※生理ネタ
帰ってきたら具合が悪そうで、なまえはずっとしかめっ面。しきりに腹をさすっているのを見て原因は分かったけれど。
「なまえ」
「んー」
「こっち来い」
「うん」
言葉少なめになまえは頷いて、洗い物をする手を速める。素直にぱたぱたやってきたその腕を引っ張って、足の上に座らせた。
「妖ちゃん!」
「はいはい」
こちら向きに座ったなまえは照れからか、ちょっと反抗気味だったけど軽くあしらい腹に手を回した。気づかれてたのを自覚したのか、少々おとなしくなる。それを良いことに僅かに腹筋のついた腹を撫でていると、肩口に額を当てられた。録画していたスーパーボウルを見ながら、腹に手を当てて、ついでに頭も撫でる。
「…大丈夫か?」
「うん、ありがと」
「別に」
額というか殆ど頭突きをかますように肩口をぐりぐりされるのにも口角が上がる。
「妖ちゃんは子供好き?」
「まあまあ」
「えっ」
「なまえが産んだら可愛いと思うかもな」
「えー、うーん、んふふ、がんばる」
「頑張れ」
「何人欲しい? やっぱりふたりかなあ」
「なまえが欲しいだけ産ませてやるよ」
「男の子は妖ちゃんみたいになるかな!」
「それは嫌だ」
これ見よがしになまえを独占される気がする、とは言わない。苦い顔をしたことになまえは不平を漏らしたけど、すぐに女の子はという話に持っていかれる。
「やっぱり引っ越すか」
「庭付き一戸建て?」
「が良いならそうする」
「子供できたらそうしたいなー。いつになるか分かんないけど」
「あと四、五年てとこか」
「…お母さんに色々聞いとこう」
なまえの頭を撫でつつ、地価を考慮しながらどこにするか当たりをつける。地下に武器庫、それからトレーニングルームとサウナ、プールと欲しい設備を挙げればきりがない。なまえにはいまより広いキッチンと、花壇、それからなんだろう。
「妖ちゃんのことだから、武器庫作ろうとしてるでしょ」
「よく分かったな」
「頼むから捕まらないでね」
「任せろ」
「んー、頼もしい! あとはトレーニングルームとかだね」
「広いキッチンと花壇もな」
「いいの?」
「当たり前だろ」
幸せ未来予想図をふたりで描くのはなかなか楽しくって。同じことを考えているというのも口角を上げさせる要因。似てないようで似てる。似てるようで似てない。同じようで違う。違うようで同じ。それが気の置けない心地よさを感じさせているのかもしれない。違うから一緒にいても疲れなくて、同じだから考えてることだってなんとなく分かる。居心地の良い理由に気づいたのはそこそこ成長してからだ。屋根の色やら壁の色、育てたい花や野菜、腹痛なんて忘れたようになまえは喋り続ける。
「幸せにしてやるから」
唐突にそう言ってしまって少し後悔したけど、なまえは見とれるほど綺麗に笑って言った。
「いまも幸せなのにこれ以上幸せになれるなんて、私、世界で一番幸せ者だね」
それは俺の台詞だ、と言いそうになったのはなんとか飲み込んで、見上げるなまえの薬指を持ち上げキスをした。