隣に座りたいと思ったときは、隣に座って欲しいと思ってるときなんだ。触りたいと思ったら、触って欲しいと思っていて、それはすごく素敵な以心伝心。もしかしたらエスパーなのかもってくらいのシンクロ率で、私たちはこの距離を縮める。ベッドの端に座ってノートパソコンを弄っている片手と、ベッドに投げ出された片手。横になった私がその投げ出された手を握り締めるのが正解。少し冷たい手を温めるように両手でくるんで顔を近づけて目を閉じる。私はもう眠い。
「…おやすみ」
小さな声が優しく降ってきて、私は口角が上がるのを意識しながらおやすみを返す。毎日、この手を握って、その体温を分け合って、細胞を取り込み合う。すきだよ、と唇だけで喋る。僅かに触れた唇に、妖ちゃんの手はぴくりと動いて私の手をきつく握った。おやすみ。
*
なんとなく、心許ない落ち着かなさを知らず知らずに埋めてくれるのはその手。温かくて柔らかくて心地よい。サイコメトラーか、読心術でも使えるのかと疑いたくなるほど。それを至極当然、当たり前のように駆使している。夜も深く、そろそろ寝ようとベッドに潜り込んで、その背に腕を回した。眠っているはずなのに寄ってくるなまえに頬が緩みつつ、どうしようもない幸福感に居心地が悪い。まだガキだった頃からなまえやその両親と過ごすことも多く、その度に居心地の悪さを感じていた。けどそれは、ただくすぐったいだけだったのだと気づいた。慣れない空気や温度がむず痒かっただけ。でもきっと、本当は、ずっと焦がれていた。仲違いしていた両親との間に入ってくれたのも、それが大切なことを温かいことを知っているからなんだろう。人肌がこんなにも恋しいものだって、教えてくれたのはなまえだった。
「なまえ」
傾げた頭に顎を載せて。甘ったるいバニラの匂いも嫌いじゃない。
「いつも悪いな」
起きてるなまえにはとても言えない。言わなくたって分かってるけど、それでも、言葉にすることにだって意味がある。嘘になんてならない感情を、数少ない言葉に詰め込んで。言葉以上の感情が、伝わりますように。とりあえずその甘い熱を吸い取りながら。
「あー、癒される」
おやすみ。良い夢を。