君以外は
 要らなくて
 御免ね


なんか憂鬱、なんて言ってられるほど朝は暇じゃあないんだけど。いつもは見とれる格好良さにも、なんだか溜め息。

「どーした?」

シャワー浴びて出てきた妖ちゃんが、当たり前のように声をかけてくれるのは嬉しいんだけど。だけどなんだか足りないの。

「よぉちゃーん」

お弁当の用意もそこそこに、菜箸を置いて飛びつく。難なく受け止めてくれる妖ちゃんの体温が気持ちいい。訳もなくユーウツで、なんだか分かんないけど妖ちゃんが恋しくって、このままアイスクリームみたいに溶けちゃえない?

「よしよし」

何を聞くわけでもなく、半分頭突きをかます私の頭を撫でる手。私以外には触れなきゃいいのに。

「妖ちゃん妖ちゃん妖ちゃん〜」
「なまえなまえなまえ」

うまく言葉は見つかんなくて、一番相応しそうな言葉を連呼。まさか妖ちゃんがおんなじことをしてくれるとは思わなかったけど。

「なあに〜」

肩にかかっていた手を剥がす。指を絡めて握り締めたら、潰れるくらいの力で一瞬繋がれた。

「好きだ」

あーなんだか、いっぱいいっぱい。お母さんもお父さんも友達だって大切で大事だけど、だけど妖ちゃんが一番で、妖ちゃんがいなきゃだめなんだ。妖ちゃんがいなかったら、きっと世界は甘くもないし溶けたりしない、頭を痛くするだけで、そそられない色のアイスクリームだったんだろうね。

「知ってる」

だって世界はびっくりするほどどこもかしこも甘ったるくて目に優しくて食欲をそそるパステルカラー。ノンシュガーでブラックな妖ちゃんがいなかったら私は、指先をべたべたにしながら胸焼けしてたかも。

「あー、妖ちゃんがいなきゃ死んじゃう」
「お目覚めのキスには王子様より悪魔をご所望で?」
「悪魔な妖ちゃん、を所望します」
「お望み通りに、お姫様」
「悪魔な妖ちゃんのキスで私の目が覚めたら、そのまんま連れ去ってくれるんだよね?」
「お望みとあらば何処へでも」

舞踏会みたいに距離を縮めて手を結んで、芝居がかった言葉遊びも弾んでく。

「じゃあ死ぬまで妖ちゃんの隣がいいです」
「死ぬまでか?」
「じゃあ死んでも一緒にいてくれる?」
「お望み通りに、俺のお姫様」

さっきまでのユーウツもさっぱり消え去って、雲一つない快晴。こんなに晴れてたら、絶好のアメフト日和だって妖ちゃんも笑ってくれるよね?





ウォーアイニー/高橋瞳×BEAT CRUSADERS