ようこそ


『申し訳ありません。』

屯所に着くとまだ副長の部屋にはまだ
灯りがおり、彼はまだ起きていた。
持ち帰った彼の髪の毛を差し出すと、
私の腕の傷を見ても顔色も変えない。


「そうか、ご苦労だった。手当てはしとけよ。」


思わぬ労いの言葉にとりあえずこちらも
もう1回謝罪の言葉しか出てこずで、
彼もそれ以上は私を責めることは無く、
私はその場を後にした。


体を洗う為に着替えを取りに自室に戻り、
貸切の大浴場で1人疲れをとりながら、
彼の触れた部分を付けられたシルシを
指でなぞる。


これでよかったんだ。自分をそう思い込ませ、
布団に潜って心を無にしようとしても
気がつけば眠ることなく、朝方になった。


彼に会った興奮が冷めやらないのだろうか、
どうも頭はいまいちすっきりしないので、
そのまま稽古場を借りて、少し体を
動かそうとしていたら、そこには既に
先約がいた。


『「あ・・・。」』


そこには珍しく一人でいる沖田さんの姿。
私は一礼すると竹刀を取り出し、
彼に構うことなく素振りをした。


「…ちょうどいい。
ちょっと付き合ってくだせェ。」


彼がまさか私に声をかけるとは思わず、
彼の思わぬ言葉に思わずきょとんとなるが、
わかりましたと直ぐに彼と向き合い、
稽古に付き合った。


お互い竹刀を向けて見つめ会う。


そして、こちらから飛び込むも彼に軽々と
受け止められた。

さすが、屯所内一といったところか。
隙を突こうとするがこちらもそんなに
甘くなく、お互い探りながら剣を交えた。


「おや?失敗して落ち込んだ割には、
迷いがねーな。」


『期待させてごめんなさいね。
生憎、そこまでヤワじゃないので!』


お互いが譲らず、竹刀と竹刀がぶつかり合う
音がその場に響く。
相手の手を狙おうとした所、さっきの包帯が
解け、逆に竹刀を弾かれてしまい、
竹刀の先がこちら目の前で止まった。

もう嫌だ。


嫌気が差した私はその場にペタンと
座り込んで沖田さんを睨んだ。


『沖田さん、本当にいじわる!』


「嬉しい褒め言葉じゃねーか。」


『もう、この探り合い止めにしましょ!』


馬鹿みたいになってきた!と言葉を続ける。
みんな好きですよ!大好き!!
だけど、争いを続けるなら
止めなきゃいけないのも分かってる。
でも、そう簡単に斬れないのよ!!

ポロポロと堪えていた悔し涙が流れる。
もう、あんまりだ。
こんな情けない姿、見られたくなくて、
顔を伏せてみたけど今更かもしれない。


生きていたのが嬉しいのに素直に喜ん
じゃいけないなんて。
戦はもうとっくに終わったはずなのに、
彼らはまだ戦っているのが辛いなんて。


私が守りたいもの、全然守れてない!



「はーい、面接合格ー。」


『…はい???』



「土方さん、これでいいですかァ?」


「上出来だ、総悟。」


「安心しな。」


彼の突拍子も無い発言に顔を上げ、
振り向くとそこの後ろ姿には副長もいて、
彼らの交わす会話について行けず、
眠っていない頭は回転が悪いのか、
わけがわからず目が点になった。


どうやら、今までは私を探るための任務
だった模様で、こた兄との繋がりも
攘夷活動を行っていないかの確認だった
と彼らは今私に向かって言っている。

私が達成出来ないのをわかった上での任務。


さすがに彼と会った時のアノ行為は
見てないようだけど、私の今の言葉で
判断された模様。


「前も言ったが残念ながら、今のお前の
居場所はここだ。
嫌になるほど、鍛えてやるよ。」


「次、万が一斬れねぇ時は
お前まとめて叩き切ってやらァ。」


2人らしい言葉に思わずため息。
全然嬉しくない合格発表に私は膝の
ホコリを払いながら立ち上がる。



『ほんと、沖田さんも土方さんも大嫌い。』



「「最高の褒め言葉だわ。」」



揃った言葉に2人はむっと睨み合う。
入隊おめでとさんと言われ、投げられた
タオルで自分の悔し涙をしっかりと拭った。