※社会人設定、知念くんは地元から出てます
昔の同僚に誘われて、合コン、的なものに行った。作法が分からなくて、居心地悪〜と思いながらも、斜め前に座っていためちゃくちゃ背の高くてほりの深い、エキゾチックな顔立ちの男性がどタイプで、目の保養だとチラチラ見ながらお酒を飲んでいたら、席替えなるものが行われ、あれよあれよと隣になった。しかも、長身の彼と壁に挟まれる形で、私はずっと彼と映画や音楽の話、彼の故郷の沖縄の話をしながら途中からソフトドリンクに切り替えて食べたり飲んだりしていた。
彼の声はとても低くて優しくて、強面のわりに眼差しが穏やかで、ますます惹かれた。会が終わる頃には彼は結構酔っていた。ひとりじゃ帰れない、とニコニコわがままを言う大きな彼を送って行くことになって、でも彼は歩けてるんだけど、ここから歩いていける距離の自宅を目指して、ついさっき会ったばかりの彼と手を繋いで、フラフラ歩く彼を操縦しながら進んだ。
目の前がコンビニで明るく照らされたアパートの二階、彼がポケットから出した鍵を使ってドアを開ける。ドアを大きく開いて、彼を入れて、私も入ってドアを閉めたら、すぐにガチャンと鍵の閉まる音がした。濃い影に見上げたら、優しく私を見下ろす知念くんと目が合った。やっぱり、酔ってないじゃん。一番最初にそう思ったけど、まあそうだろうなと思ってここまでついてきたから、驚くこともなかった。
「ごめんねえ」
「…うん?」
「酔ってるって、うそ、さあ」
「…だと思ってた、けど」
「…なのに、ついてきてくれたば?」
「…うん」
「にふぇー」
「…うん」
さっき、教えてもらった。にふぇー。ありがとう、て意味。
夏は夜でも暑くて、でもきっと彼の故郷の沖縄はもっともっと暑かったんだろうなあも思いながらも、スカートの裾を指でいじった。
「疲れ、ちゃった、から、ちょっと、休みたい、んだけど、」
「ああ、どうぞ」
彼がサンダルを脱いで、私もストラップを外してぺたりと部屋の中に入る。私の白々しい嘘に、彼はにこりと笑うだけ。その乾いた肌がうらめしい。さっぱりした部屋の中、網戸のままの窓からぬるい風がたまに入ってくる。ソファーにでも座らせてもらおう、と思ったら後ろから抱き締められて、そのまま持ち上げられた。
「え、」
「なまえちゃんは小さくて軽かねえ」
ぼふん、と彼を下敷きにしたままベッドに仰向けに倒れ込んだらしい。細い、と思っていた彼はそんなこともなく、固くて熱くて強引で急にドキドキし始めた。
「ちょ、っと、知念くん!」
「はは、つーかまえたさあ」
手、が。お腹を抱えていたはずの左手がいつの間にか上がっていて、甲が下着越しに胸をふよふよしている。仰向けに流れた胸を手のひらで触らないのがせめてのもの遠慮なのか、あまり意味がない気もする。下半身のあたりを捕まえていた右手はいまや、右の太ももを満喫中だ。あと五センチ、親指が上にずれれば下着に触れてしまう。
「お、てて、が、悪いことしてない?」
「ん? そうかや?」
「ぁ、こら、」
右手が、すい、と下着越しに足の間を掠めた。左手が離れて、ほっとしたのに、すぐにトップスを引っ張られて服の中に手が入ってきてしまう。大きなかさついた手のひらがお腹を撫でて、下着のレースをなぞった。そのまま、大きな手が胸を包み込んで揉む。
「あ、」
「窓、開いてるさあ」
「ん、」
仕方なく自分の手で口を塞いだ。こんなこともあろうかと思っていたけど。知念くんの見た目とか、優しげなのに強引なところとか、乾いた手のひらとか、低くて落ち着いた声とか、なんかもう、なんかもう、どうにでもなっちゃえ、と思わせるのは、汗ばむくらい暑い夏の夜だから?
「…ね、」
「んー?」
「私、あ、汗かいてる、んだけど」
「わんもさあ。暑いねえ」
「ん、んん、」
もうとっくに、良いと思ってるんだけど、それを同意と取ったのか、彼の右手が右足の付け根から下着の中にもぐり込んだ。恥ずかしくて足を閉じようとしたら、あろうことか、彼の足が、私の足を引っかけて開かせて立てた。私は彼の足が内側に入り込んでいて閉じることができない。こんな技どこで覚えるの?と思いながら、焦らされていたせいの湿り気を彼の指が見つけてしまう。ぬる、と指先がそれを掬う。掬えば掬うほど湧き出てきて、指先がそれを上の突起まで塗り広げる。こし、と指が上下して、背中と足が連動してわななく。両手で口を塞ぐも、手に力が入らない。
「ち、ねん、くん、手…」
「ん?」
「かし、て…」
力の入らない左手で、私の服の中で泳ぐ左手を掴んだ。重そうなその手は私の意のままにすいすい動き、私の運んだ通りに私の口を塞ぐ。ぎりぎり口の上に乗っかっただけの大きなごつごつした手を、上から両手で押さえる。隙間がなくなってぴったりくっついて、止まることなく動く彼の指先がもたらす快感を息だけで逃した。
「…無理矢理してるみたいさあ」
彼の笑うような声に、首を横に振る。でもすぐに何も考えられなくなって、びくん、と背中が弾ける。でも、口の上の手と、下着の中の手と、右足を開く足のせいでろくに動くことができず、また彼の上に背中を戻すことになり、くらくらする頭をきつく目を閉じてやり過ごす。
やっと落ち着いてきてゆっくり目を開けた途端に、長くて太い指が二本も中に入ってきて、口を塞がれたまま声が出た。その感触に、思ったより濡れていることが分かって恥ずかしい。久しぶりの行為で、いきなり指二本はきつい、と思うもお腹側を擦られながら中を拡げるように動いていく。中を探るように動く指が入念にほぐしているのが分かって、なんとなく嫌な予感がする。彼は、規格外に背が高いのだ。
考えごとをしていたのがばれたのか、親指が急に突起をなぞった。分かりやすく体を跳ねさせた自分をうらめしく思いつつも、両方への刺激が相乗効果となって内腿がふるふる震えだす。彼もすぐに気づいたようで、親指と中指と薬指をそれぞれ擦りながら私を追い詰め始めて、ぎゅうと彼の手を掴んだ。
「またいっちゃうば? …かわいいねえ」
低い声が、急に耳元でした。耳にかかる息の熱さが引き金になって爪先まで大きく震えた。
彼の、人形みたいな左手を持ち上げる。
「ひ、どい」
「…どれがや?」
「あの、タイミングで…しゃべる?」
「ああ、ごめんねえ」
「…ていうか、他にも、ひどいことしたの?」
「…さあねえ」
知念くんが私から手を離して腹筋だけで起き上がる。振り返ったら、全然変わらない彼が微笑んでいて、悔しい。
「なまえちゃん」
「…なあに」
「わんの、ちょっと大きいやし、挿れても良いば?」
「…ここまできて聞かないでよう…ちゃんと最後までして…」
「…にふぇー」
すぱん、と窓が閉まる音がした。様子を伺う元気もなかったけど、もう声を気をつけなくて良いことにほっとする。彼も準備があるだろうし、と余韻に重い体をなんとか動かしながら膝立ちになって下着を片足から抜いた。ぎ、と後ろに体重がかかって、振り返ろうと思ったら両手で腰を持たれて軽々持ち上げられる。
「わ、」
「なまえちゃん、スカート、めくって」
「うん、」
恥ずかしくて少しだけ端を持ち上げたら、彼のあぐらの中に着地させられる。体位が分かって、急いで膝を折りたたんだ。ぬるぬるして気持ち悪いくらいのそこをなぞるように行ったり来たりするそれが、背筋のひやりとするような大きさで、うそうそうそ、と心の中で焦っているうちに、彼がまた耳元で低い声を出す。
「…良いば?」
「…ん、」
ええいままよ、と肯定の返事をした。また顔が見えないことにがっかりしつつ、両手をどうしたら良いか分からなくて、腰を掴む手の上に乗せたら、彼の指が私の指を絡ませてくる。なに、それ。そう思っていたら、へこみにぐぐ、っと圧。彼が下から挿し込む力と、彼が私を落とす重力とで、めりめりと音がしそうなほどに巨大なそれがねじ込まれる。彼の胸に背中を預けることもできないくらいにきつくて、痛い、をすんでのところで飲み込んだ。途中でやめるのも辛い気がして、全部入り切るまで私も体重をかけて彼のそれを受け入れる。たぶん全部入った、というところで彼も止まって、私は大きく息を吐いた。
「ちょ、ちょっと、ちょっと、待って」
「…うん、」
「…は、ぁ、知念くん、」
「…ぬーがや」
「…え?」
「ああ、なに?」
「お、おっき、すぎ、ない?」
「あはは、ごめんねえ」
あはは、じゃないよ。なんて言える余裕がなくて、本当は前に手をつきたかったけど、絡んだ指を解きたくなくて不安定なまま深呼吸を繰り返して馴染むのを待つ。きっと彼も辛いだろうというのは、髪にかかる息で察する。早く動いてあげなきゃ、そう思いつつも、長さも太さも規格外すぎて、困る。
「ね、知念くん…」
「…んー?」
「ゆ、ゆっくり、なら、大丈夫、かも」
「ん、」
彼の大きな手が、私をゆっくり持ち上げる。ずりずりと内壁が擦れながら彼のが出ていく。思わず高い声が出て、彼の指を掴んだ。ぎりぎりまで抜けたそれが、彼の手が私の腰を離した途端に重力のせいでずるずると奥まで入ってきて、むしろ私が彼の上に落っこちてしまって、一番奥にごつんと当たる。ただ、私の中がびしゃびしゃに濡れているせいでスムーズに入っていくんだと思うと恥ずかしい。
「あァっ、」
「…なまえちゃん、もうきもちい?」
彼の手が私を持ち上げて、離してを繰り返す。ずりずり、ごりごりを問答無用で繰り返されて、最初の恐怖はどこへやら、余すところなく刺激してくるそれにすっかり負けてしまった。
部屋中に私の荒い息だけが充満している。
「あ、ぅん、ひゃあ、」
「気にいってもらえて、良かった、さあ」
「ああ、んん、」
知念くんの声もどこへやら、私をおもちゃみたいに扱う手のひらにすっかり虜で、前のめりの背中が反って頭だけがガクンガクンと律動に合わせて揺れる。力の抜けた指でどうにか、彼の指を握るように絡めれば彼も同じようにぎゅうと掴んでくれて、合コンのときの自己紹介を思い出していた。低い声で言った彼のフルネーム。
「ひ、ろし、くん」
「…ぬー、したば」
「き、きもち、い?」
「…ああ、最高さあ」
吐息まじりの低音が、ぞくぞくと耳から入って背中を駆け降りていく、錯覚。急に名前を呼んで嫌がられたかな、だなんて考える間もなく、私が重力に従って落ちるタイミングで彼が腰を打ちつけた。突然の動きに、悲鳴が、吸う息とともに喉に吸い込まれていく。がつん、と一番奥に勢いよく当たって、閉じていた瞼がばちんと開いて、目の前が弾けてくらくらした。
「あ、ぁん、ま、まっ、て」
「…わっさん、もーちょい、」
「やぁ、ン、ああ、」
「ちばってねえ、」
色んなところを擦っては、がんがん突かれて、揺れては落ちて、軽々と持ち上げられて、好き勝手にされてるのに意味が分からないくらい気持ち良くて、ひっきりなしに出ていく声が自分のじゃないみたいで、首筋にうっすらかかる知念くんの息を感じながら、気が飛びそうな強烈な快感の中で。激しい律動の果てに、やっと彼が小さく低く呻いて、絞り出すように腰を浅く動かした。終わった、そう思って大きく息を吸い込んだら、たった数秒、強く強くぎゅうと抱き締められる。
「…にふぇー、お疲れさま」
「うん…。知念くんのほうが、お疲れさま」
「…戻っちゃったば?」
「…寛くん、」
彼は微笑んでからひょい、と私を持ち上げてベッドに寝かせた。早く処理しないといけないから、いつまでもこうしているわけにもいかないのは分かるんだけど、余韻が。そう思いながら、なんとなく目をそらした。ちょい、と彼がティッシュボックスを私の手に当ててくれて、私もそれを使う。喉がカラカラで、お腹も空いていて、暑くて、シャワーも浴びたいし着替えたいし、とりあえず私は額の汗を拭う。上半身を起こしてゴミ箱を探せば、彼がそれを差し出してくれて見られないように投げ込んだ。
まだ余韻をひきずる体に従って、もう一度横になる。メイクの乱れを指で気にしていたら、彼も隣に寝転がってきた。
「からだ、だいじょぶ?」
「…まだ、なんか入ってるみたい」
「はは、わっさん」
「…どういう意味?」
「ごめんて意味さあ」
「うん…いーものをお持ちで…」
「…初めて言われたやし」
「ええ、ほんとう? じゃ、凶暴」
「それも」
「本当のことだよ」
私が笑ったからか、知念くんが柔らかく笑って、その余裕さがなんだか悔しくて、こんなに優しいのに欲しい言葉は言ってくれないし、とか考えながら大きな手のひらを見ていた。
ぼーっとしていたら急にかさつく喉を自覚する。
「喉渇いた…お腹も空いた」
「わんも」
「暑い…」
「なんか買ってくるやし、シャワー浴びてて良いさあ」
彼がさっと起き上がって、干してあったTシャツを取って渡してくれる。広げてみたら、めちゃくちゃに大きい。これならワンピースになりそうだ。
「洗濯しておけば、明日には乾くやし」
「良いの?」
「もちろんさあ」
その言葉に甘えることにして、財布と鍵だけ持って出て行く彼を見送り、急いで着ているものを洗濯機に入れ、近くにあった洗剤と柔軟剤を借りる。こだわりのなさそうなチョイスに安心しつつも、お急ぎコースでスイッチを押し、シャワーを借りる。高いところにかかっていたヘッドをどうにか取り上げて、熱めのお湯を頭からかぶった。汗や疲労感が一緒に流れていく気がしてしばらくそのままでいて、他人の家であることを思い出す。急いで、でも丁寧に髪も体も洗って、髪を絞ってタオルを使って、洗濯機の残り時間を見る。まだ数分。彼は、戻っていない。全裸のまま、リビングに置きっぱなしだった鞄の中からハンドクリーム代わりのクリームを持ってきて気になるところに塗って、ドライヤーを借りる。
脱色した眉、パーマしているまつ毛、ティントで血色の良い唇、レーザーで調子の良い肌のおかげですっぴんでも耐えられそうなことに一安心して、玄関と洗濯機、交互に意識をやる。彼が帰ってくる前にドライヤーで下着を乾かしたい!
存外さらさらになったシャンプーとトリートメントに驚きつつ手櫛で髪を整えていたら洗濯機がゼロを表示し、大急ぎで下着を乾かした。玄関から音がしないことを祈りながら身につけて、やっと落ち着く。なかなか乾かない髪にやきもきしつつ、目でハンガーを探して、まだまだ彼は戻らず、髪が乾いてから彼の貸してくれたTシャツを着てみた。
「でっか!」
本当にワンピースじゃん、とひとりで笑えてきて、早く見せたいな、と思いながら見つけたハンガーで服を干す。目の前のコンビニに行ったはずなのに三十分はかかってるし、連絡してみようかと思って、連絡先を交換してないことも、彼のスマホがテーブルの上に置きっぱなしなことにも気がついて落胆する。大して距離のない玄関からリビングまでをうろうろして外に出てみようか、でもさすがにこの格好じゃ、と逡巡しながらドアの覗き穴を覗いても誰もいない。
どこかあさったら、スエットとパーカーくらいは見つかるんじゃ?と押し入れを睨んでいたら、やっと玄関から音がした。
「やっと帰ってきた!」
「わっさん、ジャンプ読んでたさあ」
ちょっと怒ったふうに言ったのに、なんでもないようににっこりされて拍子抜けしたような、本当にごめんて思ってる?とイライラするような。このとき彼が、もしかしたらシャワーだけ浴びて私が帰っているかも、だなんて考えて時間をかけていたと話してくれるのはもっと時間が経ってから。
「ずいぶんおっきいねえ」
「私もそう思った! さすが約二メートルなだけあるね」
「かわいいかわいい」
「ありがと!」
彼の手には思ったより大きな袋で、重そうだし早く中に、と思ったのに彼はサンダルを脱いで立ち止まる。振り返って、どうしたの?と首を傾げれば、かなり上にある彼の優しい目元がゆるむ。
「なまえちゃん」
「なあに?」
「わん、なまえちゃんのこと、好きになっちゃったさあ」
「…え、」
「もし良かったら、わんのいなぐになって欲しいやし」
「…いなぐ?」
「彼女って意味さあ」
「…そこで方言使う?」
「はは、わっさん」
「…いいよ。私も、寛くんのこと、好きになっちゃった」
「…嬉しいねえ」
「…うん」
知念くんが、屈んで私の額に唇を当てた。照れ隠し、というよりは幸せいっぱいで頬が綻ぶ。まだ出会って一日も経ってないけど、彼のゆったりした空気感とか、優しげな眼差しや指先を知ったら、なんだかうまくいく気がして、とても嬉しい。
そんな気持ちを噛み締めていたのに、私のお腹がぐる、と鳴ってしまって彼が微笑んだ。何食べたい?と聞かれ玄関で袋の中を覗く。こんな時間のコンビニだし、パンとカップ麺。それから私のリクエストした甘いお酒とたぶん彼の飲む焼酎か何かと、お菓子。リビングに戻って、彼がお湯を沸かしてくれている間にお酒を並べる。並べた缶チューハイはどれもお店で飲んでた味のものばかりで、さらに胸がいっぱいになる。
「寛くんっ」
自炊をしてなさそうなキッチンに立つ彼の腰に抱きつく。でこぼこした腰の強さを思い出して、気づかれないようにぎゅうと目を閉じて、何事もないかのように顔をすりつけた。
「合ってたば?」
「うん、どれも好きなのばっかり」
よく覚えてたね、は野暮かなと思って言えなかった。でも首が痛くなるほど上を見たら、やっぱり優しそうな目尻で私を見下ろす彼と目が合って、それでじゅうぶんだった。
お湯が沸くまで、知念くんの職業や学生の頃はテニスに勤しんでいた話を聞いて、カップ麺ができるまではお酒を飲んで待つ。彼の飲む透明のお酒を舐めさせてもらって、その熱さと辛さに舌を出して笑われたり、ポテトチップスを食べたり、私の仕事の話をしたり、私の住んでいるところの話をしたり。カップ麺を食べ終えてお腹が満たされたら、彼がシャワーを浴びるというので見送る。その間に缶チューハイを飲みながらゴミを分別して、残りのポテチを食べていると早々に彼が戻ってきて笑ってしまう。
「はや!」
「そうかや?」
「男の人ってこんなもの?」
「こんなものさあ」
これだけ暑いとうっすら濡れている髪もすぐに乾いてしまうのだろう。あれだけ大きなTシャツも彼が着ると普通のTシャツで、にやける。
私たちは一次会で抜けたので、まだまだ今日は終わらない。週末のこの時間ならきっとお笑い番組や歌番組なんかがやっているだろうけどそんな空気にもならず、ソファーとテーブルの間に座り込んでひたすらちびちびお酒を飲む。彼の買ってきた、強くも弱くもない缶チューハイ。見れば見るほどタイプで、頬がゆるむのを自覚する。
「なまえちゃん」
「んー?」
「酔ってるば?」
「そんなことないよ」
「ずっとにこにこしてるねえ」
「うん、楽しい」
彼の手が私の頭をするりと撫でて、そのまま頬に滑る。大きな大きな手のひら。ちゅ、とくちびるが重なり合う。舌に残った辛いお酒。私の口の中に残っている甘い炭酸。このまま食べられてしまうのではないかという勢いで、彼が体重をかけてくる。でもそれを、頬に触れる手のひらだけで支えていた。
「…寛くん…もっかい…」
「…どっちかや」
ああ、なんていじわる。
「ぜんぶ…」
両腕を彼の首に引っかけた。彼が、私の缶チューハイを取ってぐいっと口に含む。そのまま私に口移しで飲ませて、軽々と私を持ち上げる。閉めたままの窓、首を振る扇風機の風が遠退く。
そっとベッドに私をおろした彼は、私の腰の下に枕をはさむことを忘れず、私の顔の両側に肘をついてまたキスをした。彼の体に抱きつきながら、時間も忘れてファジーネーブル味の舌に酔いしれていたら、彼の両手が大きなTシャツをたくし上げ私の体をまさぐり始める。同じ人体なのに、彼のだとカサカサで固い。ウエストのくびれを確かめるように動いてから背中にもぐり込み、ブラのホックを外す。私は自主的に肩紐を抜いてブラを外すのを手伝う。彼の大きな手に揉まれるにはいささか小さい胸を、彼は揉んだり、先端を摘んだりする。
「ん、あ、」
「…かわいいねえ」
「あ、んまり、ないよ」
「気にならないさあ」
口を離して、鼻の頭にキスされた後、彼が胸の先端を口に含む。その舌の動きが、下腹部に響くようなくすぐったいような。久しぶりすぎて戸惑う感覚に、声と息が鼻から抜けていく。なのに、足はしっかり震えていて、足の間は湿り始めていて、頭の片隅にいる冷静な私が自分をパブロフの犬に例えて呆れている。
両胸をしっかり堪能したのか、彼の手がお腹をおりてショーツにかかる。もうここまできたら、恥ずかしいけど、恥ずかしくもない。たぶん、上半身にいくつもキスマークをつけられながら、それを脱がされ、彼の手が太ももを押し上げる。
「ひ、ろしく、」
「…ん?」
「ひゃ!」
太ももを押し上げた指が、足の間の突起を剥いたと思ったら何の前触れもなく彼の厚い舌がそれを舐める。慌てて歯を食いしばって、大きな声が出るのを阻止するも、彼は気にせずにぺろぺろと舐めるのをやめない。嘘でしょ、と抗議の意を込めて彼の髪をくしゃりと掴んでもまったく意に介されず、舐められ、時折吸われ、あっという間に内ももが震え出してきてしまう。
「あ、あ、まって、らめ、ぁん、」
「…なまえちゃん、」
「んん、ぁああ、」
「このへん、弱いんだねえ」
びくん、と爪先まで伸びて私は小さく悲鳴をあげる。力の抜けた体に、追い打ちをかける彼の言葉に返す言葉もなくて、睨みたいけど息を整えるので精一杯だった。
でも彼はそんなのちっとも気にせず、びしゃびしゃに濡れたくぼみの水分を舌で大きく舐めとって。
「まーさん」
「…それ、どういう意味か、聞かないほうが、良い気がする」
「おいしいってことだねえ」
「聞いてないってばあ!」
「ちゅらさんだねえ」
「今度はなに…ひゃあ、」
かわいい、さあ。彼は私の目の前まで近づいて、こともなげにそう言う。長い腕の先、長い指が、私の中に侵入してきて、私はすぐに返事なんてできなくなってしまうのに。指が、中を確かめるようにゆっくり動いていく。浅いところから、奥の方まで、その間もずっと観察されているのが分かって目を閉じる。
「は、ずかしぃ、から、」
「ん?」
「あ、みないで、」
「そうはいかないさあ」
揃えていた指が広がり始めて、濡れたそこがまたさきほどの質量を思い出す。早く欲しいけど、ちゃんと慣らさないといけないのは身をもって知っているので、彼の肩にかじりついて声を逃す。
「なまえちゃん」
「ん、」
なあに、と聞こうと開いた口に彼の舌が入り込む。左手がまた胸を緩く揉みながら、右手の親指が足の間の突起をこする。
「んん、」
どうしようもなくて、両手で頭に抱きついた。ぎゅうぎゅう絡みついて、体中に走る快感をどうにかしようと思うけど、ただ息が上がるだけ。でも、すぐに限界がきて、キスに声を奪われたまま大きく体が弾ける。タイミングを合わせるように彼が体重をかけてきて、私は痙攣で快感を逃すことができない。私の目の焦点が合い始めて、やっと彼がくちびるを離した。
「ひ、どい、」
「気持ち良かったかや?」
「しぬかとおもった…」
彼は優しく微笑むだけ。
「もう、大丈夫そうあんに?」
「…うん」
ひょいと彼がベッドの横のタンスに腕を伸ばす。長い。そう思って、何気なく目をやる先に、いくらか繋がったままの避妊具。彼はそれを私の目の前でひとつ千切って、残りを戻す。そりゃ、私たちもそれなりの年齢ですから、そりゃそーなんだけど、そーなんだけどさ! 合コンのとき、最後に付き合ってたのは二年前だと話していた。本当にそれだけかな? という、疑問がむくむく浮かんでいる中、彼はスムーズにそれを装着し終えている。
「難しい顔してるねえ」
「…寛くん」
「ん?」
「…最後に彼女いたのは…」
「二年くらい前だねえ」
「それからは…」
「なあんにもないやし」
「せ、セフレとか…」
「はは、いないさあ」
ぐ、と私のくぼみにフィットするかのように、彼の丸い先端が突きつけられる。私の太ももを押し上げて、押しつけた彼が、私が大きく息を吐いたのを見計らって、腰を押し進めた。やっぱり、みちみちに拡げられて、痛いくらいで、でも、少し引いては進みを繰り返しているうちに、彼の足の付け根と私の足の付け根がぴったり合わさったことに気づいて、大きく息を吐いた。
「は、いったああ、」
「入ったねえ」
何も言わなくても、慣れるまで動かないでいてくれる彼に感謝しつつ、足の間の違和感と濡れた感触を振り切ろうとしていたら、珍しく彼から口を開いた。
「なまえちゃんは、」
「…え?」
「最後に彼氏いたの、いつ?」
「…去年、かな」
「…ぬーして、別れたば?」
「今日の合コンで一緒だった人たち、前の職場の人たちでね、ちょうどその頃転職したの」
「うん」
「休みとかも変わって、新しい職場でバタバタしてる間に浮気されてて、」
「…かわいそうにねえ」
「…ありがと」
「…さて、」
額にキスがひとつ。いいかや?と聞かれて、うん、と答えた。初めて交わったときよりも、擦れるたびにお腹に響く気持ち良さで、シーツを掴む。さっきよりも、もっと気持ち良い。動きを繰り返すたびに濡れていくのか、スムーズになっていくのが自分でも分かる。彼が太ももを押さえるのをやめて、私の手を取った。きゅうと、両手とも頭のあたりで恋人繋ぎ。私の声と、彼の吐息と、湿った音。
「んん、ぁ、ね、」
「ぅん?」
「ぁんま、ぁ、みなぃ、で」
「うーん、」
ぐんぐんと内臓ごと押されるような圧で体が上に押されていきそうなのを、彼が繋いだ手でせきとめる。閉まらない口から、声や息がひっきりなしに出て行くばかり。
「なまえちゃんのちら、見てると、すぐいっちゃいそーさあ」
「、え?」
「ごめんねえ、」
がつん、とお腹側にそれが刺さって、息が止まる。彼の、伏し目がちな真剣な表情をぼやける視界で捉えながら、足を彼の体に沿わせた。もう力を入れていられなかった。手を、ぎゅっと握れば握り返してくれる。
「ね、んん、ほんき、だして、よ」
ちら、と私を見た彼は優しく笑う。
「無理」
痛いくらいに奥に叩きつけられて、彼が大きく長く息を吐いた。あ、終わったな、と分かる。甘えるように胴に腕を絡めれば、また優しい顔で抱き締めてくれる。熱い体。速い心臓の音。優しくて低くて甘い、無理、と言った声。いつか、無理じゃなくなるときが来るのかもしれない。そう思ってすり寄った。