Posizione di pesce


貴方は宇宙そらを泳いだことはある?
俺様を顎で使い、いやいやとさめざめ泣く俺様を無理矢理脚として使い、チンケな水たまりに連れてこられたカワイソウな俺様。そんな俺様を置いて一人湖ではしゃぎまくったフォルトゥーナは泳ぎ疲れたのか、打ち上げられた鯨のようにぐったりと横たわっている。うつ伏せのまま問いをかけられた身は心外だと訴える。
そりゃあそうだ、ここまで俺はずっと置いてけぼりだ。
一緒に泳げばいい? イヤだね。ただでさえ虫けらと一緒に居てやってるのに泳げと? ストレスで危うく殺しかねないだろう。この有益な人間を手違いで殺めてはならないのだ。
問いに答えるとしよう。
俺様は宇宙を股に掛けるスタースクリーム様だぜ? 宇宙を泳ぐなんざ造作もない。そう言ってやりたいが、思い返せば自分は飛ぶだけで泳いだという行動は一度もない。だから、「ない」と答えるのが妥当であった。
すると彼女は「あら、意外」と顔を上げる。俺が口を開く前に彼女は続けて言葉を紡ぐ。
「だって、スタークったら楽しそうにじゃない」「私が水ではしゃぐのと一緒よ」
楽しそう? タノシソウ?
「ハアー?」
楽しそうダア〜? 訳がわからん。お前が水を得た魚なら俺は翼を授けられら雄牛か? どこが一緒だ? 共通点は? 何言ってんだこいつ?
「貴方は楽しくないの?」
「あのね、貴様は地面を歩いてて楽しいか? お前が言っていることはそういうことだぞ」
「あらあら、私は歩いてても楽しさを見つけられる人間よ」
「メンドクサイ」
これ以上は言わない。コイツはつくづくああ言えばこう言う、口が減らない女だ。
「じゃあ私をそらに連れてって?」
「…は?」
やれ湖に連れてけだ空に連れてけだ厚かましいにも程がないかこの女。しかも空って宙?
「お前死ぬぞ」
「そこは死なない程度の高度で」
「なぜ俺がそんなことを」
「宙の楽しさを教えてあげるわ」

「空も飛べないお前が言えることか」
「言ったじゃない。楽しさを見つけられる才があるのよ私」
「生きるか死ぬか、ギリギリのラインでも楽しいと言えるのか? とんだマゾヒストだな」
「連れてってくれるならそれでも構わないわよ。それに、仮に命を落としかけても」「貴方が救ってくれるでしょ?」
睨むようにフォルトゥーナを一瞥すれば、彼女はニンマリと笑うだけ。
本当に、口が減らないかしこい女。

深くため息をつけば、フォルトゥーナは困り眉になりつつも笑った。
了承と取りやがって。事実そうなのだが、このまま踊らされるのは気分が爽やかではない。それでも構わまいと思っている自分が何より腹立たしい。
「ねえスタースクリーム」
「なんだよ」
「泳がない?」
気づいた。俺様今わかった。俺フォルトゥーナに泳がされてるわ。
それならばもう仕方ないのではないだろうか。水の流れに逆らうよりも、水に乗りコイツを追い抜くしか方法はないのだろう、と。ならば、乗るしかないのだ。
「ああ泳いでやるよ」


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