最初の出会い
幼少期の頃の親に愛されていた
記憶はほとんどなくて、
私の目の前には
金色の髪と銀色の髪の二つの
影が並んでいた。
それはとても怖い夢だった。
周りは大人に囲まれて、
殴られ、乱暴され、虐げられ、
誰も助けてくれず、
隙を逃げて走って逃げる。
コイツは高く売れると追いかけられ、
ひたすら光を探して走って逃げる。
目の前が真っ暗で
何も見えなくて、
走っても走っても終わりが見えない、
周りには誰もいない。
怖い怖い真っ暗な世界。
『助けてよ…、ひとりにしないでよ。』
走り疲れて泣いて蹲っていたら、
そこに一点の光が刺し、
手を差し伸べられたところで
誰かに呼ばれ目が覚めた。
「怖い夢を見たのですか。」
髪を撫でられ、
いっぱい汗をかいて
涙も流していた自分に気が付き、
自然と飛びつく。
彼はもう大丈夫と
震える背中を撫でて、
私を落ち着かせてくれていた。
「怖い鬼は私が追い出してあげますから。」
目が覚める前まで、
大人たちに囲まれていた。
食べ物を得る為に、
乱暴に耐え、
痛みに耐え、
その行為が終わるのを待っていた。
終わりが来るのを信じて。
だがそんな甘いことは無く、
鋭い刃が自分のお腹目掛けて突き刺さる。
助けの求め方もわからなくて、
このまま死ぬのだろうと
思っていた時に
金色と銀色の影が見え、
周りの大人達が消えていった。
「銀時、これに水を汲んで来てください。」
銀色の髪の私より年が上に
見える男の子は、河原へ掛け出した。
私の『…また足を開くの?』の一言に、
金色の男の人が私の元へ来ると
「そんな事はもうさせません」
と悲しそうな顔で抱き留めた。
「もう、二度としないとは
誓っていたのですが…」
目の前で彼は自分の手首を切ると、
その赤い液体を私の腹に流し込む。
その髪色は自分と重なり
状況判断が曖昧になっていく。
「今は安らかに眠りなさい」と言われ、
私はそこで意識が無くなった。
横にはいびきをかいて
気持ちよさそうに眠っている
もう1人の銀髪の少年の姿。
ここはさっきとは違う
場所なんだと理解した。
そこには刺された傷が
お腹にあったはずなのに、
跡形もなく消えていて
思わず彼の顔を見上げる。
すると彼は人差し指を唇に当て、
ニッコリ微笑んだ。
「私の特別な力で
あなたの傷を治しました。
彼を驚かせてしまうから、
この事は内緒にしてくださいね。」
彼が切ったはずの手首の傷が
すっかり跡形も無く消えていて、
彼の言葉に状況を理解する。
まだ恐怖が残って、
うまく声が出せなくなっていた
私はこっくり頷くと、
もう少し休みなさいと
あやす様に背中を撫でられる。
それが心地よくて、
再び私は眠りについた。
次に目が覚めた時には、
今度はニコニコ微笑む顔が見えて
「よく眠れたようでよかったです。」と言われ、
もう1人の男の子とは目が合うと
目線を逸らされた。
起き上がるとおにぎり2つを
そっと差し出された。
「昨日から何も食べてなかったのでしょう。」
彼の様子を伺っていると、
遠慮なくお食べと言われ、
おにぎりを手に取った。
それを一口かじったら、
そのおにぎりは優しい味で暖かくて、
ホッとしてしょっぱくて。
気が付けばポロポロと
涙がこぼれ落ちていた。
それは初めて流した、喜びの涙だった。
『美味しい…』
「やっと喋ってくれましたね。」
声を出したら頬を叩かれていたせいか、
彼の手が上がるとビクッと身をかがめる。
だが、その手は暴力を振るうことなんてなく、
私の頭をただ撫でるだけだった。
「もうここには
あなたに酷いことを
する人なんていませんよ。」
だから安心しなさいと、
もう一つのおにぎりを差し出し、
私は無我夢中で
そのおにぎりを食べた。