見知らぬ場所
月明かりがほんのりと照らし目が覚める。
さっきの抱えられた感覚とは違う場所で
何故か私は布団の中で眠っていたようだ。
目の前には天井しか見えていない。
船の中にいた薄暗い照明とはうって変わって、
月明かりのみのぼんやりとした景色。
一晩くらいは眠ってしまっていたのだろうか、
そもそもここは何処なんだと。
一度も目にしたことは無い見知らぬ景色に
驚いて、思わず綺麗に掛けられた布団をはいで、
そこからガバッと体を起こした。
『ここは何処…?』
「駄目だよ!安静にしてなきゃ。」
突然声がした方向を向くと、そこには見知らぬ
黒髪の青年が座っていた。
彼の気配を感じなかったことにまず驚く。
「よかった。目が覚めたんだね。」
彼はニッコリと私に笑いかけてそう言った。
敵意が無い彼の表情に私もつられてしまい、
顔の緊張は少しつい解けた。
『…私はどうしてここに?』
「君は、ずっと気を失ってたんだよ。
沖田隊長のバーズーカをモロに受けただろう?」
バズーカを持っていた人物で思い浮かぶのは
先程、こちらに向けて撃った1人の青年。
沖田隊長とは窓から現れたあの男の子の
事なのだろうか。
とりあえず、とんでもないもので攻撃され、
すぐに大きい怪我はしていないか確認を
とれば大したことは無さそうで、ほぼ無傷の
自分に少し安心をする。
よく見ると、情事の後とは思えぬほど
身の回りは綺麗になっていて。
自分の衣服が1枚の羽織から男物だと思われる
大きなYシャツに変わっていた。
どうやら私は追ってきた彼らの領地で
眠っていたようだ。
『服が…。』
「あっ…ごめんっ!!
着物があまりにもボロボロになってたから、
とりあえず副長のシャツを着せたんだ!
見ないように頑張って目を反らしたから。
だから…その…////」
彼が顔を真っ赤して必死に弁解する姿が
可笑しくて、私はクスクスと笑ってしまった。
『あなたが綺麗にしてくださったんですか?』
「…たいした事はしてないけどね。」
『いえ、そんな事ないです。
危ない所をどうもありがとうございます。』
私がそう言って深くお辞儀をすると、
彼は微笑んでくれた。
よかった。彼を見る限り悪い人では
無さそうだ。
『あなたのお名前は?』
「へっ、俺?俺の名前は、山崎退だよ。
…君は?」
『私は、葉菜と申します。
えっと、山崎さんこれはいったい…』
また突然、再び会話を遮る様にさっきの
デジャブを感じさせる、スパーンと襖が
開く音が響いた。
「気がついたか?」
山崎さんははその襖を開けた人の姿を見ると、
少し怯えた様子で固まっていた。
その人物はあの船の襖を開け、晋ちゃんを
睨みつけていた男の人。
「テメェが吉田…いや、その名は死んだことに
なってたな。山南葉菜だな…?」
彼はそう言うと私の返事も聞かずに、
こっちにズカズカと近づいて来た。
心配してこちらを見る山崎さん大丈夫です
と合図を送り、私も向かってくる相手を
じっと見た。
そして、今はどうゆう状況で私の昔の
名前までもを知っている理由をちゃんと
私は知らなければならない。
私に何か?と表情を読まれないように
口元を固めて私は冷静に返事をする。
すると、彼は口にくわえていたタバコの煙を
フーっとこちらに吐きかけ、顔色は帰ること
泣く無く言葉を続ける。
吐かれた煙に咳き込みそうになるも、
グッと唇を噛み締めてそれを堪えた。
「ここは真選組。いわゆる警察の屯所だ。
少し、あの店を調べさせてもらった。
上の命令でお前は保護扱いになっている。
理由は俺達にも聞かれてもわかんねーから聞くな。
どうせ、外の情報なんか入ってこないから、
浦島太郎状態なんだろ?」
お前が元攘夷志士だったことは分かっている。
だが今はもうただの花魁扱いの為逮捕は
しないと彼は説明を続ける。
『えっ…?』
彼の言葉に私はどう答えたら良いのか、
全くわから無くて戸惑った。
処刑されてもおかしくない身分の私が保護?
何なら、花魁といったらもはや完全にモノ扱い
だったとゆうのに。
『彼は、いったい何をしたのですか?』
私は思い切ってそう尋ねると、眉間に皺を
寄せてはいたが複数の紙をこちらに見せつける様に手渡した。
見知らぬ名前だと捲っていると、思わず
その手はピタリと止まる。
指名手配犯
高杉晋助、桂小太郎。
写真付きのその紙に目を見開いた。
よく知っている人物はまさかの有名人。
「ヤツは…指名手配犯だ。」
『指名手配犯?』
その紙にはこの顔にピンときたら110番
というお決まりのメッセージ付き。
まさか、小太兄まで生きている事まで知ること
が出来るなんて。
宜しくない状況だが、嬉しい情報も
得た気がして、張っていた気が緩んだ。
『本当だ。』
私がそう言うと彼は事情を説明してきた。
「奴は過激派の攘夷志士だ。
今でも幕府を潰そうと企んで手段を選ばねぇ。
今回もお前を奪還しようとしていた様だが。」
失敗したのかとやっとこの状況を理解し、
私は教えてくれてありがとうございました
と彼に紙を返した。
「お楽しみの最中に災難だったな。」
この人にはお見通しだったとわかり、
羞恥から身体がかあっと熱くなる。
そして、くいっと彼に顎を掴まれる。
「この身体、悪いが資料採取の為にそのまま
調べさせてもらうぜ」
『なっ…。』
「副長、安心してください!
さっき彼女の体は綺麗にしときました。」
山崎さんの言葉に彼はしばらく固まり、
つかつかと彼の元へ行くとゴッとすごい音で
一撃を落とした。
その衝撃に山崎さんは痛そうに頭を抑えて
うずくまっている。
「明日また指示がある。今日はとりあえず休め。」
今日は山崎が悪いが見張りについている、
何かあったらそいつに行ってくれと言うと
それ以上は何も言わずで彼はそのまま
部屋を後にした。