「秋てめえ何言ってんだ!」

「そうだよ!?急にどうしたの!?」

突拍子のない秋の発言によって、周囲は動揺と驚きに包まれた。そして冬と夏に凄まじい剣幕で問い詰められた秋だが、ニッコリと微笑みながらまぁまぁと二人をなだめる。泣き真似をしていたはずの涙もいつの間にか引っ込んでいた。

「いきなりワケの分からねェ事を言うな。素性も知れねぇテメェらなんぞを雇えるか」

「元より素性と呼べるようなものを持っていなかったんです。そのため人攫いにあってしまって……なので雇っていただけませんか?誠心誠意働きますよ?」

「だからそんな奴ら雇うわけにもいかねェよ」

「……トシ、そんな事を言うな。雇おう」

秋の申し出を頑なに承諾しようとはしない土方の意見を翻したのは近藤だった。近藤の発言に驚いたのは土方だけではない、その場にいる全員が驚いた。まさか秋の突拍子もない意見が通るとは誰も思っていなかったのだ。

「何を言い出すんですかィ、近藤さん」

「人攫いにあったところを命懸けで逃げてきたのに、行くあてもないなんて……あまりにも不憫だ……俺達に出来ることがあるならば助けてやろうじゃないか。それも警察の務めだ」

もらい泣きでもしていたのだろう、うっすら瞳に涙をためている近藤を見て土方は頭を抱えてしまう。


「では改めまして、私は秋と申します」

思惑通りにことが運び、秋はにっこりと微笑みながら名乗った。しかしその横では春、夏、冬の三人が不安そうな表情を浮かべている。

「俺は真選組局長、近藤勲だ」

周りの態度や立ち振る舞いから、ある程度上の人物だとは思っていたが局長と名乗る近藤の台詞で秋は確信した。真選組内で最も権力を握っているのは近藤だ。つまり彼を言いくるめればそうそう意見が翻ることはない。

「さぁ、三人とも名乗ってください。これからお世話になるんですから」

「……春です」

「うちは夏」

「冬……」

秋に促されて、春、夏、冬の三人も戸惑いながら名乗った。とんとん拍子に進む話に着いていけずにいる、それは近藤以外の真選組の面子もそうだった。

「では自己紹介が終わったという事で、質問なのですが……仕事って具体的には何をすればいいのでしょう?」

すると近藤は顎に手を当て、少し考えてから口を開く。

「そうだなぁ、ひとまずは女中という所でどうだろう」

「女中?」

「夏、女中というのは使用人みたいなものですよ」

女中という言葉の意味を知らない夏に秋が説明すれば、夏はなるほどと頷いた。そして、自分には全く出る気がせずに少し頭を悩ませた。

「待てよ近藤さん。そこにいる野郎は帯刀してた上に、こいつの話だとそれなりの腕があるらしいじゃねぇか。そんなやつに女中なんてもったいねぇ、隊士として雇ってやろうじゃねぇか」

隊士ともなれば命のやり取りが日常茶万事の危険な仕事だ、そんな職を進めれば冬達も考えを改め辞退するかもしれない。そう思った土方は冬を見ながらニヤリとした笑みを見せた。

「あー……そうだな、俺はそれで構わねぇよ」

目論見とは裏腹に冬は動じることなく承諾してしまった。すると思いもよらぬ返答に土方は少々目を丸くした。

「あたしは言われた役職で」

「私も異論はないです」

「あっ、うちも隊士がいい!立候補します!」

春、秋、冬が各々勧められた役職に納得していく中で、夏は自ら隊士になりたいと申し出た。しかし近藤はそれに対して戸惑いの色を見せる。

「えっ、いや、でも女の子を隊に入れるというのは……」

「本人が言ってんです、別に入れてやってもいいんじゃねェですかィ。それにコイツが斬られたとしても俺等の知った事じゃねェですし。……それに、それなりの実力があんなら俺の一番隊でせいぜいこき使ってやりまさァ」

どす黒い笑みを浮かべる沖田を見て、夏は自分の発言を若干後悔した。女中の仕事が出来る気はしなかったが、隊士になったとしても苦労するのが目に見えてしまったのだ。

「んーそうだな、じゃあ明日夏ちゃんの入隊試験を行おう!冬君の実力審査も兼て。後の詳しい話は明日にしよう。みんな疲れただろ、部屋は各自空き部屋があるから好きに使ってくれて構わんよ」

そして四人はそれぞれ自分に与えられた部屋へと向かった。冬の実力審査、夏の入隊試験を明日に控え、各々部屋で眠りにつく。







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