木手くんのおうちはシンプルで片づけられていて、できる男はこういうものなのかと感心した。私は鞄を置いて、ジャケットを脱いで、家主が何か言う前にソファーにどっかり座り込む。

「アルバム! アルバム見たい!」
「はいはい…」

酔っ払いの元気さに閉口しながらも、彼は隣の部屋に行き、すぐに戻ってきた。よくある、大きなハードカバーのアルバムをふたつ持って。彼の話から推察するに、それは中学三年生のときのものと、テニスにまつわるものなはずだ。わくわくしながら受け取って、テニスのほうを先に開いた。

「わぁ、若い。木手くん、あんまり変わらないけど、若いねえ」
「そりゃそうでしょう」
「ほー…」

酔った上司が、木手はテニスで全国どころか日本代表だぞ!と陽気に言ったせいで、話題はしばらくその話で持ちきりだった。私はたまたま隣に座った同僚がそんなすごい人だったとはまるで知らず、話題が移り変わってからもずっとすごいすごいと言い続けていた。木手くんがスポーツマンだったなんて信じられない。ちょっと嫌味なインテリ、というイメージを覆されて、私は驚きが隠せなかった。アルバムが見たい!と言えば、彼は特に表情を変えることなく了承したものの、会社に持ってくることは拒否されてしまった。えー、とぶーたれた私に、彼はやっぱり顔色ひとつ変えずに、ウチ来ますか?と言った。
私が真剣にアルバムを繰っているのをまるで無視して、木手くんは着替えたりシャワーを浴びたりしている。部活のユニフォームから覗く肩や二の腕の筋肉に驚き、本当に日本代表のジャージを着ていることにも驚く。

「そんなに面白いですか?」
「うん…ていうか、すごい。ほんとに、すごい人なんだねえ」
「はあ」

私の低レベルな感想に呆れたように相槌を打った彼は、何か飲みますか?と私に問う。何があるの、と聞けば、ラインナップにウイスキーと炭酸水があったのでハイボールをリクエストした。

「そんなに飲んで帰れるんですか」
「あんまり飲んでないもん。ていうか…帰るの?」
「は?」

もう帰るとか、めんどくさい。そう言うと、木手くんは眉を顰めた。わあ、こわい。おどけて言うと溜息をつかれる。でもそれ以上何も言われなかったので、私はまた膝の上のアルバムに視線を戻した。

「やっぱり、楽しかったですか?」
「…何がです」
「…部活? だって、日本代表でしょう」
「まあ…楽しかったかと言われると、そうかもしれないですね」
「そっかあ…。良いな、木手くん。私ずーっと、つまんない人生送ってきて、毎日つまんなくて死にそうなのに」
「…そうは見えませんよ」
「でもつまんないの」

つまんないつまんない、と呟き続けていたら、洒落たグラスが目の前のローテーブルに置かれた。やたら色が薄い。木手くんも隣に座って、赤ワインを飲んでいる。飲み会のときから私のさして面白くも有益でもない話に、それなりに付き合ってくれているのを利用して私はまたひとりでべらべら話し始めた。

「なんか、楽しくても持続しないっていうか…とにかくつまんない!て思っちゃうんです。私がつまんない人間だからつまんないんだろうなあって考えるんですけど、じゃあどうしたら良いのか全然分からなくて」
「はあ」
「大学のときの友人と集まって飲んだりしても、やっぱりみんなもやもやしてて、こんなもんなのか?って思いもするんですけど。木手くんはどう? 人生楽しい? つまんない?」
「考えたこともありません。というか、そんなことを考えるほど暇じゃありませんでしたね」
「辛辣ぅ」
「じゃあ何がどうすればつまらなくなくなるんですか?」
「それがね…分からないの」
「…なんですか、それ」
「分からないけど、なーんか満たされなくて、なーんかつまらないの」
「あなた、多分一生そのままですよ」
「ひどぉい」

彼氏とかいないんですか、と珍しく木手くんが私に話を振る。残念ながら、彼氏がいたら男性の家には行きません。私にも、それくらいの分別はあるつもりだ。社会人になってからずーっといません、そう言うと木手くんはほう、と眼鏡を押し上げた。

「木手くんは?」
「いたら女性を家にはあげませんよ」
「ですよねぇ」

アルバムの中の木手くんは、彼だけでなく同じユニフォームを着た男の子たちは誰ひとりとしてつまらなさそうな顔などしていない。うらやましい。考えてみれば、学生時代に打ち込んだこともめちゃくちゃ頑張ったこともない。いいな、ぽつりと言葉が口からこぼれた。

「いままで何人か付き合った人いましたけど、もうスキスキ!てなることがないんですよねえ。こんなもんかあって感じで」
「よほどつまらない恋愛をしてきたんでしょうね」
「そうかも。私がつまらない人間だからかな?」
「それは分かりませんが」
「でも、友人にそういう話をしたら、みんなえっちが下手だったんじゃない?って」
「…一理ありそうですね」
「でもそんなの、付き合う前には分からないし」

彼がワインを飲むのが見えて、私もハイボールを飲んだ。本当に薄い。ウイスキーは風味くらいしか感じない。私そんなに弱くないし、たまにはべろべろに酔っ払ってみたいものだ。

「アラサー女性は悩みがつきませんなあ…」

芝居がかった言い回しをして溜息をつく。なにせ女子会も閉塞状態で、各々悩みを打破できないでいる。ぱらぱら眺めていたアルバムがとうとう最後のページにきてしまった。そこはたくさんの寄せ書きがされていて、これは読んじゃダメだな、と閉じる。

「木手くんはぁ? 悩みとかないの?」
「…ないこともないですが」
「えっ、なになに。聞きたい」
「教えませんよ」
「ですよねー」

そりゃそうだ。私はソファーに片肘をついて、木手くんを眺めた。部屋着のTシャツだと、彼の体についた筋肉のシルエットが透けて見える。まだ鍛えてるんだあ、と勝手に納得した。
そんな私の視線に気づいたのか、彼も私のほうを見た。アルコールのせいか、目尻がやや赤い、気がする。

「セックスがうまければ良いんですか?」
「…ん?」
「さきほどの話ですよ」
「うん、急にびっくりした…」
「で、どうなんです」
「えー、そうなのかな? 私、あんまり分からないんだよね」

まさかあのスマートだけれどちょっと嫌味っぽい同期一の出世頭とこんな話をするのは居心地が悪い。さっきは流されたからそんなもんだと思っていたのに、いきなり答えにくい質問だ。

「分からない」
「うーん。友人には、そんなに感じてないんじゃないかとは、言われましたけど」
「…試してみますか?」
「はい?」

思わず聞き返してしまったけど、この会話の流れの意味は簡単だった。いや、確かに。確かに、木手くんはなんとなくうまそうだ。イメージだけれど。返事に困って黙り込んだ私に、彼が追い討ちをかける。

「そういうつもりで帰らないなんて言ったのかと思いましたよ」
「まあ…あの…嫌だったら来ませんけど…ほんとうに?」
「構いませんよ。シャワー浴びてきますか?」

この会話の仕方はずるい。そう思ったときには話は進んでしまっている。する、しないではなく、シャワーを浴びるか浴びないかになってしまった。私は木手くんから目をそらせないままぐるぐる考える。ありっちゃあり、木手くん、かっこいいし、良い匂いするし。背も高いし、筋肉すごいし、体力もありそう。でも、月曜からどんな顔して会社に行けば良いんだろう? もし相性がイマイチだったら、なんて言えば良いんだろう? ていうか、もしやだいぶ自信があるな?

「…えっと、あ、びます…」
「そうですか。ちょっと待っていてください」

本当に彼は平然としている。焦ることとかあるんだろうか? 彼はおそらく寝室に消えていった。すぐに戻ってきたその手には貸してくれるのであろう着替えを持っている。そんなつもりじゃなかったから、クレンジングもスキンケアも何も持っていない。乾燥対策で持ち歩いているスプレータイプの化粧水と、ハンドクリームで乗り切るしかなさそうだ。適当に使ってください、と脱衣所に案内された私はようやく事の重大さを理解して、心臓が早鐘を打ち始めた。まさかあの木手くんとえっちすることになるなんて。特に何があるわけでもないのにムダ毛の処理まで完璧だったことに感謝して全身を洗う。ひっかけてあったドライヤーは私の持っているものより強力であっという間に髪が乾いた。どこで買ったか聞こう、だなんてどうでも良いことを考えていることに気づいて口の中が渇く。

「喉渇いちゃったあ。もうちょっと濃いハイボール、ちょっとだけ飲みたい」

リビングに戻りながら言うと、キッチンにいた木手くんが呆れたように溜息をついてグラスに半分もない、普通の色のハイボールを作ってくれた。これで、少しでも羞恥心を鈍くしたい。そんな私の願いは叶うことなく、グラスを返してそそくさと鞄を開けて乾燥し始めた顔を保湿する。
貸してもらったTシャツはショーツまで隠せそうな大きさで、スウェットはぶかぶかで何度もウエストを折り返した。

「木手くん、やっぱり大きいんだね、」

ねえ、と言いかけたのに、顔を上げたら思ったより近くに彼がいて驚く。私が鞄を横に置いたのを確認したのか、彼はソファーの後ろから私を持ち上げた。私も一般的な体重だし、大人になってこんなにひょいと持ち上げられたこともなくて慌てる。すぐにお姫様抱っこに切り替えられて、慌てっぷりを笑われた。ひどい、とむくれるも彼には効かない。

「なまえさんは小さいですね」
「ふ、ふつう! ふつうだよ」

ベッドにおろされるとすぐに彼が覆い被さってきて、心の中で悲鳴を上げた。いまだに現実味がない。私のつまらない人生で、まさかこんなすごいスポーツマンで背が高くてスマートでマッチョなイケメンとセックスができるなんて思いもしなかった。と考えたところで、ふと気づく。

「…木手くん、」
「なんです、いまさら」
「いや、あの、私、あんまり経験ないんだけど」
「そのようですね」
「だ…大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。あなたは何もしないでも」

口には出さずとも、なにそれえ、と胸が高鳴る。すぐに、木手くんの唇が私のそれを捉えた。触れるだけのものを繰り返して、無意識に開けた口の中に彼の舌がもぐり込む。生ぬるいそれが、私の舌を舐めた。
舌を絡めるだけで、どうしてこんな気分になるのか分からない。分からないけれど、覆い被さってきた彼がベッドに両肘をついて、頬を撫でたり髪を梳いたりとそういう雰囲気を作り出すタイプだったのも意外だった。
ひたすらに長く深いくちづけをしながら、ついに彼の手は首をくすぐり胸にたどり着く。ふにふにと服の上から柔らかく揉んで、両手がシャツの裾をたくし上げて侵入してきたところでひと震えした。肌に、滑る指の感覚。荒々しくも雑でもない、丁寧で緩やかな手つき。くすぐったさに身を捩れば、彼のキスは角度を変える。
焦らすように素肌に触れておきながら、すぐに胸を触らないあたり。ずるい。私は耐えられずに背中を浮かせて、自らホックを外した。

「おや、随分積極的ですねえ」
「は、初めてした…なんかもう、」
「いいですよ」

そう言って彼はシャツと下着を脱がせた。長いキスでどうにかしてしまったらしい。私は息が上がっているのに、彼はいつも通りだ。口角を片方だけねじり上げるような笑い方は被虐心を産む。早く、はやく。そう焦れる私の胸を、先端を避けて彼がぐるっと舐めた。

「んん、」

浅い息を吐きながら微弱な快感に震えていたら、不意に彼が先端を口に含んで舐め上げたり吸い出したりを始めた。

「ひゃ、ああ、っ」

体の芯まで熱くジンジンしてくる愛撫は初めてかもしれない。私を主体にしたセックスも初めてかもしれない。胸を揉まれながら舐められていると、足の間が湿り始めたのが分かる。

「き、きてくんん、」
「なんですか」
「ちょっと、おかしくなりそう」
「はは、まだまだこれからですよ」

両胸への愛撫を終えたらしい彼は、また唇を重ねる。ぬるぬるの舌同士が絡まり合うだけで、湿りがさらに水っぽくなるのを感じた。
彼の両手が、胴の輪郭をなぞる。ぴったり密着した触り方で、ぞわぞわする。スウェットごと下着を外されて、ひんやりした空気に身震いした。彼の熱い指先が、お腹を下がって、茂みの中に潜る。

「おや…濡れやすいほうですか?」
「そ、そんなことないと思うけど…」
「いままでの男でもこんなに?」
「…なったことないかも、」

ふ、と鼻で笑った木手くんは、指にまとわりつかせるように上の突起にまでぬるぬるを広げていく。こし、と突起が擦られて、急にビク、とそのあたりが縮こまった。

「どこが好きですか?」

そう言いながら、執拗に突起を責める指が大きな快感を連れてくる。耐えられそうもないその大きさを自覚して、私は彼にしがみついた。

「や、なんかこわい」
「…処女のようですね。…大丈夫、全部気持ち良いだけですよ」

その言葉が終わるや否や、それを触る指の圧と速さが変わる。ひっかけるような指使いに腰が浮いていくのが分かる。コリコリとした感触とともに穴まで収縮を始めていた。

「ま、まって、それだめ」
「良い、の間違いですよ」
「ほんとに、なんか、だめ、」
「だめじゃありませんよ。体の力を抜いて」
「あ、あ、いやあ、あぁ、」

体が縮こまっていく。そこから激しい快感が押し寄せる。止まってくれない指。何か出そうとは言えなくて、ただただ彼にしがみつく。

「待って、ダメ」
「良いですよ。そのまま」

ついに押し上げられるようにそれがやってくる。歯を食いしばってやりすごせば、自分の心臓の音がとても大きく聞こえた。
目の前の木手くんは愉快そうに笑っていて、なんだかずるい。

「初めてですか?」
「かも…なにいまの…」
「軽くいったんでしょう」
「あれが…」

ぬるぬる大きく辺りを撫でていた指先が、今度は確かめるように穴の中に吸い込まれていく。ぬるぬるしているのが自分でも分かった。きついながらも指二本をきゅうきゅう締めてしまう。音がするくらい指が中を擦っては拡げて、腰が抜けそうだった。こんなの初めて。セックスってこんなに気持ち良いんだ。知らなかった。そりゃ、人生がつまらなくなるわけだ。
そこまで考えて、まだ挿入に至ってないことなどまったく気づいていない。

「まだまだこれからですよ」

彼の声に正気に戻った私は、荒い息を吐きながら眼鏡越しの瞳を見上げた。優しいような、意地悪なような、そんな微笑みに胸が熱くなる。それと同時に中にいる指がぐいと曲げられた。ああ、と吐息のような嬌声が喉を通り過ぎていって止める間もなかった。
もう私は彼の虜で、腕を掴んでいた手に力を込めて彼の気を引く。

「ね、もう…」
「…なんですか、はっきり言わないと分かりませんよ」
「分かってるくせに…はあ、もういれて欲しいの…」

これは本音なようで、もうどうにかなっちゃいそうだからとりあえず次に進んで欲しいという願いの発露でもある。
心臓がうるさい。体が熱い。頭がぼんやりする。セックスってこんなものだったんだ。自分の世界に没頭していた私の名前を木手くんが呼んだ。目線を上げる。あやしげな口元に私はぞくりとする。
もしかして、とんでもないことを頼んでしまったのではないか。彼のものを受け入れることの、重大さを私はまたもや見逃していたのではないか。そう思わせるセクシーな口角。

「どうなっても知りませんよ」
「…やっぱり、ちょっと待って、」
「待てはなしです」

がば、と脱いだ彼の肉体はまるで見たこともないような形をしていた。アルバムで見た写真の中の彼となんら変わらないようにも見える。これはやばい。そう思った頃にはすべては手遅れなのだ。

「あ、えっと、私も…なんか、する?」
「言ったでしょう。必要ありませんよ」

手早く避妊具をつけた彼はまた私に覆い被さってくる。支えられもせずに、まあるい固いものが、私の窪みをぬるぬるとなぞる。怖いようで、期待で胸が張り裂けそうでもあって、顔を傾けた彼にキスされる、と思った頃にはもうかさついた唇が私を捕まえていた。

「んん、」

すっかり食べられてしまうような口づけに彼の手を探そうとしたら、下からぐ、と押される。あ、と言う言葉はキスに飲み込まれてしまった。メリメリと音がしそうなほどに固いそれが、ずっとご無沙汰だったそこに捩じ込まれていく。熱い。火が出そうなほど熱い。
私の手の動きに気づいた木手くんが、拘束するように両手を繋いでくれる。暴発しそうな体がもう自分のものではないような怖さに、ぎゅうと手に力を込めた。ぐいぐい進んでいた腰が止まって、体内だけでなく外側までぴったりとくっついたことが分かる。全部入ったんだ。離れた唇から糸が漫画みたいに引いて、私は大きく息を吐いた。
ずる、と中のものが動く。内壁のすべてが急に熱く擦られて、私はまた正気を手放しそうになる。

「あ、あぁ…」
「…どうですか? まだつまらないですか?」
「そんな、ぁん、分かり切ったこと聞くの?」
「意地が悪いので」
「…最ッ高、ひぁ!」

ピストンが激しくなってグイグイと押し上げられていくのを繋いだ手が止めてくれる。リズミカルに繰り返される動きに腰がくねる。こんなセックスは正真正銘初めてだ。声が出ていくのを止められないまま、目を閉じていた。彼を見るのが怖い。その視線に恋をしてしまいそうだと自覚していた。
一度引き抜かれた後、うつ伏せに転がされて、腕を突っ張る間もなく彼が入ってくる。正常位とは当たる場所が違ってさらに虜になる。ズッズッと先端が奥をわざと掠めていく。そしてグン、と一番奥に叩きつけられて一際大きな声が出た。

「っああ、き、きてく、」
「…はぁ、なんです」
「もう、もう降参、ひゃん、」
「…もう少し付き合ってもらいますよ」

永遠にも感じられるような時間、彼に責め立てられて頭がもう何も考えられなくなる頃、彼はより激しく動いてぎゅう、と奥に先端を押し当てた。終わった。やっと終わった。私は素直にそう思った。







「こんなことになるとは思わなかった…」
「あなたのつまらなさなんてそんなものですか」
「…そうだったみたい」

私の頭は働くのを放棄していた。彼との会話も薄らぼんやりしたままで、何気に失礼なことを言われているのにも気づいていない。とにかく、それほど彼のセックスは青天の霹靂だったのだ。私が気持ち良くなるセックスというものもこの世にはあるのだな、と感動しているところだった。

「なまえさん」
「はい?」
「今度は私の悩みを聞いてもらいましょうか」
「あっ、ハイハイ、私にどうにかできるなら…」
「あなたにしか解決できないんですよ」
「えっ? 私ですか」
「ええ、私、どうやらなまえさんのことが好きなようでして」
「…ん?」
「私と付き合ってください」

ぽかんと口を開けたまま彼を見つめる私は、さぞ滑稽だっただろう。
彼は困ったように優しく笑った。