できることならお早うからお休みまで、あなたといたい。ふ、と気づいたら私はベッドにうつ伏せで寝ていて、右手に掴んでいた携帯の画面は真っ暗だったけど、ランプはちかちか光っていた。しまった、化粧したまんまだ、とメールか電話をチェックしようと起き上がる。
「あれ、」
するりと背中をタオルケットが滑り落ちた。いつの間に、と思ってベッドについた左手を辿って視線をやる。
「み、だら、さん」
私の親指がどこかのボタンを押して、画面が光る。死んだように眠る目蓋がひくりと動いて、私は慌てて明るく光を放つ画面を伏せた。そろりとベッドから抜け出す。少し寝たせいか頭はすっきりして、音をたてないように着替える。化粧を落としてさっとシャワーを浴びて髪を乾かし部屋に戻る。きっと僅かな音で目を覚ましてしまうだろうと抜き足差し足で近づくと背中が見えた。画面の暗くなった携帯を持ち上げて確認する。着信一件、弥鱈さんから。にやにやしてしまうのを我慢できずに口元を手のひらで覆った。
「なまえさん」
「へ、あ…」
「いつまでそこにいるんですか」
白いワイシャツの背中から声がかけられて、私は慌てて携帯を置いた。ぐるりとベッドを回って見ると弥鱈さんの目は伏せられている。
「お疲れですか」
「…いえ、そんなことは」
「ぐっすり眠っていました」
「…ちょっと、だけ」
少し躊躇ったけど、弥鱈さんと向き合うように横になる。それでも弥鱈さんは目を伏せていたから、タオルケットを自分にかけて弥鱈さんの背中にもすっぽりかけて、少しだけ近寄って目を閉じた。
「次の休みは、」
「明後日です」
「それでは、明日の夜もお邪魔します」
何もなければ、とつけ加えることも忘れずに。目を閉じれば、どっと押し寄せる疲労が私の意識を侵食する。
「お待ちしてます」
衣擦れの音が微かにしたと思えば、体温の低い大きな手が頭に触れた。ゆるゆると撫でたり、髪を梳いたりされているとさらに眠気が襲ってくる。何もかも忘れてしまえるように、ひどく落ち着く。
「弥鱈さん、」
「はい?」
「…おやすみなさい」
「…おやすみなさい」
前髪をかきあげる手のひらが心地良くて、幸せな気持ちで意識を手放そうとしていたら。音もなく、額に口づけられて。
けれど反応することもできずに、頬に触れる手に黙って手を重ねた。