アドバイス
「お前彼氏どうしてん、仲良ぉやってんの?」
「あー、振った」
はあ?!と大袈裟なくらいのリアクションはいつもと変わらない。出されたコーヒーを飲んでいたら、早すぎるやろと突っ込まれた。
暇だと言ったらじゃあ飯でも行くかと誘われて、ご飯食べてからヒナちゃんちで軽く飲み直し。お店では恋愛の話なんてしなかったから、相当驚いたらしい。
「ついこないだやんか、彼氏できたぁ〜って夜中に電話してきたん」
「だって無理だなと思ったんだもん」
「いや、二週間も経ってへんやろ」
…よくそんな日数覚えてるな。確かに、一昨日まで私には彼氏がいた。同じビルに入ってる違う会社、5歳上の人。エレベーターで一緒になることが多くて、何回かご飯一緒に行って、告白されて、で、まぁ彼氏も結構な期間居なかったし、優しそうだしいいかなって。
「でも無理だったんだよ…」
「お前目が明後日の方向いてんで」
「だってさあ!」
人前は勿論、2人で居る時もあまりベタベタするのは好きじゃない。し、そうされるのも好きじゃない。理想は同じ空間にいても別のことしてられるような、そんな関係がいい。友達に言わせれば常に倦怠期、らしいけどとヒナちゃんに言えば、まぁわからんこともないけどと渋々同意はしてくれた。すっごい眉間に皺寄ってるけど。
「なんかしてる時に絡まれるのほんと無理なんだよ私」
「可愛げのないやつやなぁハル」
「テレビ見てる時にひっついて来られるのは嫌じゃん!」
「でもヨコなら嫌やないやろ?」
う、と一瞬詰まった私を見てわかりやすいなぁと豪快に笑うヒナちゃん。
バレてないと思ったんだけど。自分だってついこの前気づいたんだし。
「お前見とったらわかるわそんなん、ハルヨコのこと好きなんやろなってずっと思っとったもん」
「…私この前気づいたのに」
「はあ?!」
さっきと同じテンションでリアクション。嘘やろ、あんな頻繁に連絡してくるんハルくらいやんか、と言われて初めて自覚する。そんなに連絡してたか…?いや、いやいやいや!
「誘って来るのは9割ヨコだもん」
「ほんまハル腹立つ程アホやな」
「真顔で言われんのきついんだけどヒナちゃん」
んまぁ〜あいつもアホやけどハルはベクトルの違うアホやんなぁもぉおと若干眉間にシワが寄ったまま溜息をつくヒナちゃんに、何も返せる気がしない。
「あんな、ヨコの恋の話って大体しょーもないこと多いと思うねんけど」
「あぁ…まぁそう、だね」
「それでちょっと妬いて欲しいと思ってんやないの?」
「妬く…?」
もお!他の女の子じゃなくて私だけ見てよ!ってあれ?うーわ鳥肌立つわ、そんなキャラじゃないし。
ふと見た目の前のコーヒーはさっきの一口から減らず、でも温くなるのは早い。…ヨコも、ヨコもそう、なるのかな、。
関係は変わらないまま、でも、気持ちは冷めて行く一方。
「…うだうだしとるよりすぱっと当たったほうがええやろ」
「当たって砕けろは得意なんだけどなぁ、仕事だと」
「せやったら早よいけや」
「でもヨコがどう思ってるかなんてわかんないじゃん」
「ほんま手のかかるやつやん、なっ」
隣に座ってたヒナちゃんに、ぐっと押し倒されて頭から鈍い音がした。両腕を押さえ付けられて、近すぎる顔を遮ることすらできない、でも、真剣な目を遮るなんてこともきっとできない。
「俺とか他の男にこんなんされるの嫌やろ?」
「ヒナちゃんはしないよ、こんなこと」
「気が強いのは褒めたるけど、ハル、気が緩いのはあかんとこやぞ」
「…緩くないもん」
「何言うとんねん、緩くなきゃ本気で好きなやつ以外に靡くわけないやろ」
もーほんま手のかかるアホやなぁと、何度目かのため息を一緒に吐き出してから起こしてくれた。ほらね、やっぱりしないじゃんか、そんなこと。
「ハル、善は急げや。今月中にどうにかなれ」
「はっ?!」
「押せばどうにかなるやんけ」
「他人事だからってひどいねヒナちゃん」
「ええから、当たって砕けてみなさい」
アドバイス
そう呼ぶには強引すぎる気もする
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