てっきり高校も同じところに行くのだと思っていた。
何気なく聞いた志望校は予想を遥かに外れていて、びっくりした私は持っていた参考書を落としそうになったくらい。
ちゃんと考えてるんだなあ、と思ったけれどそれ以上に寂しさが募る。
結局私は無難に進学校へ進み、妖ちゃんとは離れ離れになった。
新しい環境に慣れるまでは寂しいだとか思う余裕もなかったけど。
離れた距離にはうまく順応できず、メールを送るタイミングとか電話する理由とか思い出せなかった。
いままでどうやってあんなに仲良くしてたんだろう。
なんの話をして笑っていたっけ? どんな理由をつけて会いに行ってたっけ?
学校帰り、家の近くのブランコで揺れながら携帯電話を眺める。
ひらひら揺れるスカートと、ちょっと窮屈なブレザー。ポケットに携帯を入れられるのはいいけど。
「なにしてんだ」
ぴかぴかの爪先を眺めながら、地面を蹴る。後ろに下がるときは足を畳んで、前に進むときは足を伸ばして。
「おいこら」
がしゃんと、鎖の片方が後ろに引っ張られた。
バランスを崩しながらも鎖を離さずに足をついて体を支え、振り向く。
「あれ、妖ちゃん」
ちょっと不機嫌そうに眉を歪めてはいたけど、私はさして気にせずにブランコから下りてスカートを払った。
久しぶりに見た妖ちゃんはそんなに変わってなかったけど、緑のブレザーを着ていた。
「なにしてんだよ」
「んー…たそがれてた」
「んだソレ」
そう言った妖ちゃんはいつも通りに笑っていて、少しだけ嬉しかった。
「ていうか、妖ちゃんブレザーなんだ」
「お前もだろ」
「そうだけど」
ブランコの足の近くに置いていた鞄を取って肩にかける。
妖ちゃんはぼんやり私を見ていて、恥ずかしくてたまらなかった。
「どしたの?」
「この後暇か?」
「まあ、暇かなあ」
「じゃあ俺んち来い」
「…あ、もしかして洗濯と掃除させる気でしょ?」
「残念、飯もだ」
歩道に向かう背中を追いかけたら、いつも通りに立ち止まって待っていてくれる。
さり気なく歩幅を合わせてくれたり、車道側を歩いてくれたり。
なんにも言わないけど、そうやって私には絶対優しい。
それが変わってなくて安心した。
まだ隣を歩いていても、いいんだよね?
「それくらい自分でやんないと、私いなくなったらどうすんの」
なんて、いなくなるのは多分私じゃなくて妖ちゃんの方なんだけど。
そんなこと言えるわけない。
「いなくなんねえだろ」
「まあねえ。予定はないけど」
軽く流されたのは良かったのかもしれないし、悪かったのかもしれない。
これじゃあなれるのは彼女じゃなくて家政婦だ。
けどやっぱり深く追及できずに、濁す。
もっとなにか言って欲しいけど、私だってなんも言わないから仕方ないのかもしれない。
言わないのか言えないのかは別にして。
「…ていうか、冷蔵庫になんか入ってるの?」
「入ってねえな」
「…じゃあ先にスーパー!」
「はいはい」
「荷物持ちしてね?」
「俺にんなことさせられんのはなまえしかいねえな」
悪魔とかコウモリとかを連想させる笑い声がなんだか心地よくて、自然と口角が上がる。
「当たり前でしょ」
そう言ってやったらでこぴんが飛んできたけど、優しい指先は多分私だけのものなんだと思うと痛くなんてない。