※ちょっぴりえろい




お風呂上がりの、ぽかぽか温かい体にぎゅう、と抱きついてみた。勇くんの匂いと石鹸の柔らかい匂いがした。背中、というか身長差のせいで腰に回した腕に力を込める。隙間はない。勇くんと私はいまぴったりと一体化している。気がする。

「どうしたの?」
「んー、ぴったりだなあって」

優しく手のひらが肩胛骨の辺りに添えられる。それだけで幸せな気分になる。瞼を閉じる。吸い込む匂いが私の中に充満していく。心地好さが眠気を誘う。勇くんで、いっぱい。

「なまえ」

優しい声がほろりと降ってきて、私はゆっくり顔だけ上げた。背中を丸めた勇くんに気付いて、踵を上げる。ぴと、と唇が触れ合って、じんわりと熱を交換する。

「キスはちょっとしづらいかな」
「…それは勇くんがおっきいからだよ」
「ごめんごめん」

少し笑った勇くんにつられて私も口角を上げる。身長差は嫌になるけど、勇くんが頻繁に頭を撫でてくれるのは好きだ。そのときに、とても優しい顔をしている勇くんはもっと好きだ。

「勇くん、いい匂いする」
「風呂入ってたからね」
「あー、勇くん大好き」

頭をぐりぐりと胸板に寄せる。離れたくない。し、離したくない。こんなにも温かくて、優しくて、心地好くて、私はなんて幸せなんだろう。触れ合う、腕から、頬から、足から、体から、どろどろ溶けて、混ざり合う。そんな、イメージ。

「…なまえ」
「ん?」
「あんまりさ、くっつかれると」

抑えるように肩に手のひらが置かれる。濁した語尾を一瞬にして汲んでしまった。名残惜しくも離れ、間に温い空気が入り込む。不服な表情をしたまま、勇くんの顔を見た。やっぱり、困ったような優しい表情をしている。

「んー、もう遅い、かな」

額に不意打ちの唇を受けて、反射的に瞼を閉じた。すぐに大きな手のひらが私の手を取る。大股で歩く勇くんに合わせて、走るようについていけばそこは寝室。そんなつもりは毛頭なかったけど、止まらないにやにやを隠すために腕に抱きついた。

「勇くん」
「…嫌?」
「んーん、…久しぶりだね」

恥ずかしかったけど、上目遣いに勇くんを見遣れば、少し驚いたようだった。瞼に口付けを受けて、目を閉じる。最後の瞬間、尖った耳がほんのり赤く染まっていたような気がしたが、僅かな月明かりで色まで識別できたかは定かでない。意図的に、微かに開いた隙間から、温い舌が入り込む。逞しい二の腕を掴んで受ければ、ゆっくりとベッドに押し倒された。

「…なまえ、」
「ん、ゆ、うくん」

少し見詰め合ってから、角度を変えて目を閉じた勇くんに倣って瞼を下ろす。右手は顔の横で勇くんの左手と絡む。体を這う大きな手に足が震える。ああ、ひとつに、なれる。そう思ったら、自然と左腕が勇くんの首に回った。