寝るのは遅いくせに朝は早くて、朝練の前にも自主的にジョギングをしているという似合わない真面目さ。でも真剣なんだなって、その背を見てて思う。そんなわけで、外はまだ薄暗いけどおはよう。

「よーちゃーん」
「…んー」
「おはよー」
「…はよ」

腕を伸ばして、ベッドヘッドでバイブレーションを刻む携帯電話を掴み適当なボタンを押して止める。眠たそうな妖ちゃんの隣で、跳ねるように起き上がった。もぞもぞしだす頭を撫でて、ベッドから抜け出す。パジャマのまま顔を洗い髪を整えて、水色のパッケージのピーナッツスプレッドをひとかけ切った玄米パンに塗る。それから牛乳をマグへ。そうこうしているうちに起きて着替えた妖ちゃんが顔を洗いにくる。あくびをひとつかみ殺して。

「はーい、どーぞ」
「いただきます」

普段は殆ど使わないカウンターの華奢な椅子に腰掛けて、寝起きに乾いた喉を牛乳で潤しながらピーナッツスプレッドの塗られたパンを妖ちゃんは食べる。それをキッチン側から見るのが好きで。

「ん、ごちそうさま」
「お粗末さまでした」

食器を流しに下げたらすぐに妖ちゃんの背を追いかける。それはちゃんと私の追いつける歩幅を取って。黒いジャージの背中はすぐそこ、靴ひもを締めるために玄関に座って猫背気味。

「気をつけてね」
「おう、もうちょっと寝てろよ。おやすみ。行ってきます」
「おやすみ。行ってらっしゃい」

頭を撫でる手に目を細めながら笑う私は多分とても眠そうに見えてるんだろう。ドアが閉まるまで手を振った。かみ殺したあくびがまた上ってきて、今度は素直に息を吐き出す。ソファで三十分くらい寝て、ご飯を作って妖ちゃんを送ったら洗濯をしよう。目についた妖ちゃんのスタジャンを引っ張ってきて毛布代わりに上半身にかけ、横になり目を瞑る。しばらく記憶が飛んだのち、握っていた携帯電話が軽快な着メロを鳴らした。妖ちゃんが出てからちょうど三十分後、きっかりいつも通り。ソファに座り、ぐっと背伸びをする。スタジャンを戻して、制服に着替えて薄化粧をし髪を結う。妖ちゃんが帰ってくるまであと三十分弱。それまでに、朝食と弁当の用意。六時半過ぎに朝練へと送り出したら、洗濯機を回す。それは時間との戦いで、騒がないように大股でキッチンを駆け巡る。二人分の味噌汁を作りながら、だし巻き卵を焼く。冷ましている間に野菜とそぼろを炒めて皿に移す。弁当には水につけてある千切りキャベツを敷き詰めて、卵焼きと作り置きのサラダと切ったコロッケ、少々不評なタコさんウィンナーを焼きながら。ご飯には味付きのり。早弁用のおにぎりを握っていると。

「たでーま」
「おかえり! シャワー浴びといで」
「おー」

その間に味噌汁をお椀へ注いでご飯をよそって、朝食をテーブルへ。冷めたお弁当を重ねて巾着に詰める。汗を流し、寝室で制服に着替えた妖ちゃんと一緒にニュースを見ながら朝食を食べる。ぺろりと食べきった妖ちゃんと歯磨きをして、弁当を持たせて。

「行ってらっしゃい」
「行ってくる」

リップ音をさせるくちづけをひとつ。洗濯機を回しながら洗い物をして、バルコニーに干したら授業の予習、八時ちょっと前に私も家を出る。そんな、慌ただしいけど大切で、当たり前なきみとの時間。






We Love Us/ポルノグラフィティからタイトルを拝借