※中途半端/色々すみません
「何をうだうだ考えてるのかなんて、莫迦な私には分かりませんけど!」
ぱん、ぱん、と小気味いい音が、彼女の手の中で逆さに握られた銃から響いた。振り向いた彼女の目の真っ直ぐさに、目を反らしたくなって、でもできなかった。眉も垂れ目も唇も、いまは彼女の意志が如何に強いか、それだけを如実に表している。
「私はあなたが好きですから!」
また両丁から弾が迸る。背後で二体、倒れる気配。けど、そんなこと気にならない。鮮やかな手捌きで両丁を正しく持ち直した彼女は、腕を真っ直ぐ前に伸ばした。
「あなたがあなたをどう思っていようと」
鼓膜に痛い音が鳴り、銃口が反動で上がる。すぐに手首をしならせ標準を合わせた彼女はまた引き金を引く。何の躊躇いも、一ミリの容赦もない。彼女の中に、こんなに強い感情が燃え盛っていたなんて、思いもしなかった。それは、そういう感情が欠落しているせいだろうと予想できたけれど。
「あなたが私をどう思っていようと!」
覗いた八重歯。笑えば可憐さを添えるそれもいまは、鬼気迫る彼女によく似合う。下ろしていた腕を真横に伸ばす彼女。視線をやることもない。躊躇いなく人差し指は第一関節を強く曲げる。反動による衝撃も、血飛沫も、叫声も、断末魔も、彼女には届かない。
「私はあなたが愛しくて愛しくて仕方ないんです!」
何の恥じらいも戸惑いもなく、彼女は耳を塞ぎたくなるような言葉を易々と紡ぐ。それはとっても簡単で、たった数文字の言葉で、使い古されたものなのに。彼女のそれは魔法だった。祝詞だった。言霊だった。言葉という同じ器に、一体いままで幾人が異なるものを詰めて渡したのだろう。彼女は、愛しいの言葉に、何を詰めて俺に寄越したのだろう。くるり、と踵で背を向けた彼女は、瞬く間に生を奪う。簡単に、あっさりと、呆気なく。彼女の邪魔をするからいけないのだ。俺の邪魔をするからいけないのだ。緩く波打つ甘い色の長い髪は、白いシャツに無造作に垂れている。銃を持ちながら少し長い前髪を掻き上げた彼女は戦場に降り立った救世主と紛うくらい、とても美しかった。
「だからあなたはそこで黙って突っ立っていてください!」
見たこともない表情で彼女は言う。叱咤する。俺はただ、その小さな背中に、細い腕に、柔らかそうな髪に、しなやかな足に、美しい彼女に見惚れていた。夜が明けた錯覚は、あながち間違いではなかったのかもしれない。俺は何も変わってはいないけど、確かに何かが変わる予感がした。
もろエステル(トリブラ)。自己嫌悪というかなんというか