を愛しているのかい?と質問)
 ええ? 勿論、当たり前じゃない。
 あの方だけは醜くない、美しいのよ。
 私には弟と妹が三人いるの。いまはとても美しいわ。
 けれどすぐに私と同じことをさせられるようになるのよ。
 どうして男は、あの方と同性だというのに醜くて臭くて気持ち悪いことをしたがるのかしら。
 本当は嫌なのよ。
 でも、我慢すればお金が貰えるわ。
 けれどね、あの方は困っている私にあんなことをさせなくても、食べ物を恵んでくださると思うの。
(ここでポマード臭いでっぷり太った男が彼女に声をかけたため終了)


(床に伏せった狼曰く)
 俺にはそういう思想はねぇな。
 他の奴らは知らん。
 そんなこたぁな、どうでも良いんだ。どうでも良いんだろうが。
 要るか? んなもん。
 俺にはいねぇから分からねぇが、お前等はそれで腹が膨れるのか? 明日の命が保証されんのか?
(膨れないし、されないと回答)
 全く、分からんもんだな。
 お前も分からんのだろう。俺に聞かれてもなぁ。
 俺ぁもう死にかけだ。
 随分と長く生きちまったな。未だに思う。
 あの肉を喰らう必要があったのか。
 まあ、答えなんかねぇさな。
 俺の腹が減ってたから喰らった。それだけだ。
 お前等は大変だな。殺すなとか、殺してから喰えとか。違ぇか? 又聞きだからなぁ。
 誰から聞いたんだったかなぁ。
 見ての通りだからな。
 たまたま通りすがった梟かなんかだったかな。
 指が足んねえのも、腰がくっついた双子も、キチガイも、殺しちゃならねぇんだろ。可哀想だなぁ。
(何が可哀想なのか質問)
 あ? んなもんそのガキだろ。
 そんなんでどうやって生きてくのか検討もつかねぇな。
(手厚く保護されると回答)
 保護ぉ? そんな出来損ないをか。
 淘汰されるもんだとばっか思っていたがな、俺ぁ。
 人間様の考えることなんざ、けだものには分かりゃぁしねぇってこった。
 …お前ももう行け。
 飢えたけだもの共に喰われたくなかったらな。
(飢えたけだもの共がここに来るのかと質問)
 そりゃあ来るさ。
 俺の死肉を喰いにさぁな。
(濁った目が乾いた毛並みの瞼に覆われ、飢えたけだもの共がやってきたらし


(以下夥しい量の血痕)


(以下空白)



(以下空白)




(以下空白)





(以下空白にて終了)