至れり尽くせり


「あァ?買い物だァ?」


帰ってきたら、札束を見て顔を歪ませた
副長が悪態をつくので、笑いながらまぁまぁ
と局長は彼を宥めた。


「俺が一緒に言ってあげれる訳でもねーし…」


そりゃもちろん近藤さんに行かせる訳には
いかねぇと頭を抱え、かと言って他の隊士
だと総悟と互角なのに見張りには確かに
心細いかと呟く。


私は山崎さんがいいですと彼に言えば、
お前の意見が通るわけないだろと
それは残念ながら直ぐに却下されてしまった。


「俺が行きやしょうか?」


ニヤニヤ笑っている沖田だと名乗った茶髪の
少年が立候補すると彼は言葉を詰まらせる。

私から見ても彼は確かに何かを企んでおり、
出来ればこの人は避けたいと本能が騒いで、
思わず副長に訴えるようにじっと見つめた。


「仕方ねぇ。わかった。」



そう言って私と共に街に出たのは、
私と私服に着替えた土方副長の2人だった。
さっきの彼よりはマシだけど、まさかの
土方副長、なんてこった。

2人きりだと何を話して良いのやらわからず、
上手く言葉も出ないまま繁華街に出た。


閉じこもった生活だった自分から見た
久しぶりの外の世界はかなり新鮮で、
今までは海の景色しか見えていなかった為、
久しぶりの風景に辺りを見回す。


好きなブランドと言われても流行にも
気がつけば全然追いつけてなくて、
どこから行けばいいのかもわからない。


「そうやってれば、ただの世間知らずの
娘なのにな。」


土方副長の言葉に振り向けば、彼は
つまらなそうにタバコをふかしており、
彼の嫌味混ざりの小さい小言にむっとなる。


『何年も箱に入ってましたからね。』


あなたにはわかりませんよ。とべーっと
舌を出せば彼はそれ以上は何も言わずに
黙っている。本当に読めない。
この人は私を探ってるのだろうか。


とりあえず松平のおじ様がくれた、
彼の娘さんがよく行くお店を教わり、
とりあえず服から見ることにした。



「とても良くお似合いかと。」


指示された店に行く度におじ様に用意されて
いたのか、選ぶことなく色鮮やかな
自分の服を与えられ、貰っていたお金も
使うことなく淡々と終わってゆく。


顔色を変えなかった土方副長も
さすがにこの異様な光景を目にすれば、
徐々に付き添いの彼の顔も引きつっていた。


「あのエロおやじ、どこまで甘やかす気だ。」


最後に残る店は下着のみとなり、
さすがにサイズはわからないみたいで
(分かったら恐ろしいが)ここは、
自分で選ぶ形になっていた。


『お待たせしてすみません!』


色々買った大量の荷物を抱えて、
彼に時間を取らせまいと急いで走ると
彼はひょいっと私の荷物を奪うように
自然とそれを持った。


『大丈夫ですよ、副長。自分で持てます。』


「女に持たせてたら、周りの目が痛いだろーが。」


そう言って、ほとんどの荷物を運んでくれる
彼の思わぬ優しい行為に少し驚いて、
でも彼になんて言えばいいかわからず、
彼の背中を見つめるしかなかった。


「何やってんだ、置いてくぞ?」


そのうしろ姿は、昔の馴染みと少し重なり
何故か懐かしい気持ちがよみがえる。
この置いてけぼりになりそうな気持ちも
久しぶりだ。

帰り道が不安な私はとっさに彼の袖を掴んだ。
彼も私の行動に驚いた様子だっが、
それ以上は何も言わず帰り道を淡々と歩いた。


屯所に戻るとワイワイと迎える隊士達が
増えてニヤニヤガヤガヤ。
それぞれ、どこか面白そうそうに、そして
冷やかすようにこっちを見ていた。


「おい、土方さんが女の子と歩いてるぞ」


「しかも袖持たせてるし。」


「あの鬼の副長が荷物まで持って…」


物珍しそうに隊士達は私たちを見て、
確かに傍から見たらその姿はただの男女の
カップルに見える様だった。
荷物を抱えた彼はプルプルと怒りをこらえて、
怒鳴るように沖田さんを呼び付けた。


「総悟おおぉ!!」


入隊は騒ぎになるから黙っとけと言っただろ!
と怒っていたが、時は既に遅かったのか
私の捕獲以降にはいなかった人達が一気に
ほぼ皆勢揃い。

おかえりなさいと彼はにやりと笑い、
そこに沖田さんは女物の下着まで
持っちゃってヤラシーと更にからかいに
拍車をかけている。

山崎さん達は既に葉菜ちゃんおかえりなさいー
と声をかけてくれて、何故か彼だけ
可哀想なことに副長にド突かれていた。


大の大人が子供みたいな喧嘩を始め、
それがかつての仲間と変わらなくて、
2人が大好きだった彼らと重なって見えて、
思わずクスクスと笑ってしまった。

「「あ・・・。」」

淡々と見ていた私が笑うなんて思わなかった
のか、2人がいっせいにこちらを見るので、
その妙な視線に恥ずかしくなる。


「何だ、ちゃんと笑えるンじゃねーか。」


「まぁ、まだアンタの事こっちも
完全に受け入れた訳じゃねーけど。」


今日からここはお前の場所だ。
覚悟して腹くくれよとニヤリと二人が
私に笑みを浮かべた。


『わかってます。』


私のニッコリ笑う表情に冷やかしていた
隊士達もすっと静かに黙る。


『ここにいるからには、任務は女と言えど
あなた方に負けずこなします。
そちらこそ、覚悟しておいてくださいね。』


沖田隊長が選別だと投げたものは私の刀。
私はそれをすぐさま受け取った。