こんな再会なんて


江戸 遊郭


何故私がこんな事しなきゃと未だに反発の気持ち
が残りつつ、心の中で誰かに助けを求めても誰も
来るわけなんて無い。


「ほら、客が来たぜ。行けよ。」


『はっ、はい。』

愛想のない番頭に似合わない打ち掛けを
羽織らされ、いわゆる花魁の格好にされ、
背中を押される。


もうここまで来たら、腹を括るしかない。
命あるだけましなのだ。


お待たせしてすみませんと客に頭を
下げると、その人は背中を向けていた。

番頭は姿を消し、二人だけの空間に
私は動悸と共に震えた手を揃え、
急いで頭を伏せる。


『葉菜と申します。可愛がってくださいまし。』




「そんな堅苦しい挨拶はいいから、顔上げろ。」



どっかで聞いた事のある懐かしい声に
私はゆっくりと顔を上げた。
派手な着物に身を包む顔馴染みの姿に
私は思わず目を丸くした。



『し…晋ちゃん!!?』


彼は私の反応を想定していたのか、
私の顔を見るとニヤリと笑いながら、
キセルを咥えてこちらを見ていた。



彼は攘夷志士、高杉晋助。


私の戦友でもあり幼なじみ。



攘夷戦争が終わって、あれから何年
経ったのだろうか。
私も以前は彼と同じ攘夷志士だった。



一人の男の死によって戦争が終わり、
みんなそれぞれ散り散りになる中、
粛清される志士が多い為、私は身を隠した。
だが、それもあっとゆう間に通報されて、
見つかってしまう。

女の私は身を売られそうになった所を
私は良心的な天人に引き取られる事で
なんとか助けられた。



その天人は遊郭船の主ではあったが、
今まで見た事無いくらい穏やかで優しい人だった。


だから私は今までずっとこの遊郭船で
外には出ぬまま国を巡り、舞を習い、
三味線引いたり、芸という芸を教わった。


ここは、遊郭って言ってもお客さんに
芸を売るだけの所。
それにこの遊郭の人達もみんな優しくて、
外には出れずとも自由気まま。
ここの生活はとても楽しかった。


突然、主が病で倒れ亡くなると、跡継ぎの
息子に代わると共に店の状況も変わり、
違法の売春宿に変わってしまい、
人の様に扱われていた私達が
ただのモノに変わろうとしていた。


いざ逃げようとしても大切な刀も奪われ、
ヤバそうな天人はわんさかいる。
素手では戦経験があろうとも関係がなかった。
元を辿ればモノ扱いになるところだったんだ。


授かった命には必ず意味がある。
お前はどんな形でもいい。
幸せになりなさい。


かつて、大切な人から言われた言葉。


救われた命は失った人の分もどんな形でも
生きていこうと思ったその時でもあった。

生きていた、無事だった。


外からの連絡が途絶え、かつて共に過ごした
彼らがどうしているかが分かっていなかった
私は直ぐに彼に飛びついた。


良かったと声を発っそうとすれば、
止まらない涙で上手く声にならず、
涙はどんどん溢れ出てくる。


『生きていて、よかった…』


やっと声が出て自分の手で涙を拭うと、
彼は煙管を置き、ゆっくりと私をなだめる
ように綺麗に結われた髪をゆるりと解き、
優しく押し倒す。


そして涙を流す私の顔をしばらくじっと
見つめていた。


「まさか、お前が本当にこんな所にいるたァ
思わなかったが。
風の噂をたまには信用するもんだな。
葉菜、しばらく見ねぇうちに女らしく
なったと思いきや、そうゆう所は子供の頃
と変わってはねぇんだな。」


『晋…ちゃん…。』


不意に幼少期の彼らの背中を泣きながら
追っかけていた自分を思い出す。
妙に恥ずかしい気持ちと懐かしい気持ち。


彼の着物を掴み彼の胸に顔を埋めようと
すると、彼は寄り添うように寝そべり、
子供をあやすかのように指で私の涙を拭った。


だがそれも束の間。

何故か彼に組み敷かれ、するりと私の帯を
解き始めその行為とともに自然と涙も
ピタリと止まる。


『ちょっと、なにをしているのですかね?』


「は?何はナニだろ。」


ククッと喉を鳴らして笑い、彼はクイッと
顔に手を添えると私に構わず口を塞ぐ。
それはどんどん深い口付けに変わり、
流した涙を伝うように頬を彼の舌がなぞった。


口づけを交わしながら、彼は器用に
私の着ている羽織を脱がしてゆく。
それを拒もうと彼を押そうとしても
彼の力には敵わず、首すじに印を
つけられ思わず力が抜けてゆく。


私の気持ちを知ってか知らずか、
ニヤリと笑うと耳元で囁いた。


「楽しませてもらおうか。」


私が声を漏らすと、頬にあった手は
どんどん下へ降りていった。


「しばらく見ねえ間にずいぶん成長したもんだな。
育てたかいがあったのか、勝手に育ったか。」


はだけた胸元に気が付き、恥ずかしさで
さっと手元の布で隠そうとするも
それはすぐに解かれ、彼は揉みしだく。
頂きに舌を這わせると、口付けをした。


「楽しませてもらおうか。」


そしてその手はおへそをなぞり太ももへ。
喘けば喘くほどその奥まで触れ、
彼の奏でる指の旋律と共に体が跳ねる。


「考える余裕なんて無くしてやるさ。」


彼のされるがまま、思考回路は止まり、
彼は私に構わず奥へ奥へと追い込んだ。
私は彼の背中に手を回すのが精一杯になり、
そのまま彼を受け止めていた。


結局、頭のてっぺんから足の先まで
堪能された私は、彼の欲望をぶつけられて、
まさに骨抜きにされてしまっていた。

誰かさんが丁寧に味わってくださった
おかげで、全然体に力が入らない。


『…いじわる。』


自分から出た言葉がこれが精一杯で、
しかめっ面になっていたのか、
全然怖くねぇなと額を小突かれる。


「久々によかったんだろ?」


体は正直だったぞと言われてもこちとら
全然嬉しくない。

もしかしたら、助けに来てくれた?
と思っていた自分が馬鹿だったと思いながら
悔しがる顔を見られたく無くて布団を被る。


この人は何しに来たんだろうと、
彼を見つめると何だよと起き上がり、
もうわかってんだろ?と再び煙管を手にとった。



「葉菜、俺の所に来…!?」


突然大きな爆発音と共に外が騒がしくなり、
何事!?と起き上がろうとしたら力が入らず、
するりと手を滑らせた。



「御用改めである!違法店舗及び攘夷志士を
匿っている様なんで、調べさせてもらうぜ。

高杉いぃぃ!!そこにいるのはわかってんだ!
大人しく出てこい。」


襖の向こうからそう言う声が聞こえ、
複数の足音が近づいてくる。
足音からしてこの人数、ざっと10人以上。



「チッ、幕府の犬が…。」


幕府の犬とは何なのかと聞く間もなく、
彼はすぐに衣服を整えると、力が入らない
私に1枚羽織を着せて、彼は軽々と抱えて
立ち上がった。

さっきの行為後なのに、体力が残っている
ことに私は若干の恐ろしさを感じてしまう。


『えっ、何してんの?』


抱えると言っても姫抱き状態。
戦争後から何年か経っているにも関わらず、
彼が何故追われてる身なのか皆目検討も
つかないのに、彼は私の言葉は完全無視。


『晋ちゃん、いったい何した…』


私の言葉を遮る様に勢いよく襖を開ける
音がスパーン!と響く。


「見つけたぜ、高杉…」


タバコをくわえた男の人が、物凄い形相で
こちらを睨みつけていた。
どうすれば正解なのか分からない私は
その反射で目の前にいる彼の羽織を
ぎゅっと掴んだ。


でも、その時は彼は既に逃げる準備は万端。
男の人とは反対側の窓際へ即座に移動を
していた。


「それは、わざわざご苦労なこった。」


一斉にあとから駆けつけた大志達が斬り掛かる
のかと思いきや、私を人質と思ったか、
クソっと怯んだ隙を狙い窓を開け、
飛び出そうとした瞬間。


窓側からもう1人気配を感じた。


『待って、もう1人!』



ジャキ…



「死ね高杉…」



ニヤリと笑った茶髪の少年が外からバズーカを構えて、こちらに向けて容赦なく発砲した。



「何っ…!!?」



ドーーン!!!


爆発音と共に反射で身を屈めたが、
そのまま彼の腕の中なのか、
それとも風圧で空中へ落ちてしまったのか、
自分がどうなってしまったのかわからぬまま、
私の意識はそのまま途切れた。