やわらかな猫の毛
青灰色のクッションが二個置いてある黒色のソファでくつろいでいたメガトロンの隣に座った銀次は、大男である背丈のメガトロンの両肩を掴み、それ。と、掛け声とともに自身の方へ引っ張った。されるがままのメガトロンは、傾くにつれて勢いが増す。どすん。と、上半身は横に倒れ込んでしまった。
彼の頭には人肌の柔さと温さがある。膝小僧を視認したメガトロンは、銀次の太ももがクッションになったことを理解する。
「膝枕か」
「せいかーい」
仕掛けが成功して満足げな銀次は、ちょいちょいとメガトロンの髪を触りいじる。
しばらくして、飽きずに髪を触り続ける彼女が口を開いた。
「メガちゃんって猫っ毛だよね」
猫っ毛。
コシやハリのない、細かく柔らかな髪質。
検索をかけたメガトロンは、そうなのか。と、漠然に思う。
銀次に身を預けるメガトロンは目をつむる。彼女に頭を触れられ、撫でらることは実に心地が良いものだ。
柔らかい。と、暖かい。と、幸せだ。と、言うように触れてくれる銀次に、釣られ、同じ感覚に陥り、笑んでしまう。
柔らかい。暖かい。幸せだ。
それを見た銀次はまた幸せそうにふにゃりと笑うのだろう。ずっと真横に向いたままだった体を、仰向けになるように体勢を変える。思惑通りの表情であった銀次をメガトロンは捉えることができた。
「んー? …ふふっ どおしたのメガちゃん」
赤みが差す頬が愛おしい。
メガトロンは手を伸ばし、銀次の頬に少し触れた。して、するりと手を下ろす。じっとメガトロンは銀次を見る。同じく銀次もにこやかにメガトロンを見る。二人して、見つめあった。
長らく、メガトロンは目を閉じた。銀次はそんなメガトロンをまだ、じい、と見ている。銀次は片手をそっとメガトロンの瞼へかざした。
「…眠たい?」
「…眠気はない」
「そっか。…よっ…いしょっと」
手を退けないままの銀次は、体制を崩すまいと気をつけながら身を乗り出し、もう片手でなんとか照明を調整するリモコンを手に入れた。照明を少しずつ落としていく彼女に、メガトロンは気遣いを感じ、自身が彼女へ甘えることを許した。
実際、眠くはない。疲れてもいない。しかし、だ。
幸福に包まれた中、安眠をする。
耽美でも、甘美でもない。誘惑なんかじゃあない。ただ、優しいだけの誘いは、今までなかった。
「……、…少し眠る」
「うん」
銀次は変わらずメガトロンの髪で遊んでいる。遊び飽きたら、メガトロンの髪を撫で始めるだろう。