ぽた、と頬に雫が落ちて目を開けた。覆いかぶさるようなジーノから汗が垂れたようだった。眉間に皺を寄せている。いつになく不機嫌そうな表情でもかっこいいのだから心臓がもたない。

「考えごとかい?」

規則的な動きを甘んじていた体に不規則な動きが疾った。快感が背中を一気に駆け上がり、私は喉を反らして声を溢した。ジーノの長い指が顔に貼り付いた髪を払う。触れられるだけで、痺れるような気がして私は目を閉じて耐えた。

「ジーノ、」
「なんだい」
「ジーノはいつもかっこいいなあって、考えてた」

急に質量が増して、爪が背中に食い込む。ジーノは何も言わずに額に口付けを落とした。少しの汗とジーノの匂い。

「まったく…、どこで覚えてきたんだい?」
「っあ、あぁ、ジーノ」
「…僕のことだけ考えててよ」

鎖骨のすぐ下に唇が当たる。ちくりと痛んだ。わざと見えない位置に鬱血を残すのが憎らしい。足の内側が震える。息が上がる。絶頂は近い。ジーノもすぐにそれと気付き、抽挿は激しさを増す。優しく名前を呼ばれて、閉じていた目を開けた。かっこいい。どきどきする。

「…やだ、ジーノ、なんで、そんなにかっこいいの」

喘ぎそうになるのを堪えて、途切れながらも言葉を吐き出す。私は、いつもどきどきしている。上腕二頭筋も胸筋も腹筋も、芸術のように美しい。だから私は、未だに彼の裸に慣れない。私は莫迦みたいに、かっこいいかっこいいと繰り返す。それ以外にどうしたらこのどきどきを伝えられるのだろう。指先も、足先も、髪から雰囲気まで、私はいつだってジーノに夢中だ。

「うん、なまえ、分かったからちょっと黙って」

疑問を告げようにも、背を伝う痺れが強く、口を開けるのが憚られる。分かってない。分かってないよ。私が、どれだけジーノが好きか。好きで好きでたまらないのか。

「そんな目をしないで」

唇が瞼に触れる。触れられた先から溶けてしまいそうだ。

「なまえ」

その声で呼ばないで。ぐらぐらする。私の輪郭が崩壊する。甘い。言葉が耳を滑り脳内で反響する。

「どうしてそんなに」

ふる、と揺れる。爪先が空を掻いて、引かれるように伸びる。嬌声が真っ直ぐ飛び出た。力の抜けた体は、ベッドに沈む。背に回していた手すら滑り落ちた。ジーノがまだイっていないことに、気付く。

「僕を煽るのが上手なんだ」

緩く笑んだジーノがかっこよくて、私はいまそれを独り占めしている。一度昇り詰めた体は新たな刺激を敏感に受け取り、先ほどより強い快感が腰で燻る。ジーノが握り締めてくれた手のひらが愛おしい。

「なまえ」
「っは、ひあ、ジー、ノ」
「君が思っているよりずっと、僕は君を愛しているよ」

ああ、だめだ。唇が焦らすように耳を掠める。ぐり、と抉られて私はまたイった。その収縮でジーノもゴムの中に吐き出したようだった。力の入らない腕を持ち上げる。震える指で彼の頬を捉える。ジーノはその手に自分の手を重ね、キスをひとつくれた。