何遍言ったら分かるのか。
「…なまえ」
「なにー?」
ショーパンに生足。さらけ出した足に日焼け止めを塗りながらなまえが顔を上げた。暑いのは分かるが、過度な露出は控えろともう数年も前から言い続けているというのに。
「足とか腕とか、あんま出すなっつったろ」
「えー」
「えーじゃねえ」
唇を尖らして反抗の色を見せるなまえの横に座る。土曜だというのに午前中にあるグラウンド整備のせいで、今日の部活はきっかり十二時から。日課のジョギングも朝食もいつも通り、弁当を作る必要もなく、洗濯を急がなくていいなまえはいつもよりゆっくり朝を過ごしていた。
「かわいくない?」
日焼け止めを鞄にしまったなまえが立ち上がった。ライトブルーのショートパンツからは確かに素足が惜しげもなく晒されている。シフォンのノースリーブブラウスも気になるところだが、レースまみれのパーカーを羽織るようだからそれは良いとして。
「そういう問題じゃねえんだよ」
「友達と遊ぶだけだよ?」
俺の気持ちも露知らず、なまえは食い下がる。過去、こういう状況において常に俺が折れているからなんだろうが。
「妖ちゃん?」
「…女は良いとして、男に見られんのは癪に障るんだよ」
ソファーの前に立ったままのなまえの視線を感じながら、テレビに目をやる。自分といるときならともかく、目が届かないのだからそりゃあ良い気はしない。尤も、なまえをナンパするような強者がこの世に存在しないのは自分が一番分かっているけども。
「…そんなこと言われたらさぁ」
軽やかな音を立ててなまえもソファーに座る。膝を抱えて、こちらを見る目。ばっちりと目を合わせる。先ほどまでの表情はすっかり消え失せ、困ったような照れたような。俺の前以外でもそんな顔をしていないか、問い詰めたくなるのをぐっと堪えて。
「…えー、うん、でもだって…夏だよ?」
「夏だな」
「でも…妖ちゃんがそういうなら着替えよっかな…」
「…まあ、今日はそれでいんじゃね?」
「いいの!?」
瞬時に顔を上げたなまえは、子供のように目を輝かせる。彼女について過剰に口を出してしまうことについて度々自己嫌悪することもあるが、結局のところ譲歩することになるのだ。そうやって、笑ったりはしゃいだり、それが一番似合うのは多分俺が一番よく知っている。まあ俺が、目を光らせていればいいかなと。
「もー、早く言ってくれればいいのに!」
すっかりご機嫌ななまえはソファーの上を動いて近寄ってくる。まあ、なんつーか、暑いっちゃ暑いんだけど。
「ったく…言えるかよ、こんなん」
「妖ちゃん、大好きー!」
はいはい、と軽くあしらう。なまえの手が腕に触れているくらいで、クーラーの効いている部屋なのに、集まっているのか移されているのか、じんわり熱が集まっていく。知ってか知らずか。なまえが拗ねる度、泣く度、怒る度、笑う度、初めて抱く感情ばかり。とりあえず、嫉妬だなんて格好つかない感情は、なまえの熱に免じて見逃してやることにした。