会えてよかった
「じゃーな。アイツ貰ってくから。」
「……今日だけだ。」
しばらくして、瓦が割れる音や
刀がぶつかり合う音が聞こえて来て、
ただ待っているだけの時間が
もどかしいと思っていた頃、
銀ちゃんだけ降りてきたと思ったら
左肩に大きな傷をつけていたので、
言葉を失った。
『銀ちゃん…?!』
屋根に昇っていた総悟と
気がつけば横に並んでいた
近藤さんを見ると、
土方さんは問題ないと
合図を送られ、
再び銀ちゃんに目線を戻す。
「何でもねーよ。」
それより、それ持って来てくれたんだろ?
帰ろうぜ。と肩を抑えて歩き出すので、
私は待って!と彼の横に並んだ。
万事屋銀ちゃん
立派な看板が目の前に見えてきて、
ちゃんとお仕事していたんだねと
言うと失礼なと睨まれる。
階段を登り、上がれよと
玄関を開けて迎え入れてくれて、
中に入ると一緒にくらしている
らしい神楽ちゃんは出かけいるのか、
誰もいなくて2人きり。
私は机にお重を置き、
銀ちゃんをソファに座らせて、
救急箱の場所を彼に聞く。
こちらが救急箱を探していると、
机にあったお重を開けて、
目をキラキラと子供みたいに輝かせていた。
「もしかして、これを俺のために。」
『そうそう、余りそうだったから
銀ちゃんに持ってきたの。』
手当てしてからね!
という前に1個頬張り喜ぶ。
こらっ!と怒ったが「うめー!」
と美味しそうに気がつけば2個目も
頬張る姿を見ると憎めない。
つまみ食いの早さは
昔と変わらない所がおかしくて、
甘いもの大好きだったもんね
とクスクス笑った。
作業着をずらし、
中に来ていたシャツを脱がせると、
縫うほどではないが刀傷が露になる。
「痛ててて!」
『ごめんね、染みるよね。』
葉菜が謝ることじゃねーよと、
傷口を消毒薬で拭いていると
着物を気にして袖を持ってくれていた。
『昔はよくこうやって
お互い手当てをよくしてたね。』
そんなこともあったなと彼は言い、
包帯を巻き終わる頃に
背中に腕を回され、
銀ちゃんの大きな体に包まれる。
「やっと…実感。」
私の胸元に顔を寄せるので、
ちゃんと生きてますよー
と背中を撫でる。
土方さんのタバコの香りが
ほんのり着物に残っていたのか、
他の男の臭いが混ざってるのが
気に入らねーと頭を
グリグリ動かすので
はいはいと撫でて軽くあしらった。
すると、私の掌を手に取り
握ってじっと見つめた。
手は刀を握って出来たまめが
あったりするから、
綺麗じゃない手を
見られるのは恥ずかしい。
「気がつきゃ、いっぱい汚させて
きてしまったんだよな…」
申し訳なさそうな顔を見せる彼に
私は違う、私の選んだ道だから
とすぐに否定をした。
あなたと兄上が私を拾ってくれたから、
ひとりぼっちじゃなかった。
今の私がある。
『これは立派な勲章よ!』
と言うと彼は優しく微笑んだ。
そんな彼を今度は私が
彼に手を回して抱き締める。
『私もやっと実感。』
彼の肩に顔を寄せると
変わらない彼の匂いにほっとする。
ずっと一緒に過ごしてきた人だから
感じる故郷の香り。
やっと大好きな家族に会えた
と笑いかけると、
子供の頃のように
頭を撫でてくれた。
『他の人の香りはしないしね。』
「うるせーよ、
余計なお世話。」
その日は夜まで一緒に…
とはいかないので、
今日はお風呂に入れない
彼の身体を拭いてあげてから、
屯所に戻ることにした。
『今日はありがとう。
会えて嬉しかった。』
「いつでも帰ってこい。」
『銀ちゃん』
玄関の扉を振り返ると、
彼の思わぬ言葉に
暖かい気持ちが再び甦る。
彼の頬に唇を寄せて
『大好き』とはにかむと
そのままその場を後にした。
「…今のはずるいだろ///」
屯所に着くと、
今度は土方さんが女をかけて
決闘し負けたと
屯所内では大騒ぎ。
帰って早々、詰め寄る隊士達に
私が咳払い一つで収めたので、
それ以上の話は回ること無かった。