ふ、と目が覚めた。
きりよく目覚めたのか頭はすっきりしている。まだ隣には早起きのなまえが寝ていた。ベッドサイドに置いた携帯電話で時間を確認。もう少し眠る余裕はある。どうせなまえが起こしてくれるし。枕にちょこんと頭を載せ横向きに眠るなまえを見やる。幼なじみだったのはこの前まで、言えなかった、言わなかった気持ちは通じ合えたし、もう堂々と手を出せるわけだけど。なまえを起こさないように仰向けの体を横向ける。ずっと焦がれていた存在。離したくない。離さない。誰にも渡さない。吸い寄せられるように、薄紅の唇に自らの唇を寄せた。

「…よ、ちゃ」

もそもそと布団の中でなまえの手が動いて、控えめに腕を掴まれる。起きてしまったことに少々焦ったが、特に抵抗もされなかったからのしかかるように唇を押し当てた。

「ん、む」

というか、様子を窺っていると覚醒したというよりは寝ぼけているように見える。ぺろ、と下唇を舐める。腕を掴んでいた手に力がこもった。もう起きちまったかと内心、舌打ち。

「よ、」

驚いているなまえの唇を解放する。事態を理解したらしいその頬はみるみるうちに赤く色づき、ぱっと口を押さえた。

「初めて起きたな」
「…え?」
「ガキの頃から何回も、寝てるなまえにキスしてた」
「えっ、ほんとに…?」
「ほんと」

掛け布団を引っ張り上げてなまえは顔を隠す。嫌われはしないだろうけどぶたれるくらいの覚悟は、した。

「き」

 き?
無言で続きを急かす。同じ数だけピアスが刺さる耳がちょっと赤い。お揃いにしたい、開けて、と言われたのを何度も却下したが結局折れたのは俺の方。敵わないなんて、知ってるけど。花のモチーフかハート、ピンクサファイア。俺がやるピアスだけをつけるなまえ。

「気づかなかった…」
「気づかれないようにしてたしな」
「…いつから?」
「小学生くらいか」
「…いつまで?」
「今日も」

なまえは指先で布団を握り締める。黒いシーツに手入れの施された爪と白い指が眩しい。

「それって、」
「なまえが無防備な寝顔さらしてるときは大抵した」
「妖ちゃん…」
「俺がどんだけなまえが好きか、分かったか?」
「…うん」

泳ぐ目、恥じらいに揺れる唇。もうずっとずっと昔から、なまえが好きだ。幼なじみとして気を抜く無防備さが辛いくらいに。伸ばしたくなる腕を、堪えて堪えて、ようやっと許された。触れること。

「…あのね、妖ちゃん」
「ん?」
「その、実は私も、一回だけ、妖ちゃんが寝てるときに、ほっぺにちゅーした、ことある」

ちらりと、俺の顔色を窺うような一瞬の上目遣い。度肝を抜かれるような告白に、面食らったのは誤魔化しようがない。なんでもっと早く言わなかったのかという後悔は一生忘れられないだろうけど、これからは一分一秒だって目を離したくない。

「…ごめん」

黙ったままの俺に、なまえが小さく呟く。謝ることなんてなにひとつされていない。

「なまえ」
「はいっ」

かしこまるなまえに自然と頬が緩む。そのさらさらのラズベリーブラウンの髪に触れて輪郭に手を沿えた。

「好きだ」

頬に触れる手に小さな手を重ねて、なまえはとびきり可愛く泣き笑い。