あの泣き腫らした日を経て、多分あいつは私のことが結構好きなんじゃないかと思って、私は生きている。
それでも、このマイナス思考と嫉妬心はとどまるところを知らない。
「なに拗ねてんだよ」
無視。これは理不尽なものだって、理解しているけれど抑えられない。だから、黙っているのだ。
当たりたくないけど、なかったことにもできず。
「オイコラ」
「…」
「無視たぁ良い度胸だな」
こつん、と頭を小突かれて顔を上げた。
「ちょっと黙っててよ」
「ついにいかれたか?」
「うっさい」
こんなだからダメなんだ。可愛げのない。余裕もない。ほんとうに妖一は私が好きなのか?そんな気すら起きてくる。
「ブスが更にブスになんぞ」
「…どーせブスですよ! 姉崎さんと違って!」
あー、言っちゃった。
とりあえず距離を置こうと、スクバを掴んだ。パイプイスから立ち上がる。のは、すんでのところで阻まれた。妖一の左手が、私の鞄を持つ右手を掴んでる。
「はーなーしーてー!」
「落ち着けバカ女」
「バカでいいから離して!」
「落ち着けっつってんだろ」
睨んでやったら、意外と真面目な顔をしていて怯んだ。
「なによ」
「またなんかゴチャゴチャやってんのか」
「悪かったわね!」
するっと下りた手に鞄を奪われ、彼の足元に置かれる。取り返そうと腕を伸ばしたら、その腕を取られてあれよあれよと、膝の上に着地。
「やだ、ちょっと、」
「ちょっと目え離すとすぐこれだ」
「なによう」
「はいはい、よしよし」
「やめてよ、」
「はいはい、かわいーかわいー」
「、やだって」
「はいはい、好き好き」
「なにそれえ」
てきとーすぎる。頭を撫でる手を払い除けたい。それができない私はなんて愚かなんだ。頭を優しく優しく撫でられて。
下を向いている顔を覗き込むように、傾いだ彼は。ちゅ、と可愛いキス。
「なまえが一番かわいーよ」
うそだあ、を言えずに、ただ私は耳まで熱くして黙りこくる。
そんなのも見透かしたように、妖一は私を抱き締めて頭を撫で続けた。