はじめての非番
本日は非番。
おやすみといってもやる事なくて、
パトロール中におばあちゃんに
貰った大量のあずきを
食堂を借りて、
せっせと一人あんころ餅を作る。
『作りすぎたな?』
隊士分取っても十分余り、
ふと甘いものが大好だった
あの人の顔を思い浮かべる。
そういえば、新八君が
お店を経営していると言っていた。
『せっかくだから、
持って行こうかな。』
お重に作ったあんころ餅を入れ、
自室に戻りタンスから着物を出し
外行きの服に着替えた。
おめかしするの久しぶりだな。
髪を纏めて、
机の引き出しにある
地図を取り出し胸元にしまう。
『その前にみんなに
食べてもらわなきゃだね。』
お盆に乗せて会議室へ行くと
副長がいて、ぷかぷかと
タバコを吸っていた。
よかったらどうぞと
これから集まる隊士の
お茶と餅を並べる。
「珍しい格好してるな。」
『ちょっとこれから
出かけようと思って。』
似合ってますか?と
くるくる回っても
聞いてもつれない土方さんは、
何も返事を返してくれなかった。
「孫にも衣装。」
『あ、総悟酷い!』
いただきますも言わずに
机に座って餅を口にし、
まぁまぁかなと失礼な発言。
彼からお皿を私はスッと取り上げる。
新しい簪出したのにな、
と窓に映り込む
自分の姿を確認する。
そこへ隊士達が慌ただしい様子で
副長ォォォ!と部屋に入ってきて、
土方さんに何人も詰め寄った。
「局長が女に振られたゆえ、
女を賭けた決闘で汚い手を使われ
負けたって本当か!」
女にフラれるのはよくある事だが、
喧嘩に負けるなんて信じられねーよ!
と隊士達は席につき、
机をバンと叩く。
土方さんは顔色変えず、
タバコを口にした。
『えっ?!近藤さん、
転んだんじゃないんですか!?』
昨日顔を腫らして帰ってきたので、
氷ですぐ冷やし手当てをした。
その時は転ん電柱に
ぶつかったんだと
彼は笑いながら言っていたのに。
「…さすがに葉菜ちゃんには、
男としてのプライドあるだろうから、
知られたくないかな。」
山崎君が苦笑いで私にそう言う。
じゃあ、そのまま
知らないフリしておくね!と
言うとその方がいいと思う
と彼は頷いた。
「会議中にやかましーんだよ。
あの近藤さんが喧嘩に
負けるわけねーだろが。
誰だ、くだらねぇ噂を
流してるのは。」
すると土方さんの向かい側で
茶をすすっていた総悟が
ニヤリと不敵な笑みを見せる。
あんころ餅を作っている時に
なんか大きな音してるな
と思っていたら、
どうやら彼がスピーカーで
ふれ回っていたらしい。
「こいつに話した俺が馬鹿だった」
土方さんは頭を抱えた。
周りからは火種はあんたか!
とブーイングの嵐。
すると、彼はうるせぇぇ!と
テーブルを蹴りあげて引っ繰り返り、
そこに置いていた餅も宙を舞う。
『酷い!せっかく作ったのに!!!』
少し悲しくなって涙を浮かべると、
副長はしまったと
罰の悪そうな顔を見せ、
落ちた餅は責任もって
こいつらに食わせるからと
袖口で私の涙を拭った。
『副長はそもそもマヨネーズかけて、
台無しにするじゃないですか。』
「わかった!なにもかけねー!
美味しくいただくから。」
顔を手で抑えて抑えて
しくしく泣いていると、
土方さんがよしよし泣くなと
背中を撫で、
女を泣かせたと総悟が煽る。
周りの反応にイライラした
彼は会議中に喋った奴は切腹だ
と何故か私としか一言も喋っていない
山崎君目掛けて刀を抜いた。
「ウィース、いつになく白熱した会議だなぁ。」
土方さんを止めに入っていたら、
今度さんが今日も元気に見回りへ行こーか
と腫らした顔は引かぬままそう言った。
彼の顔を見るとみんなは沈黙する。
『怪我の具合はどうですか?』
腫れたところを痛まないように
そっと触ると彼は大したことない!
昨日はありがとなと
いつもの調子で笑っている。
「葉菜は今日は非番か!」
『はい、なので私はちょっと人に
会いに出かけてきますね。』
デートか、若いな!と言われ
照れながらそんなんじゃないです
と否定する。
着物は新しいやつか?似合ってるぞ
とひたすら褒めてくれるので、
ありがとうございます。
帯も気に入ってるんですよと
『土方さん、何も言ってくれなくて。』
総悟は失礼なんですよ!と
総悟に向けてはべーっと舌を出す。
彼はふんっと鼻で弾いた。
「べっ、別に似合わねぇとは言ってねーよ。」
変な男に声掛けられんなよ
とぷいっと顔を逸らし、
総悟に顔赤いですぜと
指摘されると彼を小突く。
そんな彼らにうちの男どもは
素直じゃねーからな!と笑った。
「可愛いお嬢さん目の前だと
照れるのもしょうがねぇか。」
「「なっ…!!!」」
『ありがとうございます。
近藤さんはすぐ褒めてくれるから、
近藤さんのそばに居る
女性は幸せ者ですね。』
ニッコリ微笑んで口走った
自分に周りの反応を見て、
私はしまった!とすぐに後悔をした。
笑っていた近藤さんが
コロッと表情を変えて、
ボタボタと涙を流す。
「あっれー!?おかしいな。
目から汗だわ。
運動しすぎたかな?」
回りにはこのままシラを切れと
合図を受け、タオル渡しておきますねー
と差し出し、逃げるように
私はその場を後にする。
土方さんが口パクで
馬鹿野郎と言うので、
私は今度その埋め合わせしますと
両手を合わせてその場を後にした。