あたたかい光
『そこを通して!』
「やだね、お前の言う事なんかきくもんか。」
女の癖に生意気だと突き飛ばされて、
その勢いで転んでしまう。
彼らを睨むと、
何だよお前なんか弱いくせに
と竹刀を振りかざしてくるので、
過去の恐怖が振り返り、
体が強ばってぎゅっと目を瞑ってしまった。
「お前ら葉菜に何やってんだー!」
少し離れた場所から
銀ちゃんがこちらに走って向かって、
いじめっ子めがけて
飛び蹴りを喰らわせて、
彼は白目を向いて倒れ込む。
『銀ちゃん…!』
彼を見たらほっとして
涙腺が緩んでいたら、
銀ちゃんが私の顔を見て
泣かしたな!?と怒り出す。
他の子達がなんだお前!と
振りかざしてくる攻撃も避けて、
次々と蹴りあげて倒していく。
「お前らみたいな弱い奴、
足だけで十分だ。
手を汚すのがもったいねー。」
彼らは銀ちゃんに恐れをなしたのか、
覚えてろ!と悪役の決まり文句を
残しながらその場から去っていった。
「葉菜、立てるか?」
銀ちゃんは振り返ると、
わたしに手を引き着物に
ついた砂埃を払ってくれた。
さっきの恐怖のフラッシュバックで
足が震えていると、
ひょいっと私を背負い
買った荷物を持って歩き出す。
「…もう、あんな怖い思いは二度とさせねーよ。」
その言葉に安心して泣いていたら、
銀ちゃんが泣くなよ!とオロオロして、
そこに兄上が遅くなりました!
とこちらに向かってきた。
「ちょっと、大人げないことをしてしまって。」
ニコニコと笑って誤魔化す
彼の向こうには、
先程のいじめっ子が
兄上に制裁を受けていたらしく、
兄上のゲンコツで首まで
地面に埋まっていて、
2人で空いた口が塞がらなかった。
『兄上。』
「どうしました?」
『女の子が剣術を習いたい
って言ったらおかしいですか?』
「んー。男女平等であるべき
だとは思うんですが、
葉菜はまだ小さいから早すぎますかね。」
『私も強くなりたい!
銀ちゃんや兄上を守れるようになりたい!』
「それは、頼もしいですね。」
「俺はお前なんかに守られなくても
強いけどな。
甘えんぼじゃねーし。」
『むっ!!』
銀ちゃんの言葉に
ムキになった私は
自分で歩くもん!と
彼の背中から降りると、
兄上がそっと私の手を繋ぐ。
「葉菜は十分、心は強い子ですよ。」
ねっ銀時と彼は言うと、
銀ちゃんは何も言わなかったが
否定もしなかった。
兄上のその言葉が嬉しくなって
銀ちゃんともぎゅっと手を繋ぐと、
彼は何だよと照れていたが、
兄上と二人でニカッと
笑うと笑みを見せた。
『兄上の綺麗な手。』
繋いだ手に目線を向けてそう言うと、
彼は少し驚いた様子を見せるので
私は首を傾げる。
『私はこの繋いだ手を守っていきたいです。』
と彼に構わず言葉を続けた。
「葉菜…。」
一瞬子供ながらに感じた、
彼の目の奥にある悲しみ。
私がいますからねと笑顔を向けると
彼はありがとうと小さく囁いた。
今思うと少し過保護だった
かもしれないけれど、
1人だけじゃない、3人で並ぶ幸せな影。
その時の3人で見た夕日は
すごく綺麗だったのを
今でも鮮明に覚えている。
夕陽が自分の顔を真っ直ぐ刺し、
窓の縁で頭を軽く打って、
気が付けばパトカーの中でうたた寝を
していた自分に気がつく。
懐かしくて暖かい、
大好きだった人の夢。
気が付けば一筋の涙が流れていた。
「お前が居眠りなんて珍しい。」
隣で運転をしている土方さんの声に
ハッと我に帰りすみません!
と目を擦る。
彼は「疲れてんだろ、帰ったら休め。」
と私を咎める事無く、
前を向いているだけだった。
昔の夢を見た影響か、
心に寂しさが残る。
私は何を思ったか
隣にある彼の手に
自分の手をそっと重ねた。
「ちょっと、葉菜ちゃん!?」
顔を赤らめて動揺する様に
こっちを見ていたが、
『すみません、少しだけこのまま…。』
とその手を握ると
彼はそれ以上は、
何も言わなかった。
あの時大好きだった夕陽は、
懐かしい思い出と寂しさが蘇るから
気がつけば苦手なものに変わっていく。