ソファに腰掛け組んだ足の上にノートパソコンを広げる休日。洗濯物をバルコニーに運んでは干すという作業を繰り返すなまえの足音がぺたぺたと鳴る。それはいいんだけど、やけに短い部屋着のショートパンツに付属した、おおよそ必要ないであろう細かく何段にも重なるレースもひらひら揺れた。正面からまじまじと見るわけにもいかず、洗濯物を干す背中を観察。内ももの質感を想像できるなだらかなラインに思わず目がいったり。盛りのついた猫かと自分を叱咤するも、まったく気づかないなまえはその足を惜しげもなく晒している。
「なまえ、まだあんの」
「これが最後ー、いま終わるよ」
「ん」
平常心、平常心。そう言い聞かせて。洗濯カゴを抱えて後ろ手にガラス戸を引くなまえの視線を感じる。けれどあえて視線は送らずに。
「妖ちゃん、どしたの?」
なまえが隣に座って、外はまだ明るかったけどまあいいかと勝手に考えて。ノートパソコンを畳んでテーブルに置く。なまえの向こう側に片腕をついて、振り向いたそのままに唇を奪う。僅かに開いていたのをこれ幸いと、舌をねじ込む。羞恥に染まる頬の赤みにくらくらしそう。首もとの緩いせいで下着がちらりと見えた。
「よーちゃん、」
「…なまえ、いいか?」
「……えっ」
肩の窪み辺りに手を落ち着かせたなまえが硬直する。泳ぐ視線も気にせずに見つめ続けると何度か視線が交わった。
「…恥ずかしい」
「いままで何回やったと思ってんだ」
「だって、まだ明るいし」
「それだけ?」
べろりと鎖骨から首筋を舐め上げる。大きく弾けた背筋にじりじり焦げてく理性。涙の滲み始めた瞳は危うげに揺れて。ああ、いますぐ食っちまいたい。のを、なんとか堪えて。
「……いい、よ」
小さな小さな声は震えていたけれど、潤む瞳は確かに俺を見上げた。こうなってしまえば抑えることもできず、もう一度触れるだけのキスをして服に手をかけた。
「よぉちゃん」
至近距離で酔ったような舌っ足らずさを発揮するのはずるいと思う。頭の中で饒舌に可愛い可愛い可愛いと誉めちぎるのを、喉に通してしまわないように唾を飲んだ。なんもかも言葉にするのは気恥ずかしいし、しかもそれで余すとこなく伝えられるとは思えない。けれどどうにか自分は特別だってことを感じて欲しい。寂しげな瞳から不安を取り去ってやりたい。なにより優しくしてやりたいし、どんなものだって与えてやりたい。世界どころか宇宙を捜したって、なまえ以上なんか存在しえない。
「妖ちゃん」
空気に晒された胸を片腕で隠しながら、なまえが片手を伸ばした。その手に応じて、力の抜けた手のひらに頬を当ててやる。頬に添えられた手のひらに導かれるまま、上体を曲げる。
「妖ちゃん」
自らの鍛えた筋肉で覆われた上半身に、なまえの柔らかい上半身がくっつく。なまえは肩に顔を埋めるように、手を後頭部へずらした。胸を押さえる腕が邪魔に思えたけど。
「だいすき」
耳に直接流れ込むような、その言葉はまさしく火に油。触れ合う肌から熱を分け合って、多分心地よさからなまえは少し眠そうで。はにかむように微笑む姿に、またもや俺は滑り落ちそうな言葉を飲み込まざるをえなくなった。